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「Well-being」に着目して開発生産性を測る「SPACE」フレームワークを活用しよう!


はじめに


こんにちは。 SHIFTアジャイルコーチの谷川です。

チームの生産性を可視化することを主な目的とした4つの指標として、「Four Keys」 を下記の記事で紹介させていただきました。

最近、この「Four Keys」にかわり、「Well-being」や楽しく働くことが開発生産性に相関があることに着目したフレームワークである、 「SPACE」 が注目されています。
今回は、この「SPACE」について紹介してみたいと思います。

「SPACE」フレームワークとは?


このフレームワークは、GitHub、ビクトリア大学、Microsoft Researchのメンバーによって提唱され、『LeanとDevOpsの科学』の著者でもあるNicole Forsgren氏によって「The SPACE of Developer Productivity」という論文の形で発表されたものです。
このSPACEフレームワークはSWOT分析などのビジネスフレームワークに近く、概念を提示しているものになります。

SPACEフレームワークの最大の特徴は、指標に「Well-being」が含まれているところだと私は感じており、この指標は、必ず採用すべきものとして推奨しています。

SPACEフレームワークでは、以下の5カテゴリーから、最低3つのカテゴリーを選択することが推奨されています。

「S」:Satisfaction and Well-being

  • 開発者の仕事、チーム、ツール、文化に対する満足度と、仕事が健康や幸福感(Well-being)にどう影響しているかを指標化したもの。

  • 満足度と幸福度(Well-being)は生産性に大きく関わり、その評価には従業員満足度、開発者の効率、燃え尽き症候群の状況などが測定項目として用いられる。

「P」:Performance

  • システムやプロセスの成果を指す指標で、実装された機能やコードがどれほどのアウトカムを出したかを評価。

  • 評価には、書かれたコードが期待通りに機能したか、そしてその品質や、それがもたらす顧客満足度やコスト削減といった影響が考慮される。

「A」:Activity

  • 業務過程で完了した行動や出力の数を示す指標で、開発者の生産性やチームの効率についての洞察を提供。

  • 設計とコーディング:設計文書や仕様書、作業項目、プルリクエスト、コミット、コードレビューの数

  • 継続的インテグレーションとデプロイメント:ビルド、テスト、デプロイメント/リリース、インフラの利用回数

  • 運用活動:インシデント/問題の数、その重大度、オンコールへの参加、インシデントの軽減に基づく分布

  • これらの指標は組織のニーズや開発環境に応じてカスタマイズが必要で、生産性を判断するために単独で使用するべきではない。

「C」:Communication and collaboration

  • 人々やチームがどのようにコミュニケーションを取り、共同作業を行うかを表す指標。

  • ソフトウェア開発はチーム間の広範で効果的なコミュニケーションと協調に依存し、チームの成果に貢献する仕事や、他のメンバーの生産性をサポートする仕事も重要。

  • チームの生産性を把握するためには、見えない仕事やチームのタスク調整に関する情報、ネットワークメトリクスなど、測定が困難な項目も考慮する必要がある。

「E」:Efficiency and flow

  • チーム活動が中断や遅延を最小限に抑えて完了できているか、継続的に進展しているかを指す指標。

  • 個人レベルでは集中時間や開発環境で過ごす時間で測定し、チームやシステムレベルではレビューやMTG時間、CI/CDフローでの自動化によるトイル消化数などから判断する。

  • このカテゴリーは、最適化することによって個人の満足度は向上するが、一方で共同作業の能力が低下しチームのコラボレーション活動が下がるなど、他のすべてのSPACEカテゴリーと関連する項目。

  • 具体例を挙げると、中断のない集中時間を増やすための措置としてMTG時間を削減した結果、情報の共有やアライメントの機会が減り、チーム内での認識ズレや連携不足を引き起こすことなどが考えられる。

  • 従って、Efficiency and Flowの最適化は、他のすべてのSPACEカテゴリーとのバランスを考慮する必要がある。

「SPACE」の特徴


前述のように、SPACEフレームワークの最大の特徴は、指標の一つの「S」に「Well-being」が含まれているところだと思います。

#Well-beingの詳細については、下記の記事を参照してください。

私は、我々人類が目指すべき指標の一つがこの「Well-being」だと思っており、自分自身もお客様にもそうなってもらいたいと思い、Well-beingになるためにアジャイルコーチになりました。

