アジャイルプロジェクトのキーマン交代のリスクに備える
はじめに
こんにちは。 SHIFTアジャイルコーチの谷川です。
私も、当社でアジャイルコーチとしての業務を一年以上経験し、多数の案件を経験したことで、数多くのことを学ぶことができました。
アジャイルプロジェクトにおいても、案件対応中には、様々な不測の事態が発生すると思います。通常、そのようなものはリスク管理の中で対応していくものだと思いますが、今回はその中のキーマン(ステークホルダー、POなど)交代リスクとその対策についてお話したいと思います。
要員交代のリスクは頻繁に発生する
アジャイル型のプロジェクトでは、プロジェクト内に、PO(プロダクトオーナー)、SM(スクラムマスター)、開発者、ステークホルダーなどの様々な役割の方が存在します。
プロジェクトが長期間になればなるほど、プロジェクト期間中での要員交代リスクが発生する可能性が高まります。
そのため、プロジェクト発足当初から、要員交代リスクについては、対策を検討しておく必要があります。
特に、プロジェクトの方針決定に関連するステークホルダー、POなどのキーマンの交代があった場合には、かなりリスクが高く、プロジェクトへの影響が大きいので、しっかりと準備をしておく必要があります。
キーマン交代は様々なケースで発生しますので、それぞれについて、対策を検討しておく必要があります。
体調不良(肉体的、精神的、社会的)
プロジェクト外のトラブル
人事異動
見えない力、政治力
また、スクラムマスター、開発者などの要員交代リスクの対策としては、スクラムでも推奨されている属人化排除を日頃から進めておくことが推奨されています。
体調不良(肉体的、精神的、社会的)
体調不良の代表的なものには、肉体的なものがありますが、それ以外にも精神的なものであったり、社会的なものがあります。
Well-beingの考えに、肉体的、精神的、社会的な健康を目指すというものがあり、特に、三番目の社会的健康というものが注目されています。つまり、組織の中での健康の重要性を差しています。
また、体調不良の場合には、短期的離脱、長期的離脱の両方が考えられますので、それぞれの対策が必要です。
短期的離脱
短期的な離脱とは、体調不良などにより、数日から数週間お休みを取るケースです。
これは頻繁に起こる可能性がありますので、あらかじめ短期的に離脱してしまった際のルールを決めておくことが大切です。
特に、キーマンの場合は、短期であってもプロジェクト運営に多大な影響があることがありますので、不在時の権限移譲や、代替要員の調整を事前にしておくことをお勧めします。
私が担当した案件では、PO代理を明確に任命しておくことで、急に発生したPO不在時の対応を問題なく遂行しておりました。
長期的離脱
精神的、社会的な体調不良などにより、長期に離脱しなければならないケースも発生します。
特に、ステークホルダーやPOは責任範囲が広く、負荷が掛かる業務であるため負担が大きいためリスクが高くなる訳ですが、危険を早期に察知するためにも周囲のケアがかなり必要になります。
官僚主義的な多段階組織構造を持ち、心理的安全性が確保されていない環境においては、この事象が発生しやすいので要注意です。
このケースでは、もう要員交代になってしまうことが多いです。
十分な引継ぎもできずに急に長期離脱となってしまうこともあるので、日ごろから各役割の業務を明確にしておくことが大切です。
プロジェクト外のトラブル
該当プロジェクト外において、大きなトラブルが発生した場合にも、急にそちらの支援のために要員がいなくなる可能性があります。
特に、その人しか持っていない技術、知識がある場合、どうしてもトラブル収束のために、その人員が必要になるケースがありますので、キーマンの方や、優秀な方々は、経験豊富なだけに、過去から持っているものがとてもたくさんあると思いますので、こういったリスクが高くなる傾向があります。
人事異動
基本的に、年度の切り替わりのタイミングでは、人事異動による要員交代のリスクが高くなります。
