ChatGPT時代に求められる人材とは
はじめに
こんにちは。株式会社SHIFT ヒンシツ大学グループの永井です。
「ヒンシツ大学」では、SHIFTの技術や経験に基づいた研修を講座として提供しています。 品質やテスト関連を中心にしたラインアップで、講座を取り揃えています。
さて、世の中ではChatGPTが話題を集めています。
禁止すべきかどうかというところが議論になっていることが多いのですが、所詮使うのは人です。 人のためになるのであれば、人の役に立つのであれば、ChatGPTを使うことになるはずです。
ただ、ChatGPTは今まで私たちが見てきたものとかなり毛色が違います。
また、ChatGPTが浸透してくると、私たちの働き方も変わっていくことが予想されます。 人材育成の担当としては、人の側面がとても気になります。
人はどのようにChatGPTに向かえばいいのか、ChatGPTが出現した今、人に求められることは何なのか、考えてみました。
ChatGPTとは何なのか
ChatGPTを一言でいうなら、ディープラーニングの発展形でしょう。
ディープラーニングという言葉が世の中に知れ渡るようになったのは10年ほど前のことです。 その原型は80年くらい前にすでに存在していました。
問題と答えを学習して、問題の形が多少異なっても、それらしい答えを出す仕組みです。
ただ当時は、それを実行するだけのコンピューティングパワーがなかったのです。 目立った成果がみえない状況の中で、研究者たちは地道な研究を続けていました。
そんな中で、部分的に学習するドロップアウトという手法が発見され、またコンピューティングパワーの助けも借りて、実用化への道が開けたのが10年前です。
ディープラーニングはもともとこの一連の手法を指す言葉でしたが、いつの間にか似た仕組みのAIを全てディープラーニングを呼ぶようになっています。 ディープラーニングをさまざまな分野に応用するために、さらに個別に最適化する手法が研究されました。
画像の認識では畳み込みという手法が古くから知られていて、ディープラーニングの実用化を大きく後押ししました。言語の認識については古典的な手法の成果が今一つだったのですが、5年前にコンピューティングパワーにモノを言わせるトランスフォーマーという手法が使えるようになって、一気に進化しました。
問題から答えを出すのではなく、答えから問題を出す仕組みは、生成系ディープラーニングと呼ばれています。 人間が選んだ問題ではなく、世界中の情報を集めて、大容量のディープラーニングに事前学習させる研究も進んでいます。
誰にでも使える点が一気に世間の注目を集めている理由
ChatGPTは人間の脳にせまる容量を持つ生成系事前学習ディープラーニングであるGPTに、言語のインターフェースを付けたものと考えればいいでしょう。 ChatGPTやGPTはOpenAI社が実験版として公開しているものです。
GPTは容量もさることながら、生成結果の倫理性にもこだわり、不適切な出力をしないように注意を払っています。過去には公開した途端に、入ってきた言葉から何を学習したのか、暴言を出力するようになった例もありました。
ChatGPTは言語のインターフェースが付いたことはもっとも刮目すべき点で、APIとかデータ処理とかに詳しい技術者でなくても気軽に使えるようになりました。この誰にでもChatGPTが使えるというところが一気に世間の注目を集めている理由でしょう。AI技術者の話を聞くと、お金をかけて普通に進化したな、と捉えている人が多いように思っています。
ここで一つ反省しなければならないことがあります。
私たちは、このような仕組みをAIと呼んでいますが、内心ではコンピューターだと思っているところがあります。
伝わりにくいところがあるので、日本語にしましょう。
計算機(コンピューター)はプログラムを実行する仕組みです。
同じことを正確に間違いなく実行します。
もし実行結果が違っていたら、プログラムを修正して正しい結果が得られるようにします。
人工知能(AI)は、人間が作ったものにせよ、情報を分析して結果を出す能力です。
情報の過不足によって、答えが正しくない可能性もあります。結果が違っていたら、情報を足して学習し直したりします。
私たちはChatGPTの出力が今一つだと感じた時に、質問を変えてより望ましい答えを得ようとしてしまいます。この行動はChatGPTがコンピューターのように完全な答えを出してくれるという期待を暗黙に含んでいます。言い換えると、ChatGPTの出力に問題がないとすると、それを過信してしまう、いわゆる自己満足バイアスのリスクにつながる行動です。
