スキルが全てじゃない! 仕事の円滑さに影響を与える価値観の重要性
こんにちは。 株式会社SHIFTの能力開発部で検定や教育制度を開発をしている林 稔明(りんりん)です!
日々、社員のみなさんの能力・スキルをどう伸ばせば現場で活躍できる人材になるのか、業務や作業を分解したり、人の行動について考えたりしています。
今回は、ビジネスにおいてスキルが重要視されることがほとんどですが、実はスキルよりも重要な価値観について具体例を混ぜながらお伝えします。
はじめに
ある時、ふと
「行動(アウトプット)はスキルだけが影響しているように思っていたけど、そうではなくてその人の価値観・考え方が最も影響しているのではないか。」
「価値観・考え方が異なるから上司は部下に対して、『なんでできないんだ』と不満を持つし、部下も上司に対して『なんでわかってくれないんだ』と不満を持ってしまうのではないか」と思うのではないかと考えました。
そこで、具体的に上司と部下間での価値観・考え方の違いにより業務でどのような問題が発生しているのか。その時、上司と部下それぞれは何を考え、何をお互いに期待しているのかを考えてみようと思いました。
前提として、現代における"部下"となる人の世代について確認してみます。
Y世代、ミレニアル世代と異なるZ世代
Z世代が社会人としてビジネスの世界で活躍するようになり、BtoCやCtoCの企業のメインターゲットとなった現代。あらゆる方面からZ世代とは何なのか、どういった価値観を持ち合わせているのか、どんな消費行動を取るのかを各企業が調査・分析し、日々研究されています。
そもそもZ世代とは1995年~2010年の間に生まれた人のことを指しています。(※諸説あり)
マイクロソフトがWindows95を発売し、一般家庭にパソコンが普及し、急速にインターネット文化が成長した時代です。生まれた時点からパソコンやスマホなどのスマートデバイスに触れ、インターネットに接続することで多くの情報に触れることができた世代です。そのため、Z世代以前の世代に比べスマートデバイスに対するリテラシーが高く、リアルよりもインターネット上でのコミュニケーションを好む傾向があります。
自己愛が強く、他人への関心が低い若年層
あくまで個人の感覚ですが、Z世代は他の世代に比べ自己愛が強く、他人への関心が低い層が多いなと感じています。 これらの背景にはインターネットやSNS(ソーシャルネットワークサービス)の発達があるのではないかと考えました。インターネットが普及する以前では、コミュニティは自治体や村社会の中で形成され、情報もその中で浸透・普及していました。
しかし、インターネットやSNSが普及し情報の民主化が進んだ現代では、誰もが平等に全ての情報に触れることができ、かつ情報のシャワーをスマホやパソコンを通じて、1日に何時間も浴び続けるようになりました。
これまで限られた情報の中で価値観や考え方、自己を形成し、それを所属するコミュニティのために還元するという利他精神が強かったと考えます。現代では、コミュニティよりも個人のアイデンティティが重視されるようになっています。そのため価値観や考え方が利己的になり、自己愛が強く、他者にはあたりが強いという人格が形成されてもおかしくないのではないかと考えました。
また、消費に関して、インターネットやSNSの普及が大きな変化をもたらしていると感じます。特に、あらゆる世代において、「モノ消費」よりも「コト消費」を重視する傾向が見られます。人々は多様な体験を求め、その中で自分の感情や価値観に合った選択を行うことが増えています。
その結果、消費者(ここではSNSの発信者や投稿者)の感情や経験が、より重要視されるようになってきたのではないでしょうか。この変化は、世代を問わず、現代の消費スタイルに影響を与えていると思われます。
人間の行動(アウトプット)の分解
人間の行動は全て何かしらのアウトプットとして発現します。アウトプットには目に見えるアウトプット(契約書、管理ファイル、デザイン、キャッチコピーなど)と目に見えないアウトプット(口頭での合意、コミュニケーションなど)の2つに分けられます。
この2つは形は違えどアウトプットに至るまでのプロセスは共通していると考えます。 人間のアウトプットに至るまでのプロセスを図1-1で整理しました。
