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フレッツ光回線で実現するIPv4とIPv6の併用環境構築法
はじめに
みなさん初めまして。株式会社SHIFTの福本です。
自宅でIPv4 over IPv6(IPoE接続)と IPv4(PPPoE接続)の併用環境を構築しています。
当該構成に変更してから、以前よりインターネットを安定して利用できるようになり、また、動的IPによるIPoEプランでは利用できないダイナミックDNS(動的IPとホスト名とを対応付けるシステム)や、IPSec等のサービスもIPv4にて継続利用できていますので、構築方法をご紹介したいと思います。
みなさんのご自宅インターネット環境拡充検討時のご参考になれば嬉しいです。なお、以下の説明は、ご自身でブロードバンドルータをカスタマイズ設定されているなど、ネットワークの基礎知識がある方を対象としています。
経緯
コロナ禍のテレワーク時にインターネットが不安定になる事が増えたため、IPv4からIPv6(IPoE接続)に切り替えることにしました。
しかし、単純にIPoEに変更した場合、ダイナミックDNS等の一部のサービスが利用できなくなることがわかりました。 そこで、既存のルータ(Synology)のインターネット側に新たなIPv6対応ルータ(Buffalo)を追加し、IPv6(IPoE)とIPv4の併用が可能な環境を構築しました。
※IPoEプラン(動的IP)では、ダイナミックDNS、P2P型オンラインゲーム、VPN接続(IPSec)等含め特定のポートを使うサービスは利用できない可能性があります。
IPv4とIPv6
【認証方式について】
IPv6のインターネット認証方式には、IPv4でも利用している「PPPoE(PPP over Ethernet)」と「IPoE(IP over Ethernet)」がありますが、現在では多くのプロバイダで「IPoE」方式が用いられています。
「IPoE」は、「PPPoE」のようなID・PW認証ではなく、回線認証にてそのままVNE(IPv6接続機能提供事業者)を介してインターネットに接続されます。
よって、認証による負荷もなく、プロバイダ側における「PPPoE」認証の混雑による回線速度の低下も回避できることで、同じ回線でもインターネットが早くなる可能性があります。
【高速通信方式(IPv4 over IPv6)について】
IPv6は、IPv6用の広帯域で高性能な設備を利用して通信するため、IPv4網と比較し通信が安定し、データ転送も高速となります。
しかし、今もIPv4アドレスのサーバやクラウドサービスが多く、それらと相互に通信するには、IPv4パケットをIPv6にカプセル化し通信させる「IPv4 over IPv6」技術が必要です。
これにより、IPv4とは別の広帯域で高スペック化されたIPv6設備を経由してインターネットを利用できるため、高速な通信が可能となります。
「IPv4 over IPv6」技術には、MAP-E方式、DS-LITE方式などがあります。フレッツ光回線での「IPoE」と「IPv4 over IPv6」技術の組み合わせには、 MAP-E方式 の 「v6プラス」「OCNバーチャルコネクト」、DS-LITE方式 の 「v6コネクト」「Transix」「クロスパス」などがあり、 プロバイダによって異なります。
ただし、多くのプロバイダで導入されている動的IPアドレス利用時のMAP-E方式やDS-LITE方式では、一部の通信型ゲーム、ダイナミックDNSサービス、特定のプロトコル(PPTP、SCTP)サービス、VPN(IPSec)などの利用が難しいといった問題があります。
上記問題を解決するのが、IPv4 over IPv6(IPoE)と IPv4(PPPoE)の併用となります。
構成イメージ図
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構成環境
ONU(ひかり電話機能なしでホームゲートウェイではありません)
契約回線
フレッツ 光ネクスト マンション・ハイスピードタイプ(下り最大200Mbps,上り最大100Mbps)プロバイダ
ぷらら(v6コネクト) ぷららでのIPv6とIPv4の同時利用について
※筆者環境では契約変更は不要でしたが、利用サービスによっては、IPoE接続するためにプロバイダ等への申込が必要となります。ブロードバンドルータ
「Synology RT2600ac(以下「Synology」と記載)」 BUFFALO WSR-116DHPL2(以下「BUFFALO」と記載。PPPoEパススルー搭載ルータ)
※ホームゲートウェイを利用されている場合、Synologyのようにルータに2つの回線を 利用できる機能があれば、ルータ1台で構成できると思います。
構成変更方法
併用の設定のみ紹介しています
1.IPoE接続ルータとして「BUFFALO」を「ONU」と「Synology」の間に設置します。
