SHIFTにおける人的資本開示のリアル
はじめに
はじめまして、SHIFT人事の上岡です。
今日はちょっとお題は固いのですが大事なお話で、最近、人事界隈を歩いたら耳にしない日は無いという、「人的資本開示」について話したいと思います。
なぜいま「人的資本開示なのか」
海外を中心としたESG投資への流れから、「人的資本」への投資によって企業価値の向上につながるという考え方がされるようになり、EU諸国をはじめとして、企業における人的資本への取り組み状況に関する情報開示が義務付けされるようになりました。
そしてその流れは日本にも到来。2023年4月以降に決算報告を行う上場企業において、有価証券報告書における人的資本開示が義務化されたのでした。
おそらく皆さんも、SNSやネットニュースを開くと、人的資本経営 / 人的資本開示に関するイベントやレポートに関するお知らせを目にするのではないでしょうか。
SHIFTにとっての人的資本開示とは何か
SHIFTはITサービスを展開する企業であり、サービス提供は「人」が行っています。
そのため「人」に関する部分は、「技術」「営業」「M&A」とともに超重要領域と位置付けてきました。
(SHIFTではこれを、オセロに例えて”四隅の一つ”と呼んでいます。)
この「人」に関する投資状況や組織の状態は、そのまま事業の先行きを占うもの。ステークホルダーに対して透明性を高めるため、人的資本開示はもちろんのこと、あらゆる事業上の数字の積極開示を方針としてきました。
特に決算発表は毎回全力投球で、数え上げると昨年2023年度は人的資本開示だけで32ページを費やしていました…!
こうした積極的開示は2018年頃から行っていますが、それに伴って株価・時価総額も上昇。毎回決算発表前は眠れない夜がつづきますが、開示は責務だと思ってがんばっています。
こうして決算のたびにアップデートされた情報をもとに、年に1度、統合報告書にまとめます。初めて義務化された開示項目を含めた有価証券報告を提出し、自社サイトも更新。多くの人がSHIFTの情報に触れる機会を作ることも大切だと考えています。
まとめると、SHIFTの開示の方針はこうなります。
決算説明資料 で徹底開示(2018年頃から積極的に人事データ開示)
統合報告書 でサマリ(決算発表でアップデートしたことをまとめ)
自社サイト でデータ推移(過去からの推移がわかるよう、決算のたびにアップデート)
開示資料作成におけるリアルな話
とくに①決算説明資料は全力投球と書きましたが、その分、苦労や悩みも多いのです。リアルなお話をすると…
苦労ポイント1)データをどこまで出していいのか
SHIFTのビジネスモデルは明確かつ構造化されており、さまざまなKPIにより事業上の現状把握・未来予測が可能となります。そのため、株主などのステークホルダーに対して、事業の透明性を高めるために積極的な開示を行っています。
人的資本開示も同じ文脈。事業上の重要領域である「人」に関する部分への投資状況、リターンを開示しています。
3か月ごとにやってくる決算報告でいつも悩むのは、データをどこまで出すかということ。
社内でKPIとして追っている数字はたくさんあります。そのなかには順調に伸びているものもあれば、なかなか思うようにいかないもの、今期はよかったけどこの先課題にぶつかるだろうと予測できるものもあります。
しかも一度出した数字なら、継続的に開示することを求められます。仮に突然開示されなかったら、うまくいっていないのかとステークホルダーは不安にもなるでしょう。
初めのころは、正直おっかなびっくりで、わりと一般的な数字を中心に開示していました。ただ最近は、かなり細かく、クオーターごとの推移まで出すようになりました。他社の開示のなかではまず目にすることのない、採用チャネルの比率や採用Fee率までも。
それは自信があるというよりも、ストーリーが見えてきたから。数年先に何を達成しなければいけないかという大局観が説明できるので、むしろ四半期ごとの変動は気にしないでくださいとも言い切れる。
良い方にも悪い方にも、なぜその結果が出たのか。そして長期的にはどこに向かうのか。
それがはっきり語れるようになれば、開示恐るるに足らず、です。
苦労ポイント2)グループ全体での統一的なデータ収集
データをたくさん出すようになって苦労しているのは、グループ会社を含めて同じ基準でデータ収集をすることです。例えば採用に限っても、
採用チャネル比率
ポジションごとの応募数
経験者・未経験者比率
採用エリア
などなど、基本的にはほとんどの項目でグループ共通で収集をしています。
グループ会社のなかにはジョインして何年もたって、同じようなやり方が浸透してきたところもあれば、ジョインしたばかりで誰に聞けばデータが出てくるかわからない、という会社もあります。
グループ会社も30社を超えるなかで、人力だけで集めるのはもう限界。しかも後からこの数字が欲しいと言っても、とても手が回りません。なので現在では、SHIFT単体からグループ各社人事支援を行う過程で、SHIFTで使っている(必要なデータ項目が網羅された)フォーマットを用いてもらうことや、SHIFT独自の人材管理システム”ヒトログ”を導入することで、同じ粒度でデータを取ることが可能になりました。
ちなみにこのときに大事なことは、データ項目を網羅するだけでなく、入力値もそろえること。一口に”採用チャネル”といっても、各社によって定義や呼び方が微妙に違ってくると、データの取扱が難しくなってきます。神は細部に宿ると言いますが、そこまで徹底するよう努めています。
開示後に取り組んでいること
こうして四半期ごと、あるいは年間での報告の後に、社外イベント登壇などで積極的に”知ってもらう機会”を創出しています。
過去のイベント例:SHIFT、サイバーエージェントに聞く人的資本開示のリアル
そしてこれは社内に対しても同じ。毎回の決算報告後には、当日あるいは翌営業日に社内向け説明会を行うことで、情報を出すだけではなく知る機会を作っています。
また、開示項目はあくまでも、社内で取り組んだ施策に対する結果。本質的には従業員のために何をやっていくべきかが重要です。例えばエンゲージメントを高める施策として、
全社アワードの開催
新社屋を活用したコミュニケーション活性化
社内給与システムによる将来のキャリア設計サポート
などなど、いずれHRブログでも紹介したい施策が目白押しです。
いまSHIFTにできること
人的資本開示を進め、考え方を整理するなかで、気づいたことがあります。
SHIFTは何のために存在し、IT業界のなかで貢献できるのか、ということです。
日本の生産年齢人口の減少、および日本全体の事業会社の売上高の減少が予想されています。
そのためDXで日本の事業会社の生産性を向上させていくことが必要不可欠ですが、それを担うIT人材が日本には圧倒的に不足。これは日本の構造上のリスクになりえるものです。
そうしたなか、SHIFTでは積極的に人的資本投資を行っていますが、SHIFT、あるいはIT業界内だけで投資が完結してしまっては、このリスクの解消にはなりません。日本は発展しません。
そのためSHIFTでは、自らの使命として以下のような業界課題解決に取り組んでいます。
IT業界の構造課題である多重下請け構造を打破する
DXを担うITエンジニアの人数を大幅増加
大風呂敷を広げているように見えるかもしれませんが、これは自分たちの使命であると信じ、自分たちを奮い立たせています。
人的資本経営、人的資本開示を考えるなかで自分たちの目線も上げることができるのかもしれないですね。
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