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【JaSST’24 Niigata 登壇レポート】 アクセシビリティはじめの一歩/まず押さえたい2つのキーワード(前編)


はじめに


こんにちは。株式会社SHIFT カスタマーエクスペリエンスグループで、UXやアクセシビリティを担当している長谷川です。先日行われた「JaSST’24 Niigata」では、私もアクセシビリティをテーマに少しお話をさせていただきました。

基調講演では、アクセシビリティに積極的に取り組むソフトウェアサービス企業の代名詞とも言えるfreeeさんやマネーフォワードさんが登壇しており、アクセシビリティ熱の高まりを感じるイベントになっていました。

その中で、「法律はとっつきにくい…」「国際規格は難しそう…」といったお悩みを聞きましたので、ブログではこの2つの入門編として、分かりやすく説明したいと思います。

2024年注目の障害者差別解消法とは


障害者差別解消法の正式名称は、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」といいます。法律だけに、少しお堅い感じがしますよね。端的に言うと、障がいのある人もない人も、皆が暮らしやすい社会にしましょうね、ということです。そのために、法律では3つの義務を課していますが、以下のように、難しいことではなく、とても当たり前のことを言っています。

1. 不当な差別的取扱いの禁止

国や市町村の役所だけでなく事業者も、障がい者を差別してはいけません。

2. 合理的配慮の提供

障がい者から利用しにくいと対応を求められたら、努力できる範囲で対応しましょう。

3. 環境の整備

合理的な配慮が必要な人は一人ではありません。だから、事前に環境を整備しておきましょう。

このお話をすると「私の会社はこの法律の対象となりますか?」とよく質問されますが、答えはYesです。前提が、障がいのある人もない人も皆が暮らしやすい社会を目指すですから、その一員であるすべての会社やお店などはすべて含まれます。

改正前と改正後。何が変わったのか?


障害者差別解消法の最初の施行は2016年(制定は2013年)。そして今回、2024年4月に新たに施行されました。なぜ、2016年はそれほどでもなかった法律が、今回はTVや新聞などのメディアで取りあげられるほど注目されているのか。それは、事業者が提供する製品やサービスも、直接影響を受けるからです。

参照元:内閣府「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」
https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/law_h25-65.html、図は筆者作成

図の赤字をご覧ください。「合理的配慮の提供」が、事業者も「努力義務」から「法的義務」に変わっています。つまり、法的拘束力があるということですから、2024年4月からは、違反した際は罰則の可能性もありうるとなったのです。事業者にとっては、そのことでブランドイメージが損なわれることも考えられます。

重要なことは「環境の整備」


罰則やブランドイメージの棄損と聞いて驚きませんでしたか。でも考えてみてください。多くの困っている人に手を差し伸べるということですから、「合理的な配慮」は、ある意味当たり前のことですよね。ですから、過度に意識する必要はないのです。
むしろ大切なことは、今後困る人を一人でも減らせるように事前に改善をすることです。それが、3つ目の義務、「環境の整備」です。

障害者差別解消法の改正の話題の中で、Webアクセシビリティが頻繁に出てきます。これは、多様な課題の解決に対応できるWeb・ソフトウェア技術がアクセシビリティに非常に適しており、親和性が高いからです。

  1. 施設や 設備のバリアフリー化

  2. 意思表示やコミュニケーションの支援

  3. 円滑な情報の取得・利用・発信のための情報アクセシビリティの向上 など

Webやアプリ、またシステムの担当者の方に注目いただきたいのが、3)の情報アクセシビリティ。この中で、環境の整備の一例として次のような言及があります。

- オンラインでの申込手続が必要な場合に、手続を行うためのウェブサイトが障害者にとって利用しづらいものとなっていることから、手続に際しての支援を求める 申出があった場合に、求めに応じて電話や電子メールでの対応を行う(合理的配慮の提供)とともに、以後、障害者がオンライン申込みの際に不便を感じることのないよう、ウェブサイトの改良を行う- ※一部抜粋

このように具体的な例で考えると、障害者差別解消法が少し身近に感じてきませんか。

参照元:内閣府「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」

後編に向けて


「法律はとっつきにくい…」という苦手感覚はなくなってきましたか。最近、急にアクセシビリティへの注目が高まっているのは、事業者にとっても合理的配慮の提供が法的義務になったからですが、先に書いた通り、皆が暮らしやすい日常や社会を実現するには当たり前のことなのです。

後編では、「国際規格は難しそう…」というお悩みに応えるべく、自社のWebやアプリのアクセシビリティがどの程度達成できているのかを検査することができる世界的に有名な規格「WCAG」をご説明します。


執筆者プロフィール:長谷川浩之
SHIFT カスタマーエクスペリエンスグループ所属のCXシニアコンサルタント。

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