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ジャーニー経営とWell-beingとアジャイルについて


はじめに


こんにちは。 SHIFTアジャイルコーチの谷川です。
ここ数年で、更に 「Well-being(ウェルビーイング)」 という言葉を良く聞くようになってきました。
更に、その考えを企業経営に取り入れた 「Well-being経営」 という言葉も聞くようになっており、私も2023年の5月に下記の記事を書きました。

私の人生を変えてくれたWell-beingとはなにか?(2023/6/7)

引き続き、私も、Well-beingに関連する様々なイベント(「アジャイル経営カンファレンス」、「パーソル総合研究所 Think Forward 2024」など)に参加しておりますので、 今回は、このWell-beingとアジャイルに関する最新事情について、皆さんと共有したいと思います。

●アジャイル経営カンファレンス
https://agile-keiei-conf.jp/
●パーソル総合研究所 Think Forward 2024
https://rc.persol-group.co.jp/learning/career/seminar/thinktank-updates.html

Beyond GDPという国際動向


「Well-being」がここ数年で大きく着目されるようになった背景にはグローバル潮流があります。(*1)
2021年、グテーレス国連事務総長は「私たちの共通のアジェンダ」報告書を発表し、SDGs達成の加速と国連創設75周年記念宣言の推進を提案しています。 この講演の中で、SDGsに変わる次なる指標として「Well-being」をあげています。

豊かさの指標としてのGDPには限界があるという議論は以前からなされてきており、国連未来サミットでは、“Beyond GDP(GDPを超えて)”をキーワードとして人々の Well-being に重点を置く経済システムを構築するため、いわば Well-being Goals(WBGs) とも呼ぶべき枠組みについての議論が始まるということで注目されています。

GDPの伸びがWell-beingのカイゼンにつながっていない状況が分析され、Well-beingの改善が大きく叫ばれるようになりました。

日本政府の中長期の経済財政運営方針(閣議決定)


日本政府も、令和5年度の骨太方針として、「経済財政運営と改革の基本方針2023について」(閣議決定)を出しており、この中にも、Well-beingに関する次の記述があります。

●政府の各種基本計画等におけるKPIへのWell-being指標の導入を加速する

これからは、経済の成長を評価する指標として、GDPだけでなく、Well-beingという指標を加えるという方針を政府が出しているということなのです。
このような背景もあり、企業コンセプトに「Well-being」を掲げる企業がかなり増えてきている状況です。(*1)

●日本版 Well-being Initiative の設立(2021年3月)

●ファイナンシャル ウェルビーイングの実現
https://www.smtb.jp/financial-well-being
●WELLBEING BEHIND THE WHEEL
https://bentleymedia.jp/archives/3636

大学におけるWell-beingの研究(感性工学)


Well-beingは、今後の注目領域として捉えられてきているため、大学でもこれに関する研究が進められています。
大学では、Well-beingに関しては、感性工学という領域で研究が行われています。
慶応義塾大学の前野隆司教授、京都大学の内田由紀子教授が有名なところですが、様々な大学にWell-beingの研究センターができており、最近では、ウェルビーイング学部を新設した大学もあります。
このようなところでは、Well-beingに関する学術的な研究や調査が実施されており、下記のような情報が発信されています。(*1)

  • 日本のDX化が進まない要因に、日本の企業文化が深く関係している。

  • 大企業病の蔓延により、やる気のある社員が減っている(2:6:2の法則)。

  • 日本の企業文化に起因する社員のやる気には、Well-beingとの密接な関係がある。

  • 日本のミドル・シニアは楽しく働けていない

  • 特にシニアは成長実感をほとんど感じられていない(18か国で最下位)

  • 業務外の自己学習、啓発をほとんど行っていない

  • 政府も成長領域への労働移動の政策として、「リスキリング」 を推奨しており、企業においてもリスキリングが社員育成方針に掲げられてきているがうまく進んでいない。リスキリングが進まない要因にWell-beingが関係している。

  • Well-beingと企業の業績には、密接な関係がある。

  • Well-being関連事業は今後、非常に大きく伸びるビジネス領域として期待されている。

「Well-being(ウェルビーイング)」な状態とは


Well-Beingとは、
「身体的・精神的・社会的に満たされた状態(健康な状態)」
のことを示します。(*2)

これは、世界保健機関(WHO)憲章前文でも定義されています。
身体的、精神的に健康であるというのはわかりやすいと思いますが、 「社会的」 に健康であること、ここがWell-beingのわりと重要なところになります。

Well-beingの捉え方は、個人によって相当ことなります。 組織のレイヤでこれを語るときには、組織・社会のとってのWell-beingを考慮する必要があり、規範的、倫理的、道徳的な枠組みが必要となります。

一般的には、Well-beingは、「幸せな状態」 と言われますが、これを企業内の業務でWell-beingな状態を示した場合には、やる気にあふれた「いい感じの状態」 のことを指すと思います。

●自分の仕事に満足し、仕事を通じて社会とのつながりや貢献、喜びや楽しみを感じることが多く、
怒りや悲しみといった嫌な感情をあまり感じずにいる状態

●そのような仕事や働き方を自分で決めることができている状態

「PL経営」と「ジャーニー経営」と「Well-being」


最近では、企業の経営スタイルにもかなり変化が起きており、ここにもWell-beingの考えが持ち込まれるようになりました。
従来の企業の経営スタイルは。 「PL経営」 というものが主流でした。 これについては詳しく説明しませんが、データに基づく原因分析がないまま、場当たり的な指示が担当部署に届いたり、人件費が「コスト」として抑制の対象となり、「投資」の対象とならないという問題がありました。

