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ゲーム業界の人が言うゲームに触れろの真意


はじめに

こんにちは。ゲームの現場でお仕事をさせてもらっているSHIFTの立野です。現在はPMとして運営タイトルの進行管理を主に担当しています。
今回はプランナー向けというよりも、プランナーを志す人向けの内容です。

私自身、もともとゲーム関連の専門学校に通っておりました。
そこではゲーム会社による説明会が定期的に行われており、その説明会の参加者からよくある質問のひとつが、『プランナーになるためにやっておくといいことはなんですか』という質問で、その回答もいつも『今からたくさんのゲームに触れてください』というものでした。

当時は「プランナーとしての引き出しを増やすには、多くのエンタメコンテンツに触れることが必要なのか」と解釈しました。
ですが、実際にはその奥にはプランナーとしてもっと大事な要素がある。
そのことを最近気づいたので記事にしてみたいと思います。

これからプランナーとして頑張りたい人や、今も頑張っている人の一助になれれば幸いです。

忙しい方向けに結論

本記事の内容をまとめて先に記載します。

  1. ゲームに触れるだけでは「引き出し」は増えない

  2. ゲームに触れて「なぜ」と考えることが大事

  3. プランナーであるなら「なぜ」を明文化して伝える技術が求められる

以降はこの結論についての内容を解説していきます。

ゲームに触れるだけでは引き出しは増えない


ゲームに触れましょうと、ゲーム業界の方は口を揃えて言います。
ですが言葉通りにゲームを触れるだけではまだ不十分です。

もちろん、たくさんのゲームに触れることで「情報」は増えます。
しかし実務として活用できる「知識」であるかは別の問題となります。
なぜここのギャップが生まれるのでしょうか。

一旦、ゲーム会社におけるプランナーの実務作業についてお話しします。
ゲームを志す人のイメージとしてプランナーといえば企画立案。
一般的には「おもしろいゲームデザインを決めて進めていく」というイメージがあります。

ですが実際の作業としては仕様書の作成がメインとなります。
ひとりのプランナーが企画から入り、仕様までを決めるケースは少ないです。企画自体は、より上位の「ディレクター」や「プロデューサー」が主軸を決めます。

ディレクターやプロデューサーが大まかな企画や仕様を決めると、今度はそれをもとにプランナーに対して指示が来ます。
「〇〇のようなシステムの✕✕を作ってほしい」
「ユーザーに~~をしてもらう、✕✕を作ってほしい」など。

その指示単体ではエンジニアさんやデザイナーさんは動き出せません。
ここでプランナーが仕様書へ落とし込むという作業が発生します。
よく"仕様を切る"という作業はこの工程を指します。

すでにゲーム市場は成熟しており、新規性のあるシステムの指示は少なく、大抵が既存のシステムを改修・肉付けした指示であるケースが多いです。

もし、たくさんのゲームを触れていた人なら「〇〇のようなゲーム」「▲▲をベースにしたシステム」といった既存のゲームをもとにした指示も、すんなりと理解できます。たくさんのゲームを触れてためていた「情報」が武器となる瞬間です。

けれど、既存のゲームになぞらえつつ必要な箇所を置き換えるだけでは仕様書は完成しません。そこに「知識」が含まれていないからです。
知識が活用されていない仕様書には、ゲームデザインが加味されず結果としてちぐはぐなゲームになってしまいがちです。

では「知識」とはなんでしょうか。
なぜ必要なのでしょうか。

知識とは「なぜ」という理由の明文化技術


単に既存のゲームのシステムを流用し、必要に応じて置き換える。
これはゲーム経験による情報だけで可能ですが、これでは完成しません。
噛み合わない歯車を作ってしまってはゲームとしての完成度が下がってしまうからです。必要なのはゲームを情報として知ることではなく、システムを理解して組み合わせる知識です。

ではどうすればその知識は得られるのでしょうか。
それは既存のゲームを「なぜ」と考えて明文化することで培われます。

自分が遊んでいたゲームで感動した。それはなぜか。
最近はじめたゲームが面白くなかった。それはなぜか。
最初は楽しかったのに途中で投げた。それはなぜか。

ゲームに触れていてもシーンごとに自分の感情の動きがあり、その理由を「なぜ?」と考えることで知識が蓄積されます。

「楽しかった」という段階でとどまらずに、
「なぜ成長させたくなったのか」
「類似の他のゲームとは何が違ったのか」
「その要素がなかったら自分は楽しめなかったのか」
など、自分の感情の動きがあった箇所を思い起こしましょう。

そしてなぜそうであったかの原因を考え、そうでない場合はどうだったのかと両極を考えることでよりゲームから得られる実践的な知識は増えていきます。

ゲームに触れるということは、単にゲームを知ることではなく意図やメカニズムを分析し、明文化できるよう鍛えるための脳の筋トレです。

そうして普段からゲームの「なぜ」を自問することで、「〇〇のようなゲーム」「既存の✕✕というシステム」という指示でも、あのゲームはこういう狙いがあるから、このシステムである。
では自分のゲームに落とし込んだ場合にはどうなるか。

と、設計段階でのメリット・デメリットを把握し調整ができます。
調整ができれば、自分のゲームに最適化された仕様書ができるはずです。

ゲームに触れておけば、「あのゲームのシステム」という情報は獲得できます。そのうえで「今作ろうとしているゲームに最適化する」という知識はゲームの内部構造や意図を把握していないと、使うことはできません。

既存ゲームを教科書と見立て、裏にある意図やシステムを読み取りましょう。それがプランナーに求められるスキルだからこそ、ゲーム業界の人は「たくさんのゲームに触れてください」と伝えるのです。

まとめ


今回はかつて自分が感じていたプランナーに必要となるアドバイスを、自分なりにまとめた内容となりました。

仕様書を作成するのはもちろん自分ですが、それをプログラムに落とし込むエンジニアや、イラストを書くデザイナー。サウンドを用意する人や、アクションをデザインする人などなど。
彼らから「なぜこの仕様にしたのですか?」と尋ねられた時、「〇〇のゲームっぽいシステムにしろという指示だったから」ではなく、「これは〇〇という理由があり、✕✕が適切だからです」と、自信を持って答えられる人が本当の意味でプランナーだと思います。
漠然と「ゲームに触れましょう」だと、ただ楽しんで終わってしまいます。

本記事を通じて、「ゲームのメカニズムを理解すること」が大事だと少しでも伝われば幸いです。


執筆者プロフィール:立野 健人
2020年SHIFT入社。入社前はコンシューマータイトルのデバッグからプランナーへ転向。アプリゲームの開発から運営を経験し、現在はソーシャルゲームの運営サポートに従事。

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