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ふるさと納税を福利厚生や組織活性化に活用できる2つの秘策

こんにちは、SHIFT DAAE(ダーエ)戦略部の荒木です。同部にてマーケティングアドバイザー、ふるさと納税サービス「まん福」の統括担当を経て、現在は地方創生、 自治体向けの新規企画などを担当しています。

この記事はこんな方におすすめ

・福利厚生等の社内整備が追いつかないぐらい急成長中の企業経営者層の方
・福利厚生サービス利用率の低さにお悩みの中堅企業人事部の方
・縦割り組織の弊害を打破したい大手企業マネージャー職の方


最初に(ふるさと納税は節税策?ではない)


ふるさと納税が活況を呈しています。2023年度で1兆円を超す勢いです。なぜ今、急成長をしているのでしょうか。

もともとは、単なる節税策では?と誤解されることも多いふるさと納税。いま住んでいるところ自治体での住民税を、自分の好きな自治体に「前払い」することと引き換えに「メリット還元」を受けられる国の施策です。

仕掛けとしては、ただ前払いをさせるだけでは、納税者(消費者)に損をさせてしまうので、見返りに30%という破格の投資リターンでお返しをします*。地方の自治体は、なかなか増えない税収をこれで補うことができ、自治体の各事業者も新しい収入源で潤います。一見、「三方よし」です。
*ただしお金ではなく自分の応援する地元の物品をもらう

が、そもそもふるさと納税の狙いとは、日本の都市部以外の地方自治体への人口流入や地域産業醸成など、本来の日本各地のそれぞれの強みに着目し、バランスよく国が発展していくことを目指したものです。そのために、住民税の前払いをしてくれる人に、その3割相当の地域産品をほぼ無料で提供しようという太っ腹企画となっているのです。ですが、気がつけば地元には寄付総額の半分も残らない、なんとも本末転倒な事態がほぼ日常の現実となっています。それが昨年10月の総務省による大幅なコスト規制強化へつながりました。

では、ふるさと納税が生み出している価値の本質とは何で、それをどう活用すれば最大効果をひきだせるのでしょうか。今回は、個人ではなく、企業の側からみたふるさと納税の活用方法について、考えてみましょう。


秘策1 ふるさと納税 企業がどう活用できる?


普段ふるさと納税に関心の薄い消費者層へのリーチ(啓蒙)により、市場に、いまの競争とは別軸の新しい利用者層を「誕生」させる、という発想があります。つまり、従来とは違う消費者層を増やすことで商圏を拡大させ、さらには地域への新しい興味を喚起する。これは真の価値創造を目指した1つの具体策ともいえます。

日本全体でみれば、ふるさと納税の利用者数は約890万人(14.9%)でした(注1)。

一方で、(株)SHIFTが運営するふるさと納税ポータルでの利用率は40%という記録があります。なぜこんなに違うのでしょうか。

現在の一般での利用者は、どちらかといえば、手間をかけてでも、お得に買い物をしたり、もらえるものはもらっておこう、という「ちゃっかり派」の人たちです。「面倒くさがり派」や、「一攫千金派」からすると、わざわざ国の指定する面倒な手続きを踏んでまでやりたいとは思ないようです。そこで、その面倒な部分を、会社側が全部クリアすることで、従業員に、簡単でお得なメリット部分だけを提供する。これは立派に福利厚生といえるでしょう。

つまり、国の施策の使える部分を上手に企業経営に活用してしまう、というわけです。基本的にリターンは国が負担してくれるので、企業としては、それをより使いやすいサービスにする。あるいは金融サポート(例:立替払い)をしてあげる。これらだけでも福利厚生施策となるという技です。これが活用法その1です。


秘策2 縦割部署による組織間の硬直化。これを回避できる「ナナメ理論」とは


もう1つ別の視点での活用方法として、企業の組織改革にも利用するという考えがあります。なぜ個人を対象とした税制の仕組みが、企業の組織改革に役立つのか?その秘密を解く鍵は「ナナメ理論」というものです。

企業は「縦」型組織で、基本的に上から命令が降りてくるカチッとした組織です。一方で、個人的な交流関係は「横」のつながり型で、基本上下のない、ゆるっとした関係です。

これらに対して、企業内での部活など各種コミュニティ活動や、他企業との取引に端を発した個々人の「業務外での人間関係」というものは、メビウスの輪のごとき「ナナメ」型ネットワークといいます。強制力のない代わりに、本当の価値情報だと感じることができる、ジワリとした効き目があります。会社で、他部署の友人がすごくうれしそうに申し込みしていた地元産品、親しい取引先との雑談ででてきた地元返礼品の話など、身近な人からの情報は、どんな広告よりも肌感覚に近い訴求効果があるからです。

昭和の時代には、全社旅行や部内旅行、千趣会のカタログ回し読みなど、組織の壁をこわそうという試みがいくつかありました。時代の流れでそれらは消えていきました。ナナメ型理論はある意味この原点への回帰、ともいえます。

これからの時代は、縦オンリーでも横オンリーでもない、この「ナナメ」型ネットワークをもっているかどうかが、大きな組織間での障害突破や、個々人の成長力の差となっていくと考えられるのです。ふるさと納税の仕組みを、この「ナナメ」型ネットワークを加速させるツールとして使う、という発想がここにうまれてきたのです。


最後に(価値の創造とは?)


ふるさと納税は、一方で大きな矛盾も生みつつあります。盛り上がるほど、逆に都市部は税収を失うので、自治体間でおおきな溝(不協和音)が生じています。さらに、本来の趣旨とは違い、ふるさと納税の主役たる自治体より、関係する他の事業者に、お金が多く流れるようになったのです。そして消費者は、本来それぞれの地域に目を向け応援するというより、お得な買い物ができるデパートとしてポータルサイトを利用しているのが実態なのです。これでは、価値の創造ではなく、価値の「移転」にすぎないわけです。

本来は、価値の創造、つまり、地域への人口流入と、国全体でのそれぞれの地域の特徴と活かした枠割(価値)の発揮により、ほんものの「新しい」価値の創造を、国家全体で目指していたはずです。

「本来の価値創造」について、100年以上前の経済学者シュンペーターの名言があります。それは「創造的破壊」という概念で、英語では、creative destructionといいます。シュンペーターはいまや一般的な言葉にもなった「イノベーション」という言葉も創りだしたことであまりに有名です。私の解釈ですが、新しい価値はいまある「何か」を全く別のジャンルや用途に転用することで、従来には存在しなかった大きな価値を生み出す。

みなさまの会社でも、この価値創造型であるナナメ理論を、ぜひ実践されてみてはいかがでしょうか?この原稿が、少しでもそのきっかけになれば幸いです。

関連リンク (注1)総務省 ふるさと納税 統計データ:https://www.soumu.go.jp/main_content/000897133.pdf

(株)SHIFTでは、「まん福(まんぷく)」というポータルサイトを通じて、自社従業員にそして最近では取引先や外販先企業の従業員の方々に、このふるさと納税のポータルを公開しています。

メディアでの紹介記事: 2024/05/10 NewsPics :
【意外】三方よし。「ふるさと納税で福利厚生」のカラクリ

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執筆者プロフィール:荒木 篤実(DAAE戦略部)
2023年3月 (株)SHIFT DAAE戦略部 マーケティングアドバイザー
2023年9月 同部 ふるさと納税 まん福統括担当
2024年2月 同部 地方創生 自治体向け新規企画担

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