最近では、ようやくTVでもこの「Well-being」という文字を見ることが増えてきたと思います。
働き方改革、働き甲斐改革を語る際には、良く「Well-being」のキーワードが出てくると思いますが、開発生産性を語る際にも、この「Well-being」が語られるようになったことにとても喜びを感じます。

上記の記事でも語っておりますが、Well-beingな状態にある人の生産性はかなり高いということが 「幸福学」 という学問で証明されておりますので、開発生産性にも影響があるということが認められたのだと思います。

この「Well-being」の測定には様々な方法があり、エンゲージメントを測定するようなツールを使う場合もありますし、簡単なアンケートで測定することも可能です。

SHIFTには、「Well-being」の測定について、様々な経験とKnowHowがありますので、お気軽にご相談ください。

また、Four Keysの計測では、4つの指標はとても良い数値になっているのに、実際にはプロジェクトが遅延しているなど、本当に開発生産性が高いのかどうか疑わしいという事象が発生することがあります。
なので、この4つの指標だけを見ても具体的にどこを改善するべきかわからず、運用改善が思うように進みません。

そのような状態だと、開発メンバーに負荷がかかってしまい、モチベーション低下につながることがあります。

開発生産性を向上させること、開発者のモチベーションを上げていくこと、どちらも向上させていくにはSPACEフレームワークが適しているということになります。

Four Keysは明確に決まっているフレームワークですが、SPACEはある程度、曖昧な部分が残されているため、プロダクトごとに合わせて活用しやすく、フレームワークに縛られすぎることなくトライアンドエラーできるところが特徴となっています。

SPACEについてはまだ活用され出したばかりであるので、これからいろんな事例が紹介されていくと思いますので、継続してWatchしていきたいと思います。

大切なことは、どうなりたいか?をしっかりと描くことだと思います。そして、それを示す指標はなんだろう?と考えて、まずは、実際に計測してみることです。

やってみたら思っていたのとは違った、というのはよくあることなので、もっといい指標があるかも?と思ったら指標を変更してみたり、ここもアジャイル的にトライアンドエラーを繰り返して進めていきましょう。

数値改善を目標に掲げた場合の危険性


目標を数値で追いかけるときは必ず、「目標数値を操作してしまう」、「数値をハックする」 という課題が発生します。

数値の改善ばかりに気を取られて、本来の目的、目標を見失ってしまうという状況です。
このような状況の場合、目標としている数値はかなり良い状態に見えるのだが、現場の課題など様々な課題が改善しないという本末転倒な状況になってしまいます。

そのため、「Four Keys」や「SPACE」などの開発生産性を可視化するメトリクスについても、この数値目標の改善だけを目標にしてはならず、あくまで、本来、解決したかった課題解決を優先し、その参考指標として、メトリクス数値を参照する程度の扱い方が推奨されます。

ここがかなり重要なポイントなので、肝に命じるようにしましょう。

おわりに


私は、エンタープライズアジャイル勉強会、シンアジャイル、devLOVEなどのアジャイル系の社外のコミュニティに数多く参加しておりますが、これらのイベントでも最近、「Well-being」 のキーワードを聞くことが増えており、とても感激しています。

大企業病が蔓延するような職場環境が増えていると思いますが、そこに足りないものがこの「Well-being」だと思っています。
Well-beingを正しく知り、自分自身がWell-beingになることを目指すことにより、自分の気持ちがとても軽くなり、仕事が楽しくなり、人生そのものがとても楽しくなります。

Well-beingについて正しく学びたい、楽しく働きたいと思っている方は、是非、当社にお気軽に声を掛けてください。


◆参考文献
小田中育生 「開発生産性フレームワークSPACEについての覚書」
https://note.com/dora_e_m/n/ne36405b9f7b1


◆執筆者プロフィール:谷川 智彦(たにかわ ともひこ)
2023年5月にSHIFTに入社。
組織アジャイル教信者。真剣に「組織アジャイル」でいきいき、ワクワク、幸せに働くことができ、日本を元気にすることができると思っている。

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PHOTO:UnsplashD Jonez