Synology でデュアルwan接続するには、インターネット側からの物理配線が2本必要ですが、Synologyには機能がないためです。
※ONUがホームゲートウェイタイプであれば当該機器が不要な場合もあります。
◆Synologyの背面
2本を「BUFFALO」と接続します。
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2.「BUFFALO」管理画面「Internet」メニューでIPoE(v6コネクトを使用する)とDNSを設定します。(PPPoEは設定せず、パススルー機能を利用します)
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3.「BUFFALO」のLAN側Interfaceに任意のIPアドレスを設定します。
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4.安全性を向上させるため、「BUFFALO」の「NDプロキシ」を有効にします。
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5.「Synology」の「インターネット」メニューの第一インターフェイスにPPPoE接続の認証IDとPWを設定、第二インターフェイス(LAN1)に「BUFFALO」で設定したLAN側のIPアドレスを設定します。
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6.「Synology」の「インターネット」メニューの第一インターフェイスにPPPoE接続の認証IDとPWを設定、第二インターフェイス(LAN1)に「BUFFALO」で設定したLAN側のIPアドレスを設定します。
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7.設定した端末がIPoEで接続できていることを確認します。
「確認くん」にアクセスし、ゲートウェイを確認することで、IPv4での接続かIPoEでの接続可を確認できます。
◆IPoE接続の場合◆
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◆IPv4接続の場合◆
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8.PPPoE経由で利用したいサービスが利用できることを確認します。 筆者の場合は、従来から利用しているダイナミックDNSを用いてのVPN接続が可能であることを確認しています。 ※国によってはLINEやYahooのサービスが利用できないことがあるため、海外渡航時などのVPN接続にも利用しています。
変更後
以前のような不安定さはなくなり、契約回線200Mbpsベストエフォートに対して、スピードテストにて常に400~500Mbpsの下り速度を確認できています。
下記に同一端末でのスピードテスト結果を記載しておきます。ベストエフォート回線ですので、タイミングによって速度は変わります。
IPoE接続時のスピードテスト
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IPv4接続でのスピードテスト
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IPv6接続(「IPv4 over IPv6」なし)でのスピードテスト
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おわりに
今回は、フレッツ光回線でのIPv4とIPv6の併用環境(2セッション)の構築方法をご紹介しました。設定後は接続が安定し、スピードテストでも良好な結果が得られました。ダイナミックDNSやVPN接続も問題なく利用できています。
■参考情報
フレッツ光ネクストのプランが下り最大200Mbpsの場合において、IPv4のPPoE接続に対しては、フレッツ 光ネクスト網内で200Mbpsに帯域制限がかけられますが、IPv6 IPoE接続にはかけられません。 よって、IPv6 IPoE方式の下り速度は、アクセス回線区間スペックの1Gbpsになります。
この情報が皆さんのインターネット環境改善に役立つことを願っています!
執筆者プロフィール:福本 恭子
SIerにてネットワーク機器や各種サーバの設計、構築、運用管理を担当。
その後、企業内情報システム部門のマネージャーとして、ネットーワーク機器類や 各種システムの導入計画の策定、要件定義、RFPの作成やPM業務に11年従事。 現在はSD-WAN導入PJに関わっています。
趣味は、旅行、銭湯巡り、ワインを飲むこと、最近はアニメにもはまりつつあります。
取得資格
・ネットワークスペシャリスト
・情報処理安全確保支援士
・CCNP
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