なぜなぜ分析のすすめ ~チームの一員にいち早くなれる効果的な方法~
はじめに
こんにちは。 SHIFTアジャイルコーチの谷川です。
私は、IT業界の現場で30年ほど暮らしておりますが、様々なプロジェクトの様々な課題の対応をしてきました。 特に、後半は管理職としての業務が多かったので、課題分析のための「なぜなぜ分析」を数多く実施して、 多くの問題を解決してきました。
最近、私が担当したスクラム型のプロダクト開発のプロジェクトでも、日々、様々な課題(バグ、作業ミス、環境ミスなど)が報告されていましたが、この対応の甘さ に驚いてしまいました。
しっかりと、課題管理、課題分析、再発防止策の検討 が行われていなかったのです。
今時の方々の課題管理・分析の甘さに驚かされた訳ですが、これはチャンスと考え、 私が積極的に自分の手を使って動いて、「なぜなぜ分析」の導入を含む様々なカイゼンを進めたことにより、 チームにいち早く受け入れられ、 とても良い関係性を築くことができました。
今回は、この 「なぜなぜ分析」 を中心に詳しく紹介したいと思います。
「なぜなぜ分析」とは?
「なぜなぜ分析」とは、問題の再発を防止するために、「なぜ」を繰り返して、発生した事象の根本原因を徹底的に洗い出すための分析手法 のことを言います。
なぜを繰り返して問題を解決に導く、このなぜなぜ分析のオリジネーターはあのトヨタ社です。カイゼンを世界中に広めたトヨタ生産方式の一環として、問題を発見したらなぜを5回繰り返すというものがあります。これは問題の再発を防止するために、発生した事象の根本原因を徹底的に洗い出すための考え方なのです。
「なぜを5回繰り返せば良いんでしょ、簡単じゃん」と油断していると、事象の改善に繋がる原因を発見するのが意外と難しかったりします。
現場の当たり前が、以外と当たり前ではないことは多々あります。
様々な現場での体験が役立つことも数多くあります。
そうなんです。
ここに「なぜなぜ分析」に部外者が参画する大きなメリットがある訳です。
「なぜなぜ分析」の適用方法
1.事象を定義する
まず重要なのが分析対象とする事象を定義することです。
様々なフレームワークでも言われることですが、取り上げる事象は具体的に定義しましょう。
例えば、ミスした、低い、悪いなどの抽象的な表現ではなく、何がどの程度どうなのかを定義しなければ、その後の中身のある分析には繋がりません。
悪い例に共通して言えるのは、具体性が足りない点、プロセスとして記述されていない点です。
何をどのようにミスしたのか、その後原因を掘り下げられるように具体的に定義しましょう。
2.改善可能な真の原因(根本原因)を突き止める
設定した事象の要因を挙げていきます。複数ある場合も漏れなく書き出していきましょう。
ここが、「なぜなぜ分析」の一番の肝の部分になります。
要因のリストアップ時には、単なる要素の羅列になっていないかを注意します。
原因があったから事象が発生したという関係を保持し、論理的に要素分解を行います。
事象の要因となる要素を書き、その理由をまた要素として書く、このときに、過去の経験をFullに活用し、様々な角度、視野から分析を進めます。
これを繰り返して事象の真の原因を探り当てます。
3.解決策、再発防止策を決定する
「これこそが事象の原因だ!」と言える要素が揃ったら、それらの解決策を考えます。
また、真の原因を突き止め、そこから再発防止策を検討します。
「それを実施することで本当に事象が解決されるのか」「属人的な解決策でないか」などを念頭に解決策を設定しましょう。
「なぜなぜ分析」のNG例
1.分析対象の事象が曖昧
先述のとおり、事象の定義の時点で解決したい問題が曖昧だとうまく深堀りができません。
“何がどの程度どうなのか”を事象の発生から振り返り、プロセスとして記述して、分析をスタートします。
2.原因→結果の関係になっていない
左側の事象に対して、右側の要素が原因の体をなしていなければ、ただのブレインストーミングと同じになってしまい“問題の解決”という重要な方向性を見失ってしまいます。
原因があったから事象が発生したという論理構造が崩れてしまうと本質的な原因にたどり着けません。
ひとつひとつの要素は慎重に書き出しましょう。条件に抜け漏れがないよう、MECEを意識するのも有効です。
MECE:Mutually(相互に)、Exclusive(重複せず)、Collectively(全体として)、Exhaustive(漏れがない)
3.属人的な原因に回帰する
「人を疑う前に仕組みを疑え」という言葉が時折交わされます。
何らかのトラブル等が起きた際、原因を「〇〇さんの業務態度が~」などの属人的な要素と決めるとします。
その後は、作業者の「申し訳ございません」で終わり、組織としては何も成長がありません。
強い組織には強い仕組みがあります。例えばレジスタッフが、お客さんから預かったお金を直接レジにしまい後から預かり金額が分からなくなるというミスをしたとします。
この対策として、作業者にマニュアルを見せて注意したとしても再発の可能性は否定できません。
解決策としては、預かり金を置くトレーの置き場を決め、そこにレジ対応の手順を書いて見返せるようにするなど、組織としてミスを防げるような解決策を提示しましょう。
4.現場を想定できない
事象の定義から解決策の設定に至るまで、普段から現場におらず検証もできていない状態では、的はずれな分析になってしまいます。事象が発生した状況をできるだけ再現できる状態で分析に臨みましょう。
ツール(JIRA)を活用しましょう!