この図はアウトプットに至るまでのプロセスをインプット→判断サイクル(思考と判断の繰り返し)→アウトプットの3つに分解しています。 まず初めに、外部から五感(視覚(見る)、聴覚(聴く)、味覚(味わう)、嗅覚(嗅ぐ)、触覚(皮膚で感じる)の5つの感覚)を通じて、情報が脳にインプット(①)されます。そこから思考がスタートしていきます。
味覚を例に例えてみます。カレーを食べたときは旨味や辛味、塩味などの情報が脳にインプットされるでしょう。 すると、おいしいからもう一口食べてみようかな。辛いから水を飲もうかな。と思考(②)が始まります。 ただし、この思考の段階ではもう一口食べる。水を飲むという判断を下すまでは到達しません。 思考を行った次は、その思考を評価し判断(③)を下します。もう一口食べよう。水を飲もうといった感じですね。
さて、ここまでは簡単です。次は判断にどう感情(④)や価値観(⑤)が影響を与えるのかを考えていきます。 感情とは喜怒哀楽に加え、諦めや驚き、嫌悪、恐怖などが挙げられます。これらは形容詞として表現されることがあります。 形容詞には、感情形容詞と属性形容詞の2つがありますが、感情形容詞は人の感情や感覚を表す言葉で「うれしい」「悲しい」「楽しい」「暑い・寒い」などが挙げられます。また、属性形容詞は物事の状態や性質を表す言葉で「大きい」「重い」「早い」「丸い」などが挙げられます。
先ほどの挙げた例で気づいた方もいるかもしれませんが、「おいしい」、「辛い」といった言葉は"感情"形容詞です。 ということは、思考の段階で感情が含まれています。このことから判断サイクルでは単純に外部からのインプット情報だけでなく自身の感情に基づいて思考していることがわかります。
では価値観はどうでしょうか?辛い=水を飲むということは人間の体に染みついた行動です。辛味の原因であるカプサイシンが舌に触れることで、辛味センサーであるTRPV1とくっつき、それにより辛味が脳に伝達され、最終的には痛みとして評価されます。辛味がある状態が続くと涙が出る、体から汗が出る、口の中が痛くて何もできない、といった一般的に好まれない状態になります。しかし、それらの状態を好む人がいたとすればどうでしょうか?辛い物を食べて汗かくのが好き、更に言うと痛みの感覚を押さえるために脳からβ-エンドルフィンが分泌されますが、気分の高揚や幸福感が得られるβ-エンドルフィンによって快感を得たいという人も少なからず存在します。これらは価値観(物後に対する個人の価値・考え方)の違いによるものです。この価値観によって感情に変化が起きます。
前者のように辛味を媒介して何かを得たいわけでなはない人は、感情は辛いのままであり、すぐに原因を取り除きたい人は水を飲むという選択を取ります。逆に後者のように辛味を媒介して何か(ここでは快感)を得たい人は感情が辛いから嬉しい、楽しい、気持ちいいという風に変化そ水を飲まないという判断をすることになります。
改めてアウトプットに至るまでのプロセスを整理してみましょう。
①インプット:カレーを食べ味覚で旨味、辛味、塩味がインプットされる
②思考:水を飲もうか、飲まないか。
なぜか ④感情:辛い
どうしたいか ⑤価値観:辛味によって快感を得たい
感情の変化 ④感情:嬉しい、楽しい、気持ちいい
最終的に ③判断:水を飲まない
という風になります。
今回はカレーを例に例えましたが、ビジネスにおいても同様のプロセスを辿っていると考えられます。上司から作業指示を与えられたときに、快く返事するかどうかは、その時の感情(楽しい、めんどくさい)や価値観(仕事は給料を得るための手段だ、自分が嫌いな人の指示は聞きたくない)によって左右されます。
ビジネスにおいてはプロセスはあまり評価されず、アウトプット(成果)に対して評価されることがほとんどです。アウトプットはコミュニケーションスキルや資料作成能力、ExcelやPowerPointなどのツール活用力といったスキルが大きく影響すると考えがちですが、これまでの内容を踏まえるとアウトプットはあくまでも最終的な判断の形であり、真に重要であるのは、判断のサイクルを支える感情や価値観であることがわかるのではないでしょうか?