特に、官庁系役所系のお客様の場合には、定期人事異動がありますので、特に注意が必要であり、 数年に一度必ず異動があるケースもありますので、担当されているキーマンの在籍年数を事前に確認しておき、異動が発生する可能性について事前にチェックしておきましょう。
また、人事異動の場合は、まったく畑が異なる分野から代替要員がアサインされるケースがあります。
このようなケースでは、前任者と新任者の考え方が180度違うようなケースもあり、プロジェクト方針が180度変わってしまうという大きなリスクが発生する可能性があります。
このようなケースにも対応できるように、事前にリスク対策を進めておきましょう。
見えない力、政治力
実は、世の中には、様々な力学が働いており、プロジェクトからは、「見えない力」 によって影響を受けることがあります。
俗に言う、「政治力(社外、社内)」、「利権」、「圧力」 というようなものです。
これらについては、対策が取りようもない気もしますが、一般的なリスク対策はここでも有効なので、そこを着実に検討しておく必要があります。
リスク対策
キーマン交代のリスク対策をいくつかご紹介します。
キーマンとの密なるコミュニケーション
一番重要になるのは、やはり、キーマンとの密なるコミュニケーションです。業務の表面上の話だけでなく、様々な会話ができるようになっておくことが望まれます。
上述のイベントを意識して、定期的にそれらに関する情報も入手するように心がけましょう。情報を早めに察知することで、対応が後手後手にならずに、対策検討を早めに十分に進めておくことができます。
ここで、重要になるのが、危機察知能力 となります。
お客様のキーマンの様子や、社内オフィス内の動きなど、周囲に目を配り、通常と違う異変がないか?ということを感じ取る動き・能力がかなり重要になりますので、日ごろから鍛えておきましょう。
エビデンス管理
次に重要になるのが、保険的な対応として、エビデンス管理となります。
お客様キーマンとの調整毎は、必ず、エビデンスを残すようにしましょう。
口約束は絶対にダメです。
いくら気が通った関係が築けているからと言っても、やはり、その方が急にいなくなってしまった場合には、口約束はなかったものになってしまいます。
お客様キーマン交代により、お客様の言うことが180度変わったとしても、エビデンスがあれば、それなりの交渉ができます。
自分達の身を守るためにも、しっかりと文書でエビデンスを残すようにしましょう。近頃は、オンライン会議等も増えているので、音声の録音機能を有効活用しましょう。
承認プロセスの確立
次に重要になるのが、プロセス面の対策としての、承認プロセスの確立です。お客様キーマンとの調整をスムーズに進めるために、承認プロセスを事前に確立し、合意を取っておきましょう。
そして、この承認プロセスが適切に回る状態にしておかなければなりません。
承認プロセスを明確に定義し、お客様と合意しておく
承認プロセスの対象物(議事録、仕様書など)を明確にする
承認要求者、承認者を明確にする
承認要求期限、優先度などを明確にする
承認プロセスフォロータイミングの明確化
タスク管理ツールなどを使用し、プロセスの可視化とログを取得
承認プロセスをちゃんと通して、エビデンス管理をしっかりやっておけば、考え方が全く違うキーマンに変更になっても、過去に合意したものを180度ひっくり返すのは難しいと思うので、リスク対策として承認プロセスを通しておくことがかなり重要になります。
おわりに
最近の動きの激しい時代においては、キーマン交代というリスク はもう避けられないもののように感じます。なので、最初からそのリスク対策を取っておくことがかなり重要になりますので、皆さんも今一度見直してみてください。とかく、キーマン交代というイベントはマイナス的に捉えがちですが、ここにも様々な学ぶべきものがあり、また新しい出会いもあります。
アジャイル的な発想で、前向きに対応できれば良いと思い、この記事を書かせてもらいました。
もっともっとアジャイルに、楽しく働きたいと思っている方は、是非、当社にお気軽に声を掛けてください。
◆参考文献
なし
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