これに変わって、今では、「ジャーニー経営」 というものが注目され出しています。(*2)

ジャーニー経営では、売上・利益は結果として生まれるものであり、すべての先行指標は従業員満足(ES)となります。
従業員満足度が高いと生産性があがり、顧客に良い価値が提供できるようになり、その結果顧客満足が得られ、顧客ロイヤルティが高まることにより、企業の売上・利益があがり、その結果、従業員に報酬を出すことにより、更に従業員満足度が高まるというループです。

そして、このジャーニー経営を実現させるためには、「従業員体験→顧客体験→収益」のプロセスを可視化させ、課題を見つけ出して改善を回すことが重要になります。
さらに最近注目されている「⼈的資本経営」についても、従業員体験(EX)への投資により収益を上げる経営が、人的資本経営の本質と言われています。

ジャーニー経営は、CS/ES経営と言われることもあります。

CSとは顧客満足度(Customer Success)のことを指し、ESとは従業員満足度(Employee Satisfaction)のことを指します。企業において業績の向上を図る際にはCSが重視されることは多くありますが、ESもCS向上・企業の利益向上には深い関わりがある指標です。

CSとESは企業の業績アップにおいて強い相関関係があります。従業員が最適な職場環境で高いモチベーションを維持して業務に臨めば、質のよい商品・サービスの提供が期待できます。購入した顧客は品質の高さなどに満足し、同商品・サービスをリピートする可能性も高まるでしょう。また、商品・サービスの良さは口コミとして広がり、顧客の創出へとつながります。

結果として、企業の業績が向上して給与や福利厚生の改善が図れ、ES向上が期待できます。そのため、企業の利益向上にはCSだけではなくESも重要な役割を果たしていることに着目して、ESを重視する経営スタイルがES/CS経営となります。

このジャーニー経営、ES/CS経営で注目されている従業員満足度をあげるものとして、「Well-being」やそれを醸成する「組織文化」が注目されているということなのです。

ジャーニー経営とWell-beingとアジャイルの関係


ジャーニー経営、CS/ES経営におけるプロセスを可視化と、課題を見つけ出して改善サイクルを回すことについては、アジャイル、スクラム関連のプラクティス の適用により可能になるということが、「アジャイル経営カンファレンス」でも紹介されています。

従業員満足度をあげることの重要性については、各企業も十分認識しており、これを上げるために様々な施策が検討されていますが、エンゲージメント調査や1on1面談などの施策導入に留まっているところが多いです。
そのような状況の中で、「Well-being」が、従業員満足度をあげるキーファクターとして注目されるようになりました。(*3)

そして、私の過去のブログでも、このWell-beingや心理的安全性の確保にアジャイル・スクラムの各種プラクティスが有効であり、それが 「組織アジャイル」 を実践することで可能であることを語っています。

組織を幸せにする「組織アジャイル」とは?(2023/6/16)
https://note.com/shift_tech/n/nc21f87ffe0d4

つまり、ジャーニー経営とWell-beingとアジャイルには、密接な関係があるということなのです。

日本政府も中長期の経済財政運営方針として、「Well-being」を掲げており、それを実現できる「組織アジャイル」は、もはや、すべての企業人にとって必須なスキルとなっていると言えると思います。

おわりに


私は、私自身もWell-beingになるために、「組織アジャイル」の啓発活動を積極的に行っています。

社内に複数あるアジャイルを勉強するコミュニティの運営メンバーとして参画して啓発活動をしておりますので、入社してまだ1年経っていない状況ですが、100名以上の方に「組織アジャイル」を知ってもらうことができている状況です。
当社は、若い社員、中途で入社する社員がとても多いため、これらの方々に、「組織アジャイル」を教えることができており、この教えること自体がとても楽しくできており、大きなやり甲斐 を感じています。
また、アジャイル界隈ではかなりメジャーなイベントである 「Agile Japan 2023」 にも登壇させていただくことができましたので、私の大きな目標を一つ達成することができました。

これらの活動により、ほぼすべての会社内の業務に「アジャイル」が適用できることを理解する人を増殖できています。

私は、この組織アジャイルを「SHIFTの文化」にできるように、これからも活動を続けていきます!

私は、この夢のあるアジャイル関連の仕事を本気でやりたいと強く思うようになり、SHIFTに入社しました。
実は、私は定年まであと数年という歳で転職しております。 かなり不安はありましたが、入社して8ヶ月ほど経ち、まだまだ第一線の現場で働けることを実感し、とても充実感のある生活が送れています。

出会いは必然と言われますが、本当に私は、この 「組織アジャイル」 と出会ったときには、ビビッと感じるものがあり、「これだ!」 と確信したことを今でも覚えていますので、この出会いは必然だったと思っています。

引き続き「組織アジャイル」の啓発活動を続け、もっともっと、世の中にWell-being な人を増やしていきたいです。

◆参考文献
(*1) パーソル総合研究所 井上亮太郎 「大人の学びとWell-being」 2024年2月
(*2) Almoha COO / デジタル庁シニアエキスパート 唐澤俊輔さん 「アジャイルな組織カルチャーのつくり⽅」 2024年1月
(*3) 慶応義塾大学 前野隆司教授 「ウェルビーイング」 2022年3月


執筆者プロフィール:谷川 智彦(たにかわ ともひこ)
2023年5月にSHIFTに入社。
組織アジャイル教信者。真剣に「組織アジャイル」でいきいき、ワクワク、幸せに働くことができ、日本を元気にすることができると思っている。

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