今回、私がカイゼンを進めたプロジェクトでは、プロジェクト管理にJIRAを使用していたため、この機能を使って、バグ管理、「なぜなぜ分析」実施フォロー、カイゼンバックログ管理を進めたのでそれを紹介します。
1.JIRAにバグ管理ボードを追加
スクラムボードにバグ管理ボードを追加します。ここで、一つひとつのバグの対応状況を管理します。
2.バグチケットになぜなぜ分析のフォーマットを記載
テンプレート機能を活用して、漏れなく各バグチケットになぜなぜ分析を記述できるようにします。
3.JIRAにカイゼンバックログボードを追加
4.再発防止策をカイゼンバックログにチケットとして記載
再発防止策をチケット化し、カイゼンバックログボードに追加します。
このとき、再発可能性、影響範囲、重要度などを考慮し、そのカイゼンチケットの優先度を適切に設定します。
5.スプリントプランニングにて、最低一つはカイゼンチケットを積むようにルール化
次回のスプリントにて、優先順位の高いカイゼンバックログを最低一つは組み込むようにルール化します。
こうすることにより、バグ、作業ミスの検出により、どんどんそのチームの課題が洗い出され、カイゼンが進んでいくことが体感できるようになると、ものすごく良いカイゼンサイクルが回るようになり、もっともっと良いチームにしていくことができます。
ふりかえり会を活用しましょう!
「なぜなぜ分析」を定期的に実施する方法として、私は、ふりかえり会の活用を推奨しています。
とても良い雰囲気のチームを作る、チーム状況を良くする、とても効果的なイベントが「ふりかえり会」になります!
(*1)
このふりかえり会も、マンネリ化してしまうと、効果が半減してしまうことになりますので、ふりかえりのやり方を工夫する必要がある訳ですが、その一つに、「なぜなぜ分析」を持ってくることをお勧めしております。
こうすることにより、定期的な「なぜなぜ分析」実施が可能となり、そこで出てきた再発防止策をカイゼンバックログに積み上げ、着実に消化していくことで、どんどん良いチームにしていくことができるという訳です。
「自分が楽しく働きたい」、「チームの雰囲気を良くしたい」 、と思ったら、是非、一度立ち止まってしっかりと「ふりかえり会」を開催し、また、自身のレベルアップのためにも、このふりかえり会自身をレベルアップさせていきましょう!
それだけ、このふりかえり会のファシリテートは重要であり、良いふりかえり会ができればその効果が絶大なものになるため、良いファシリテートをするため、スクラムマスターを効果的に育成するために、当社では、アジャイルコーチの活用をお勧めしています。
まとめ
最後に、なぜなぜ分析 について、まとめてみたいと思います。
●なぜなぜ分析はなぜなぜ分析はトヨタ生産方式の考え方から生まれた問題解決のためのフレームワーク
●ブレインストーミングと違い、事象に対する要因を論理的に書き出す
●根本原因を“人”ではなく“仕組み”であるとし、組織の改善に役立てる
●ツール、ふりかえり会を活用することで更に効果的に「なぜなぜ分析」を進めることができる
●現場の当たり前が、以外と当たり前ではないことは多々あるため、部外者の参加が有効です
●様々な現場での体験が役立つことも数多くあるため、経験豊富な方を活用する
●ウォーターフォール型、アジャイル型などどんな形のプロジェクトにも適用可能
●これがしっかりできるようになると、どんなプロジェクトにおいても、いい感じの仲間になれる
皆さんも、是非、この「なぜなぜ分析」をしっかりと自分のものにすることで、様々なプロジェクトに貢献できる貴重な人材 になれるように成長していきましょう!
◆参考文献
(*1) 森 一樹 「ふりかえりガイドブック」 2021年2月
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