ChatGPTは事前に学習した膨大な情報に支えられている知能なので、多少質問を変えたくらいでは新しい結果が得られるものではありません。実際にChatGPTを使っても、表現は変えることができても、判断や結論は変わらないことに気が付くはずです。
こんなChatGPTを使う人に求められるものは何でしょうか。
まず、ChatGPTを使うために、技術的な障壁はなく、ある程度の文章が書ければ誰にでも使うことができます。
次にChatGPTはコンピューターではなく知能として認識する必要があります。 具体的には、ChatGPTの出力は間違っているかもしれないという意識を持つことです。
書くまでもないでしょうが、インターネットのものなので社内の情報は得られないし、社内の情報を書くのは会社で禁止されているはずです。
こういったコンプライアンス意識は必要でしょう。
現場で必要なITとは何なのか
現場はITを与えられても使いこなしているとは言えない状況
現在はビジネスのいろいろな部分でIT化が進んでいます。
ITシステムがなければ、仕事ができないような状況にもなっています。
では、現場のIT化が十分にできているのか、と言われると、多くの人が首をかしげてしまうのが現状ではないでしょうか。
一つ挙げられる大きな理由は、個人の作業レベルのIT化が進んでいないことです。 全社的なITを導入したとしても、個人レベルだといろいろな手作業が大量に残っています。
システムを手順通りに操作したり、システムからシステムへデータをコピーしたりといった作業には、何かと時間がかかります。
このような個人作業のIT化は、DXとかRPAとかのキーワードで語られてきました。
DXはデータをシステムに格納するデジタライゼーションから業務プロセス改善のデジタライゼーションに進んださらに先に、価値創造を目指そうといいます。
RPAは手作業の自動化そのものです。 どちらも、今までシステム化されなかったところにITを適用するところが必要だと訴えています。
しかし、事例として耳に入ってくるのは限定されているようで、広まっているとはいえない状況です。
理由は、作業を自動化することによる報酬が得られないとか、そもそもツールが難しくて手が付けられないとかが言われています。
電卓、PC、インターネットとオフィスで使えるツールがどんどん増えてきています。
しかし、オフィスで実際に使われているのは、ワードプロセッサーレベルのことだけという現場も多いのではないでしょうか。
ちょっとPCの中を確認してみてください。 数式の全くない、フォーマットのためだけのExcelがたくさん見つかったりしませんか。
現場はITを与えられても使いこなしているとは言えない状況なのが現実です。
ChatGPTはExcelやインターネットの延長として捉える
では、現場でITを使う気にするためには、どうすればいいのか。
一つの答えは、現場からこういう作業を楽にしたい、こんなことができたらいいな、という声を上げることだと思います。
とはいえ、思いつきをそのまま人に投げても、説得力がないでしょう。
ディスカッションなどで効果を整理するのが一般的なやり方ですが、結局面倒になって、埋もれてしまうことも多いでしょう。
そんなところをChatGPTが変えてくれる可能性があります。
とりあえず、ChatGPTは「ツールが難しくて手が付けられない」という課題をクリアしています。
そこに、現場の気づきを入力してみてはどうでしょうか。
すぐに答えが出るとは限りません。
でも、世間一般でよく言われているようなことは教えてくれるでしょう。
効果の整理にも役に立つでしょう。
ChatGPTで完結する必要もありません。 ExcelやRPAツールくらいであれば、ChatGPTが使い方を教えてくれるかもしれません。
自分たちの手に負えないようだったら、他の部門に相談に行くことになるでしょう。
ChatGPTは、オフィスで使うExcelやインターネットの延長として捉えるのがいいと思います。 うまく使うと、仕事の効率を高めることができます。
ChatGPTの使い方として、文書の下書きを書いたり、データを分析したりする例がよく見うけられますが、それだけではもったいないと思います。
現場の生の声を蓄積していくと課題が整理できて、それを提案できる形にまとめられるツールが、現場に必要なITではないでしょうか。
