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Agile Japan2021 参加レポート 「アジャイルの心と未来の働き方」

The Heart of Agile

こんにちは。スクラムマスターの伊藤です。

スクラムマスターという肩書ながら、アジャイルの話題が少なかったですが今回はがっつりアジャイルの話をしたいと思います。タイトルの通りAgile Japan 2021 に参加してきました。今年のテーマは「The Heart of Agile」。つまり、「アジャイルの心」です。

やはりアジャイルは、最終的には以前書いたブログのようにマインド(敬意を払う。勇気を出す等)が大事なんだなということを再認識しました。

様々な講演がありましたが、ここでは『アジャイルソフトウェア開発宣言』共著者であるアリスター・コーバーン博士(Dr. Alistair Cockburn)の基調講演「アジャイルの心と未来の働き方」(The Heart of Agile and the Future of Work)についてレポートさせていただきます。

引用元:
Webサイト https://2021.agilejapan.jp/timetable_1116/
講演資料 https://2021.agilejapan.jp/sites/wp-content/uploads/2021/11/10_00_The-Heart-of-Agile.pptx.pdf

《よもやま話》

基調講演は英語でしたが、事前に収録された動画に弊社SHIFTメンバーも含む運営の皆様で良質な日本語字幕を付けていただきました。ありがとうございます。

Heart of Agile

冒頭でVUCAについて触れられました。

VUCA(ブカ、ブーカ)はビジネス用語。Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を並べたアクロニム。1990年代後半にアメリカ合衆国で軍事用語として発生したが、2010年代になってビジネスの業界でも使われるようになった。「今はVUCAの世界になった」というような文脈で使われることも多い。

引用元:Wikipedia

つまり、計画通りの時代は終わったということでした。常に変化していると、変化に対応することが大事なことが分かります。現在のパンデミックの状況をみても一体誰が、予測できたのかということです。

そこで、変化に強く、より多くの価値を提供できる(早くはならないとも強調)アジャイルフレームワークはより一般的になっていくとのことです。これは、スクラムガイドが改定されソフトウェア色が薄くなってきたことからも明らかなようですし、計画通りでなく変化の時代つまり、アジャイルが求められる時代が来ているということが言えそうです。

そして博士はアジャイルの心として4つの言葉を紹介しました。各言葉は次章で紹介します。

引用: https://2021.agilejapan.jp/sites/wp-content/uploads/2021/11/10_00_The-Heart-of-Agile.pptx.pdf 6ページ

スライドの右下にある「Brilliance in the basics」(基礎を完璧にする)ということが大事と言われていました。これは空軍の言葉で戦闘機が多種多様になり、この機種は乗れるが、こっちは乗れないという自体が発生したため、基本の戦闘機を完璧に乗りこなせるようになれば、どの戦闘機も乗りこなせるようにしたことが由来のようです。

この考え方は個人的にも大好きで例えばプログラミングでも、C言語など基本言語が完璧に出来ている方は、どんな言語でも容易に乗りこなせるようになれます。

Heart of Agileはフレームワークやプロセスではなく、会話を決めるコンパスのようなものということでした。アジャイルはどこまでいっても対話が大事です。

4つの言葉

それでは4つの言葉を紹介していきましょう。

引用: https://2021.agilejapan.jp/sites/wp-content/uploads/2021/11/10_00_The-Heart-of-Agile.pptx.pdf 24ページ 

いずれも名詞ではなく動詞で命令文としても使えるとのことでした。

-Collaborate(コラボレート:協調する)
日本人は割と協調が得意なようですが、外資系企業は評価ポイントが明確になっていてそこにCollaborateが入っているかという文化ギャップを感じる話がありました。しっかり協調すること、そして話を聞くことが大事なようです。

