企業のAI活用とは、知を育て、人を育て、組織知のOSをアップデートすること
株式会社SHIFT、DAAE統括部に所属するフジワラです! ノープロンプト生成AIサービス「天才くん」を担当しています。
AIサービス担当として、まずは「自社内に生成AI活用を浸透させる」という課題に向き合いました。 試行錯誤の結果、「AI社内浸透は方法論化できる!」という結論にいたったので、今回まとめてみたいと思います。
「AI導入?何から始めるべきか…」「社員の利活用が進まず停滞ぎみ…」。AIの社内浸透に課題感を抱えている、経営者・導入後担当の皆さまに読んでいただけるとうれしいです。
1.SHIFTの「DAAE統括部」とは
株式会社SHIFTの新規事業創出部門です。高い専門性をもったメンバーによるアジャイル開発を得意としており、さまざまな自社事業を企画・開発・運用しています。
SHIFTの新規事業部門には大きな特徴があります。それはサービスローンチ前に、自社グループ従業員1万人に試用してもらう体制があるということです。試用人数の多さもさることながら、隣のデスクの社員に話しかけて「なぜここで離脱したの?」と直接インタビューできる身近さの強みもあります。
1万人による大量・高精度な概念検証を行い、厳しいKPI水準をクリアーしたプロダクトだけが世の中に提供される仕組みだからこそ、SHIFTのDAAEは高い勝率で“売れるサービスづくり”を実現できる構造になっています。
2.「天才くん」とは
DAAEの最新プロダクト「天才くん」は、プロンプト不要で生成AIを社内活用できるサービスです。 先の全社員試用時の試行錯誤のプロセスを経て獲得した、AI社内活用ノウハウを詰め込んであります。
天才くんの最大の特徴は、業務工程ごとの生成AI活用テンプレートをプリセットしていること。プロンプトを意識する必要が無いので、スキル・リテラシーを問わず誰もが簡単に生成AIによるイノベーションの恩恵を受けることができます。もちろん導入企業ごとの業務ニーズに応じた、独自テンプレートの作成も可能です。
3.「天才くん」は逆転の発想から生まれた
本来自由度の高さが魅力のはずのChatGPTに対し、利用用途をテンプレート化して制限してしまうのが「天才くん」です。
その狙いは、あえて選択肢を狭めることで、ユーザの迷う余地をなくすこと。 「何をしたら良いか分からない」「プロンプトの書き方が分からない」という従業員に対し、事前に用意された業務利用テンプレートを選び、必要項目を記入するだけというスキル・リテラシーを問わない使い勝手を実現しました。
高い自由度を制約するという“逆転の発想”を取り入れた結果、SHIFT社内の試用においても、特に初心者ユーザの心理的ハードルが下がり、利用促進が確認されました。
ChatGPTを利用したいものの、「AI教育に手間と時間がかかる」「AIを使う社員と使わない社員の格差が広がるばかり」という声をよく聞きます。AI組織浸透の課題には、まずはテンプレート提供から始めることで社員を迷わせない工夫が、効果的でぜひお薦めです。
4.逆転の発想「天才くん」による4つの効果
ここまで「天才くん」の概要をお伝えしました。 ここからは、テンプレート化・型化という「天才くん」のコンセプトが創出した大きな効果について、社内浸透時の工夫も含めて以下の4点をご紹介します。
5.シンプルに、社内利用率が爆上がりした。
まずは結果から。「天才くん」の社内試用の結果、社員のAI利用率が爆上がりして利用者数を大きく増やしました。
ChatGPTを自由に使える環境では重い腰が上がらなかったユーザ層が、「天才くん」による型化の仕掛けにより、AIに触れるという大きな一歩を踏み出し始めました。
「天才くん」は業務目的特化なので、社員利用率向上=全社生産性改善に直結するインパクトを創出します。
6.社内の暗黙知が形式知となり、どんどん蓄積されてきた。
天才くんには日々新しいテンプレートが追加されています。 社内運用の工夫として、部門ごとの多様な利用ニーズをヒアリングする窓口を設け、プロンプトを書ける一部のメンバーが型化し、社内公開する運用フローが確立されています。
現場ニーズを拾いあげ、テンプレート化する運用を続けた結果、各部門内にとどまっていた固有のノウハウが、全社共有のナレッジとして可視化されるようになってきました。そうして蓄積されたテンプレートの中には、「あの部門はこんな風にしてオペレーションエクセレンスを実現しているのか!」と驚かされるものも多くあります。
ChatGPTの利用を各個人に委ねる運用の場合、個人的なノウハウは本人止まりで埋没してしまっているでしょう。
一方、「天才くん」の社内テンプレートを増やしていくプロセスは、これまで個人の経験&勘に依存していた属人的な暗黙知を可視化し、組織の形式知化・全社標準化へと昇華していくプロセスになり得るのです。「型化」の大きな効果の一つと言えるでしょう。
7.効果測定が可能になり、次の打ち手が明確になった。
「AI導入の効果が不透明で、ROIを試算しづらい」というご相談をよくいただきます。たしかにChatGPTの自由な利用の場合は、私的利用含めて用途が千差万別になり、全容をつかむことが困難になります。
