DAAE流、インバウンド/アウトバンドのトレンド・ビジネスチャンスについて分析したみたPart2
はじめに
こんにちは、株式会社SHIFT DAAE部のでじまです。
DAAEとはデザイン(Design)、迅速性(Agility)、組み合わせ (Assembly)、経済品質(Economic quality)の頭文字をとったSHIFTオリジナルのプロダクト開発フレームワークです。業界職種問わず様々な分野についてDAAE流に発信しています。
「DAAE流、インバウンド/アウトバンドのトレンド・ビジネスチャンスについて分析したみた」は3部構成になっており今回は第2弾になっております。
前回は1964年から2023年までのトレンドを分析し、地域・国別のインバウンドまで詳細を見てきました。国のテンミリオン計画などによって、アウトバウンド数が増加したということ、ビジットジャパンキャンペーンやアジア諸国のビザ緩和などによって、特にアジア地域のインバウンド数が増加したことが分かりました。
今回part2では、特に伸び率の高かったベトナムのインバウンド数が増えてきた理由とその背景についてをDAAE流に分析していきたいと思います。
また、このシリーズはPart3まであり、既存のビジネスチャンスに活かせると思いますので、是非ご一読ください。
この記事はこんな方におすすめ
新規事業を立ち上げている人
海外の情勢が気になる人
事業で海外エンジニアに開発の委託を検討されている人
1.ベトナムのインバウンドトレンドについて
まずは、ベトナムイバウンドトレンドを見ていく前に、訪日観光客の推移をおさらいしてみます。
訪日観光客の推移
グラフ1の左側では訪日観光客の総数を表しており、2014年において1,400万人程度だったものが、2019年には約3,200万人まで2倍以上に伸びております。これはpart1でもお話ししたとおり、国のテンミリオン計画などによって、アウトバウンド数が増加したということ、ビジットジャパンキャンペーンやアジア諸国のビザ緩和などの効果の表れです。
では、今回フォーカスするベトナムからの訪日観光客の推移を見てみましょう。
ベトナムからの訪日観光客の推移
グラフ1の右側ではベトナムからの訪日観光客数を表しており、2014年は約12万人だったものが、2019年には約50万人と4倍くらいまでに伸びております。訪日観光客数の総数はこの5年で2倍の伸びに対し、ベトナムに着目すると4倍もの伸びており急成長が見られました。
どうして、ベトナムが日本への観光客数をのばしたのか、成長スピードの違いについてこの後さらに調査していきたいと思います。
ベトナムの訪日旅行への追い風
調査の結果、このベトナムの急成長の要因は2つあると考えられました。
その要因にこの後ついて詳しく解説します。
ビザの取得
1つ目は来日ビザの取得についてです。
以前はハノイとホーチミンの領事館でしかビザの取得ができず、日本への旅行はハードルが高いものとなっていました。
2016年以降、取得拠点が拡大し、指定代理申請窓口と旅行代理店でも取得が可能となりました。その結果、もともと2カ所でのビザ取得でしたが、現在は13拠点+49社で可能となりました。このことによってビザ取得のハードルが下がったと思われます。
空路の拡大
2つ目は空路です。
まず、先駆けとして2014年に国際線専用ターミナルが拡張されました。
あと追うように、2017年、2018年と続けてJerstarやVietjet Air.comといった格安航空であるLCCが日本-ベトナム間での就航を始めました。
また、それにともなって3泊4日で10万円といったお手頃の日本旅行ツアーが発売されるようになりました。日本へのツアーの値段が下がったこともまた観光客増加の要因になったと考えられます。
つまりビザ取得のしやすさが向上したこととLCCが就航したことの2つの要因によってベトナムから日本への旅行のしやすさが格段にアップし、訪日観光客増加の追い風になったと考えられます。他にも何か要因がないかと考え、次にベトナム経済成長の点から見てみることにしました。
2.ベトナムの経済成長について
ベトナムの経済情勢を見るためにまず物価と月収の推移を調査しました。
ベトナムの物価と月収の推移について
グラフ2の左側は2005年を100とした場合の物価推移を表しています。
日本の物価はこの15年間でほとんど変わっていないのに対して、ベトナムの物価は3倍上昇しています。また、物価上昇に伴って給与も上昇することが予想されるので調査しました。
グラフ2の右側はベトナムの月収チャートになります。
こちらは2013年からの推移ですが約2倍の月収上昇が確認できました。
物価の上昇に伴って給与も上昇し、生活が豊かになったことが想像できますね。つまり、物価が上昇し、それに合わせて月収の増加もしており、いい意味でのインフレになっていることが確認できました。
では次に所得層がどのように変化しているのかを見るために、ベトナムの世帯所得の変化について調査しました。
ベトナムの世帯所得