自分の軸を持ちながら、ビジネスライクな価値観へ
ここまで、従来と近年の価値観の違いとその価値観がアウトプットに与える影響をお伝えしました。 価値観は各個人を形成する重要な要素であるため、全てにおいて正解はありません。 しかし、ビジネスにおいて一定の価値観を持ち、感情をコントロールすることで成果につながるアウトプットを出すことが求められます。そのために自身の軸となる価値観とは別に、ビジネスにおける思考・判断をするためのビジネスライクな価値観を持ち合わせることが重要です。
そしてビジネスライクな価値観を身につけることで成果につながるアウトプットを出すことができるようになり、組織から成果から評価されれば新たな役割や責任を与えられると思います。そこからまた新たな価値観を得ることで更にステップアップしていく。という価値観のアップデートによるステップアップサイクルを回すことができます。
このステップアップサイクルに突入するためには、まず上司(ここではリーダーや課長レベルを想定します)の価値観を知り、ビジネスライクな価値観を身につけることが必要です。1つの例を元に上司と部下の価値観を見てみましょう。
このような会話を見た・経験したという方は多いのではないでしょうか?この会話の裏に隠れているそれぞれの考え(感情や価値観)を見てみましょう。
()内がそれぞれの考え(感情や価値観)
会話は思考と判断を繰り返した結果、アウトプットとして出たものです。アウトプットの裏にはアウトプットに至るまでのプロセスで説明した通り感情や価値観が存在します。1つ目の例なので、丁寧に解説していきます。
まず、始めに上司の「部下には日ごろから報連相の重要性を伝えているので、自分からは聞かないが最近聞かないから一応聞いておこう」には「部下は何かあれば上司に報告するものだ」「重要性を伝えているものは実践してくれるものだ」という価値観があります。
次に、部下には「遅れてると言ったら怒られるかもしれないから言ってなかったのに...ついに聞かれてしまった」には「怒られるのは嫌だ」という価値観があります。 また、「上司はマネジメントすることが仕事なんだから、普通聞いてくるよね」と「上司は全面的に自分を管理してくれる」という価値観もあります。
上記の会話のような状況が発生してしまう裏側には、上司と部下で価値観が異なることが原因として考えられます。では、なぜ価値観が異なってしまうのか考えてみましょう。その前に少し脱線してしまいますが、そもそも会社にはどんな役割が与えられ何を追求すべきでしょうか。
中小企業基本法では中小企業を「多様な事業の分野において特色ある事業活動を行い、多様な就業の機会を提供し、個人がその能力を発揮しつつ事業を行う機会を提供することにより我が国の経済の基盤を形成しているもの」と位置付けられています。
まとめると、新たな産業の創出、就業の機会の創出・提供、市場競争における経済の活性化といった役割が与えられています。 これらの役割を果たすために企業は経済活動の中で人材やIT、機械への投資、商材やサービスの提供による売上拡大、更に企業を拡大し、市場経済を構築するために利益の追求を目指す必要があります。
そのため、取締役や執行役員を含む役職者(部長、課長、係長など)はヒト・モノ・カネ・情報を適切にマネジメントし利益を追求することが重要視されます。かつ、これらの役職者が管理する単位はメンバー1人1人やPC1代、机1台といったミクロの視点ではなく、部門単位や会社が保有する電子機器全般数百台といったマクロの視点での管理がメインとなります。
さて、上司と部下の価値観の話に戻りましょう。先ほどの説明の通り上司は会社の利益を追求する必要があります。そのため価値観としては、個人の考えや想いよりも売上拡大につながるかどうか、コストが増加しないかどうかといった言わば機械的でビジネスライクな価値観を持つことがです。
逆に部下の価値観としては、企業の利益追求よりも自分の5年後のキャリアがどうなるか、今やっているプロジェクトを怒られずに無事に終わらせることが出来るか、といった一人称視点的なミクロ視点の価値観を持っていることが考えられます。
これらから分かる通り上司と部下の価値観に大きな開きがあり、それぞれがそれぞれの価値観に歩み寄らない限り例のようなコミュニケーションエラーは尽きないと言えます。ただ、上司が部下のミクロ視点の価値観に寄り添いすぎてしまった場合、マイクロマネジメントになってしまい上司の工数を圧迫してしまったり、指示が多い・細かすぎて部下が逆に不満を持つ、成長しないといった不都合が発生することが多くあります。
上司が部下に歩み寄りつつも、部下の価値観を上司の価値観に合わせられるようにしていくことが考えられます。部下にミクロ視点の価値観を持ちながらもマクロ視点の価値観を持たせることにより、上司の言っていることがわかり、それを踏まえた上で自分の価値観を相手に伝えるといった理想的なコミュニケーションができるようになると考えます。
そのためには、日ごろから上司と部下がそれぞれの価値観をお互いに開示し合い、共通の価値観を構築することが必要です。注意点としては上司として部下に期待するあまりビジネスライクな価値観を押し付け、部下自身の価値観を蔑ろにしないことです。価値観はアウトプットの根柢にあるため、無理な価値観の更新によってアウトプットの質が悪くなってしまったり、そもそもアウトプットが出てこないといった事態は避けなければなりません。
次は、具体的な業務中の会話の中での上司・部下の目線で何を考えているのか紐解いてみましょう。
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