一方「天才くん」の効果測定は、明快で容易です。業務目的特化型なので、下記のように全社員の利用をビジネスインパクトとして定量化することができます。SHIFT社内では、日次/週次/月次単位でユーザ利用状況を捕捉し、運用改善に活用しています。
議事録要約テンプレートによる業務削減効果=20分 / 回 × 全社員利用回数
人材スカウトメール作成テンプレートによる業務削減効果=10分 / 回 × 人事担当社員利用回数
ChatGPT利用時にありがちな、AIとの雑談チャット=無し(業務目的特化テンプレートしか存在していないため)
また、定量的に計測できると課題発見の精度が上がり、AI組織浸透に向けて運用改善のネクストアクションを考えられます。
AIニーズの3つの種類
AIの利用者数と利用回数をマッピングすると、AI利用ニーズを明らかにすることができます。ポートフォリオの視点で、貴社に適切なテンプレートをラインナップしていきましょう。
フック型:初利用者の親しみやすさに特化した天才くん(ランチ検索くん等)
ホリゾンタル型:全部門で汎用的に使われ、業務効率化に大きく貢献する天才くん(議事要約くん等)
バーティカル型:個別部門ごとの業務に特化した天才くん。利用人数は少ないが深く使い込まれる傾向がある(発注書チェックくん等)
テンプレートが充実してくると、貴社固有の組織知の全体像が明らかになってきます。それは貴社の歴史の中で培われた、ノウハウの集合知であり資産です。今後、テクノロジーがどんなに進化したとしても模倣できない、貴社固有の文化を形式知化し、DNAとして継承・発展させていきましょう。
4種類のユーザ
ユーザごとの利用テンプレート数と利用回数をマッピングすると、ユーザのAIに対する行動傾向を明らかにすることができます。ユーザ育成の視点で、段階的な成長プランと施策をラインナップしていきましょう。
ビギナー:利用テンプレート数も回数も少ない状態。接触数を増やし慣れる段階を提供しましょう。
ライトユーザ:利用回数は少ないが、利用テンプレート数が増え巡回しているユーザ。生まれだした関心を引き出しコアユーザへと成長させる段階を提供しましょう。
ニッチ・ヘビーユーザ:利用テンプレート数は少ないが、利用回数が大きく伸び業務活用にフォーカスできているユーザ。業務成果を他の部門にも横展開できるように事例化しましょう。
マス・ヘビーユーザ:利用テンプレート数も利用回数も多く、理想的に使いこなしているユーザ。ベストプラクティスとして、他の社員に影響を与え巻き込む役割を与えましょう。
8.自律的AI人材・組織育成の4ステップ
AI人材を見出し、組織へと好影響をおよぼしていく流れは、下記4ステップに整理できます。
機会を与える
才能を発見する
才能を育成する
組織全体に波及させる
ユーザ利用動向を可視化し検証していると、「群を抜いて、圧倒的に使いこなしている卓越した社員がいる」という事実に気が付きます。先のユーザデータで、突出した位置にマッピングされている社員です。
本人たちにインタビューすると「AIを使うのが楽しい」「業務効率を追求することに関心がある」と動機はさまざまですが、AI人材としての適性をもった才能を発掘できることは、運営者としてはこの上ない喜びです。
運営としてのネクストアクションは、彼らの裁量を増やし、活躍の領域を拡げてあげることです。
AI活用社内エバンジェリストとしてテンプレート作成・公開の権限を付与する、社内発信の場を与える等、組織全体に好循環を生み出す役割をお願いしていきます。
AI適正人材が自走し、次なるAI適正人材を生み出していく自律的な流れが構築できれば、貴社のAI浸透はもう目前です。
9.企業のAI活用とは、知を育て、人を育て、組織知のOSをアップデートすること
「天才くん」のサービス特徴であるテンプレート化・型化が、AI組織浸透に効果的であるというお話をしてきました。
型化によりAI利用のハードルを下げるという入口の話から始まり、可視化による才能の発掘と自律的な組織浸透を実現し、定量的なビジネス成果を創出する出口の話までを概観しました。
ここまでの話を、AI組織浸透のフレームワークとしてまとめてみます。この順序で進めていくことで、AI未浸透企業であっても自律的にAI浸透企業へとトランスフォームできるでしょう。貴社は今どの段階にありますか?ボトルネックはどこにありそうでしょうか?
10.AI組織浸透について一緒に語り合いましょう
AI組織浸透には、木を育て森を育てるようにして、組織をデザインし続ける意志と実践が大切です。今回書ききれなかった苦労やノウハウも多数ありますので、AI利活用に困りごとがありましたら、壁打ち程度でも構いませんのでお気軽にお声がけください。
貴社の中にも潜んでいるであろうAI適正人材=“AI活用の天才くん”を一緒に見出し、未来のAIリーダーへと育みましょう!
※天才くんやAI利活用に関するご相談・お問い合わせはこちらから:https://tensaikun.jp/
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