グラフ3は2000年から2020年の20年間で世帯所得がどのくらい変化したのかを表しています。このグラフから読み取れることは所得が5,000~35,000$の中間所得層に分類される層が2000年には全体の11.7%であったのに対して、2020年には51.9%と世帯の半数を占めていることです。
以上のことから、国民の半数以上が中間所得層と呼ばれる余裕のある生活を送っていることが分かりました。また、特に所得幅が10,000~35,000$の中間所得層の上位層の増加がみられました。
要因としては都市化の加速、高所得圏(ホーチミン/ハノイ)の人口増加、高所得向け医療サービスの拡充が考えられます。
次になぜこの20年間にこれほどの所得の増加が可能になったのか考察するために、国内総生産の成長率について見てみました。
国内総生産の成長率
まず、国内総生産とは1年間などの一定期間内に国内で産出された付加価値の総額のことで、国の経済活動状況を表します。成長率で表すと、前年よりも総生産額が多い場合はプラスに、少ない場合はマイナスになり経済成長を図る指標になります。
グラフ4では日本とベトナムの国内総生産の成長率の変化を示しています。日本は世界的に大きな影響を及ぼした「リーマンショック」や「コロナウイルスの蔓延」の際はマイナス成長と世界経済と合わせた動きをしているのに対して、ベトナムは継続的なプラス経済成長を実現しています。ベトナムは世界経済の受けつつもそれ以上の成長をしており、その結果として所得の増加につながっていることが考えられました。
どうして、こんなにも目覚ましい経済成長が可能となったのか、その理由の一部について調査しました。
ベトナムへの日系企業の進出
日本とベトナムという観点で見てきましたので、まずは日系企業の進出について調査しました。グラフ5より、日系企業のベトナム拠点はこの10年で約2倍になっており、進出が加速しています。その理由は主に2つあると考えられます。
まず1つ目は、アメリカと中国の貿易摩擦を背景に、中国からの生産移管先にベトナムが選ばれたことです。
次に2つ目は、製造業や中小企業のベトナムへの進出増加です。製造業の割合が高く(50%以上)中小企業も同じく、割合が高いことが特徴です。
代表的な製造企業としてはキヤノン、パナソニック、トヨタ、ホンダが挙げられます。これはタイと同じ傾向です。
進出先のとしてはホーチミンが最多で1,000社超、次いでハノイが約800社と2大都市圏に集中していることが傾向としてあります。
ベトナムのIT経済成長について
最後に私たちSHIFTはIT企業ですので、ITの観点からベトナムの経済成長について調査してみました。
グラフ6の左側はベトナムのIT市場売上高(オフショア開発を含む)を表しており、2021年では約1,400億$と2015年からの6年間で2倍以上に成長しており、これが経済成長の下支えとなっていることが分かりました。
また、グラフ6の右側ではICTリソースについて示しており、2015年で70万人超だったIT人材が2021年には110万人超と6年間で40万人もの人材が増えていることが分かります。さらにベトナム政府は、2025年までに110万人のIT技術者を育成する目標を掲げており、これを既に前倒しで達成しております。
SHIFTもSHIFT ASIAという拠点をベトナムに持っていますし、これはオフショア開発拠点としても、ますます需要が上がってくることが予想されます。
ベトナム国内での日本旅行への追い風要因があることとベトナム国内の目覚ましい経済成長していることが、ベトナムから日本へのインバウンド数が急増の最大の理由であるということが紐解けました。
最後に、今まで分析と今後のインバウンドについてをまとめていきます。
3.今回のまとめ
今回の調査では、インバウンド数の伸び率が特に高かったベトナムについてその要因を分析してきました。
①ビザの取得方法の多様化やLCCの就航によってベトナム-日本間の移動がしやすくなったこと
②ベトナムは急激な経済成長を続けており、余暇に使うお金が増えたこと
これらが要因となって日本へのインバウンドが伸びていることが分かりました。
また、ベトナムの経済成長について詳細に見ていくと、日系企業の進出やIT人材の増加によるIT産業の成長が要因としてありました。
前回はインバウントトレンドについて、今回はベトナムに着目して見てきました。次回の最終章では、これまでの分析を通じた日本におけるインバウンドビジネスチャンスについてをDAAE流に分析していきたいと思います。
4.インバウンドにおける調査ソース
主に以下のような参考文献を元に、調査を進めていきました
訪日観光客データ
JNTO日本政府観光局
ベトナムの日本旅行への追い風
訪日ラボ
月収チャート
CEIC DATE
ベトナムの世帯所得
ユーロモニター
経済成長についてのデータ
datacatalog.worldbank.org(Data Commons 経由)
日系企業数データ
外務省「海外進出日系企業実態調査」
ベトナムのIT経済について
スマラボ(ベトナム情報通信省の白書 経由)
※本稿内の図表は上記ソースよりSHIFTにて作成
▼Part.1
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