そして現場で求められるのは、気づきを放置しないで、しっかりChatGPTに入力できる人でしょう。
ChatGPT時代の人材はどうあるべきか
ChatGPTと対話し業務改善ができる人材
AI時代の人材というと、いつもAIは人にとって代われるかという議論になりますが、まあ、ChatGPTに仕事を取られる人はいるでしょう。
極端な例ですが、仕事の結果がChatGPTと変わらないような人は不要になります。
上司から仕事を振られて、ChatGPT並みの結果しか出ないのであれば、上司が直接ChatGPTを使えば済むことです。
とはいえ、ChatGPTは世間一般の情報しか持ってないので、業務や社内の情報を踏まえた出力は出てきません。
たとえChatGPTが何かの国家試験で正解を出したとしても、それが今の状況において正しいのか、業務的にどうなるのかという判断をするところは、まだ人間が必要だと思います。
ChatGPTの出力を自分に必要なようにコントロールするというスキルは重宝されるでしょう。
このChatGPTへの質問を構成する技術をプロンプトエンジニアリングといいます。
上司の依頼が抽象的でどうアプローチすればわからない時に、ChatGPTでプロンプトエンジニアリングしながら整理してくれる部下は頼もしい限りです。
しかし、やはり必要なスキルは、ChatGPTをうまくアシスタントとして使うことです。
ChatGPTを使うことで、より仕事を効率的にしていくことが考えられる人です。 素案出しやレビューなどのお供に使うには、ChatGPTはとてもよく働いてくれます。
それを自分のものとしてまとめ直すことができる人材は必要になってくるでしょう。
普段文章を書かない人にこそ、ChatGPTは有用だと思います。 現場の気づきをChatGPTと対話して、改善案を出して業務を変えていく、これができる人材がより求められるようになります。
ツールを使うスキルは測って伸ばすことができる
株式会社SHIFTでは、「Excelスキル検定」という仕組みをもっています。
Excelは、データ分析をしたり、マクロで業務を自動化したりできるツールです。
これを業務に有効活用するためには、入力の効率化から始まって、数式設定、グラフ、VBAなど、さまざまなスキルを必要とします。
このスキルを測るのがExcelスキル検定で、得点が仕事の効率に直結します。
得点の低い人をレベルアップさせるための講座も準備しています。
このようなスキルアップの仕組みで現場の効率化に取り組んでいます。
ゆくゆくは、ChatGPTスキル検定も作ることになりそうですが、単純な問題を出すとChatGPTが答えを言い当ててしまうのが悩みどころです。
AIにより余裕が生まれた思考力で、AIの使い道を考えられる人
話を戻しましょう。
コンピューターは、計算するという作業を人の代わりに行うことで、人の知的活動の時間の多くを開放しました。
ChatGPTは、情報を整理するという作業を人の代わりに行ってくれると考えられます。
では、そこで求められる人材に知的活動が不要かというと、そうではないはずです。
ChatGPTをどのように使うか、自分の課題を解決するヒントになりえるか、こんなことを意識してChatGPTを使うスキルが重要です。
ChatGPTはAIの発展途上の一形態にしかすぎません。
今後また新しい形態のAIが出てくるはずです。
そうなると、またどのように使うかを考えなければなりません。
AIのおかげで余裕が生まれた思考力でAIの使い道を考えること、これができる人材が求められるということで結論といたします。
まとめ
ChatGPTは、プログラムされた正解を出すコンピューターよりも、情報分析から仮説を出す人間みたいな知能です。
それは、新しいツールを与えられたというより、いつでも気軽に依頼できる人間みたいな部下ができたというつもりで使うのがよさそうです。
部下が増えたので、仕事のスピードは速くなるはずです。
ただし、部下は業務のことはあまり知らないので、そこは見極めて補う必要があります。
ChatGPTを部下として使いつつ、自分の存在価値をしっかり表現できる人材が、この時代に求められるでしょう。
また、現場の課題、特に個人作業のIT化というところに取り組むことができれば、さらなる変革へとつながるでしょう。
AIをどう使って改善するかを考えられることが重要です。
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