-Deliver(デリバリー:配信する)
何のためにデリバリーするのか、3つの種類があると紹介されていました。それは収益のためではなく、内部フローを知るため、価値のために、そして学びのためにデリバリーするといったものでした。Small & Soonと言われているように小さく素早くです。現実とのズレに関してフィードバックを得ることが出来ます。

-Reflect(内省する)
ここが肝かもしれません。疎かにしているプロジェクトが多いようです。内省するとは「1度、止めて」本当に望んでいることは何かを考え把握し、初めて改善に向かうという大事なステップということでした。

-Improve(改善する)
こちらは改善です。アジャイル開発をやっていれば、ふりかえりなどで問題点を挙げて改善していくというプロセスは実践していると思いますが大きく変化するだけでなく、小さく変化していくということが大事なようです。次章で紹介するデルタ・デルタ・テクニックを使って改善をしていくことが紹介されました。デリバリーも内省も、ここに繋がってきます。

《よもやま話》

本章で引用しているスライドは博士が、スクリーンショットを取るならここですよと推奨してくれたページです。シンプルに全てがまとまっていますね。

デルタ デルタ テクニック

Heart of Agileはプロセスではないのですが講演の中で紹介されていた「The “Delta-delta” technique」(デルタ・デルタ・テクニック)が印象的で是非、使ってみたいと思いましたので紹介します。

ポイントは既にある程度うまくいっているものをベースにすることです。そして、最初にその改善の理想はどこなのか決めます。

続いて、そのゴールを10として0.5刻みのスケールで現在位置はどこなのか決めます。例えば5、それともまだ3ぐらいでしょうか。0でなければ、今まで積み上げてきたものがあるはずです。そこから、小さな改善を続けて伸ばして行けば良いのです。

博士は+0.5を目指せと言っていました。そして、8ぐらいに達した場合、ほぼ目的は達成されているとのことでした。完璧を目指さなくても良いアジャイル的な考え方ですね。

引用: https://2021.agilejapan.jp/sites/wp-content/uploads/2021/11/10_00_The-Heart-of-Agile.pptx.pdf 12ページ

この手法は小さな改善を行う魔法のテクニックと紹介していましたが、まさにそうだと思います。

今まで積み上げてきたものを伸ばしていくという0から1ではないため改善がしやすい、見える化が出来て分かりやすい、やってきたことを自然と振り返り自信にもつながるといったメリットがありそうです。

大事なことは「心構え」

スクラムの語源は日本の革新的な10企業に共通するベストプラクティスについてまとめたセミナー資料[”The New New Product Development Game” (Harvard Business Review, Jan 1986 by Hirotaka Takeuchi and Ikujiro Nonaka)]の中に出てくる自律的チームプラクティスの名前であり、アジャイルはトヨタ式の影響を受けているなど実はアジャイルと日本は切っても切れない関係にありますが、博士は守破離についてもご存知のようで、守破離にも触れていました。最近はIT業界でも使われることも多くなっていますが、アジャイルでも 守:基礎を学び 破:自分の型を習得し改善していく 離:新たなプロセスを創出する といったことが大事のようです。

そして、大事なことは「心構え」で、それはお金では買えないとのことでした。

アジャイル開発をやっているが、どうもうまくいかないとき、迷ってしまったときコンパスである「アジャイルの心」「4つの言葉」を思い出して1度立ち止まってメンバーとしっかり対話していこうと思わせてくれる講演でした。

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執筆者プロフィール:伊藤 慶紀
大手SIerにて業務用アプリケーションの開発に従事。
ウォーターフォールは何故炎上するのか疑問を感じ、アジャイルに目覚め、
一時期、休職してアメリカに語学留学。
Facebookの勢いを目の当たりにしたのち、帰国後、クラウド関連のサービス・プロダクト企画・立ち上げを行う。
その後、ベンチャーに転職し、個人向けアプリ・WebサービスのPM、社内システム刷新など様々なプロジェクト経験を経てSHIFTに入社。
趣味は将棋、ドライブ、ラーメン、読書など

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