新人教育は読解力向上が8割
自己紹介と記事紹介
はじめまして!
SHIFTの社内研修チームで新卒教育担当をやっているスズキユウスケです。 部署内では「ゆうさん」と呼ばれています。
本記事では「新人教育は読解力向上が8割」というテーマでお伝えします。 先日、ヒンシツ大学で実施した、若手育成・DXリーダー育成担当者様をお招きした以下のセミナーをアレンジしたブログとなります。
若手育成に関わっているすべての人に、少しでも学びになる情報を持ち帰っていただければ嬉しい限りです。
【参加費無料】11/21(木)若手社員育成担当者様向け 特別ご招待イベント
※ヒンシツ大学で、SHIFTのノウハウを凝縮した技術の神髄を「体系的」に教育サービスとして提供しています。
私の担当したSession2では、「新人世代は読解力向上がポイント」と題しまして、SHIFTにおける新卒教育の課題感と25卒の内定者教育の方針・仕組についてお話ししました。
セミナー当日は、副題として「読解とは禅問答なり」というメッセージを付け加えました。 これが今回私が伝えたいメッセージです。どうぞ最後までゆるりとご覧ください。
また、Session1では私の上司が登壇しており、そちらの内容をもとにした記事「新卒研修は『ストーリーと場』が8割」も一緒に読んでいただけると幸いです。
それでは本題に入りましょう!
なぜ読解力なのか
新卒教育には様々な要素が含まれますが、なぜ「読解力」が重要なのでしょうか?
その答えにたどり着くに至った、私が置かれている状況についてまずはお伝えいたします。
新卒教育の3つのフェーズ
私は新卒教育全般を担当しています。 全般と言いますが、大きく3つに分かれています。
内定者研修
新卒研修(入社後2~3ヶ月程度)
配属後フォロー(入社後1年)
この中でも、今回は第1フェースである内定者研修にフォーカスした内容になっています。
では、内定者研修にはどんな特徴があるでしょうか?
たとえば以下のような特徴があります。
入社者の居住地がバラバラのため、開催はオンライン一択
入社前のため研修参加を強制できない(学校卒業が最優先)
入社前のため、社外秘の情報を渡せない(渡す場合は制限がある)
入社後の研修と異なり、内定者研修は短期集中ではなく長期分散
新卒の配属先が確定していないため、具体的なテクニカルスキルを教育するのが難しい(SHIFTの25卒は職種別採用をしており、品質保証コンサルタント、エンジニア、営業の3つにわかれています)
他にもあるかもしれませんが、こんなところでしょうか。 こういった条件の中、SHIFT25卒の260名超(!)を入社までの約半年間で教育をしていくことになります。
私は悩みました。。。。。。
260名超を
長期分散教育で
配属部署に関係なく
効果的に教育するにはどうすればよいか
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
考えて、考えて、考え抜いた結果、私がたどり着いたひとつの答えが 「読解力」 です。
この答えにたどり着くまでの一部始終をギュッと詰め込んだのが、冒頭で紹介したセミナーです。
そして今回私が作り上げた仕組みは、SHIFTだけでなく他の企業様でも取り入れることが可能です(もちろんアレンジは必要ですが)。
損はさせません。ぜひ最後までお読みください!
*** ここからはセミナー登壇時の内容をもとにしています ***
課題の確認、現状把握
こんなことで困っていませんか?
まずは課題の確認から始めましょう。
新人と会話した際に以下のようなことで困った経験はありませんか?
会話をするなかで「意図がうまく伝わらないなぁ・・・」と感じる
きちんと作業内容を説明して、相手も理解した反応を示したのに、実際の行動がずれている
メールやチャットで指示をしたら、うまく行間が読めておらず自分に都合のいい解釈をされてしまった
質問をしてくれるのはいいが、自分でできる努力をしてから質問してほしい
そして逆に、こうだったらいいのにな~と思いませんか?
元気な挨拶や、感謝をもって人に接してくれる
作業指示の意図を理解している/理解しようとしてくれている姿勢が見える
自分の意見・提案を添えて端的な質問をしてくれる
他にもあるとは思いますが、新人に求める理想像として、私なりに2つにまとめました。
自律(自立)した大人になり、あらゆるものから主体的に学ぼうとしている
自分で調べたり考えたりして、問題解決しようとしている(解決が難しい場合は適切に相談してくれる)
いかがでしょうか。おそらく多くの方が同意してくれるのではないかと思います。
そしてこの理想像を実現するための取り組みを後半でご紹介いたします。
コロナ禍を過ごした大学生
次に、現状の把握です。
前提として、コロナ禍を過ごしてきた大学生の状況について確認しておきます。以下の表にある通り、今の若手は大学時代をコロナ禍で過ごしている世代です。
特に24卒に関しては大学入学時からコロナ禍であり、そのまま約3年を過ごして卒業しています。彼ら彼女らに罪はないのですが、対面でのリアルコミュニケーションが不足している世代といえます。
そしてリアルコミュニケーションが不足しているため、対面での直接フィードバックが不足しているのではないかと感じています。
24卒~26卒については、大学に入ってすぐにオンラインのコミュニケーションが始まっています。特に24卒の場合はそのまま3年経過しているため、初めての人と対面でコミュニケーションをとって関係を構築していくという経験が他の世代と比べて少ないのではないかと感じています。
これがまず大前提として私が感じていることです。
SHIFTの新卒
そして弊社SHIFTの新卒傾向として、23卒、24卒に対する所感をざっくりまとめると2つあります。
真面目でいい人だが、いい意味で突出した人がいない
小さくまとまっている印象で、周囲を巻き込んで行動を起こす人がほぼいない
なぜこのような傾向が見えるのか、ということについて、2つの仮説を考えました。
大学入学時からコロナ禍で過ごした24卒は、リアルコミュニケーションが不足した弊害として他者理解力が不足しているのではないか
Zoomなどのオンラインツールを当たり前に使う環境だったため、他人からの視線に鈍感、見られている意識が弱いのではないか
これらの仮説を検証するため(だけではないのですが)、コミュニケーション能力を測定するための検定を作成しました!(弊社は検定を作成するのが得意です)
コミュニケーション能力を5つの指標に分解し、検定で定量的に測定できるようにしました。 実際に24卒に対して実施した結果、能力指標のひとつである「相手理解力」に特徴が現れ、仮説を裏付ける結果となりました。
25卒の教育方針
ここからは現在進行中の25卒の教育方針についてお伝えします。
先ほどまでの流れを踏まえて、来年入社してくる25卒をどう迎え入れるかということですが、まず全体観として世代の特徴を知ることからはじめました。
PISA調査(※)というものをご存知でしょうか。 PISA調査とは、OECDが進めている「義務教育修了段階の15歳の生徒がもっている知識や技能を、実生活の様々な場面で直面する課題にどの程度活用できるかを測る」ことを目的とした国際的な調査です。
このPISA調査は3年に一度実施され、以下の3分野について調査を行います。
読解力
数学的リテラシー
科学的リテラシー
日本は3分野すべてで上位に位置付けており、日本の15歳は国際的に優秀である、といえそうです。 しかし、近年は読解力の低下傾向が見られ、25卒世代(2025年で22~25歳になる世代)の特徴として相対的に読解力の弱さが目立ちます。
加えて、先ほど述べたコロナ禍と重なってしまった世代ということもあり、困難な時代を過ごしてきた世代といえそうです。 繰り返しになりますが、彼ら彼女らに罪はありません。
ですが、この読解力というキーワードがひとつヒントになりそうです。
読解力の定義
ところで、この読解力という言葉の定義はなんでしょうか。
PISAによる読解力の定義は以下です。
うーん、、、少し表現が難しいですね笑
これを私なりにシンプルな表現にまとめてみました。
「文章さえ読めればどんな時代でも生き残れる力」
これが私の読解力の定義です。
読解力の影響
そしてこの読解力ですが、興味深いデータが他にもあります。
株式会社ベネッセコーポレーション様が公開しているレポート(※)において、「読解力」の影響について記載されていました。
※「読解力」を育てる総合教育力の向上にむけて—学力向上のための基本調査2006より
このレポートにおいては、「読解力」と「学びの基礎力」、「読解力」と「社会的実践力」にどのような関係性があるのかが調査されています。
「学びの基礎力」の定義 ▶ 豊かな基礎体験、学びに向かう力、自ら学ぶ力、学びを律する力
つまり、主体的に学ぼうとしているか
「社会的実践力」の定義 ▶ 問題解決力、社会参画力、豊かな心、自己成長力
つまり、自分で調べ考えて問題解決しようとしているか
そして、「読解力」と「学びの基礎力」、「読解力」と「社会的実践力」のそれぞれの関係性において統計的にやや強い相関がある、ということがわかっています。
つまり、「読解力」を高めることで、副次的に「学びの基礎力」や「社会的実践力」を高めることが可能ではないか、と考えました。
読解力の教育
では、この読解力をどうやって高めればよいでしょうか。
調べたところ、様々な方法が見つかりました。 一言でいえば読書です。
ですが、ただ読書をするだけでは意味がありません。
意味がないどころか、読めば読むほど逆効果になる、という結果が前述のレポートで公開されています。
ではどうすればよいのか。
それは、読書する(文章を読む)際に読む目的を理解したうえで、精読・要約・共有することです。
読書は量ではなく質が大事だったのです。 なぜこの本を読むのか、読んだあとにどのような行動に活かしたいのか、を理解してから読む。 わからない表現や単語が出てきたら、都度意味や語源を調べる。 読んだ内容を要約する、そしてそれを共有・発表し、フィードバックをもらう。 こういった精読(味読)をすることで、徐々に読解力を向上させることが可能です。
読解力は短期間で向上するものではありません。 だからこそ、短期集中ではなく長期分散教育をする形式の内定者研修に取り組む意味があると考えました。
25卒教育の仕組み
現在、SHIFT25卒の内定者期間中の教育としては、大きく二つに分けて取り組んでいます(他にもあるのですが、ここでは割愛します)。
土台となるフレームワーク
土台に乗せるコンテンツ
フレームワークとは、読解力を向上させるためのワークの構成です。 たとえば、長文課題の精読、要約した文章のアウトプット、グループワークでの共有などです。
コンテンツとは、内定者期間中に学んでほしい内容が含まれています。 たとえば、社会人基礎力、ビジネスマインド、SHIFT理解などです。
繰り返しになりますが、読解力を向上させるためには文章の精読・要約・共有が必要です。 では一体どんな文章を対象にして取り組めばいいのでしょうか。それがまさにコンテンツの部分になります。
ビジネスマナーについて特に学ばせたいのであれば、課題図書としてビジネスマナーに関する本を読ませるのがよいでしょう。論理的思考力を特に学ばせたいのであれば、課題図書としてロジカルシンキングに関する本を読ませるのがよいでしょう。目的にあわせてビジネス本を課題図書にすることが可能です。もちろん日経新聞の記事やITニュースに関する記事でも構いません。ある程度まとまった量の文章であれば応用が利きます。
このように二重構造にすることで、読解力向上という軸を残したまま、その時々の教育担当者の要望にあわせた柔軟な教育が可能となります。
私はこの取り組みを25卒だけで終わらせるつもりはありません。 26卒以降でさらにブラッシュアップした取り組みにしたいと考えています。
そのためにも、まずは現在進行中の25卒内定者研修に全力を注いでいきます!
おわりに
ここまでいろいろ言ってきましたが、実際に成果が出るかどうかはやってみないと分かりません。 現時点では、私にも答えがわからないのです。(もちろん、成果を出すための最大限の努力はしています)
そして、こういった答えのない問いと向き合い考え続けることこそが、読解力を高めるために必要なことではないかと感じています。
つまり、、、
「読解とは禅問答なり」
私はこのように感じています。 一緒に成長していきましょう!
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長文お読みいただきありがとうございました。
今回は社外向けということで、お伝えできるのはここまでです。 ですが、25卒内定者研修は現在進行中で進んでいます。
もっと具体的な取り組み内容(コンテンツやフレームワークの詳細など)を知りたい、という方がいらっしゃいましたら、ぜひヒンシツ大学よりお問い合わせください。
また、SHIFTの新卒研修興味あるな、と思われた方はぜひ以下をご覧いただけますと幸いです。
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