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70年代のゲーム企業、「アタリ」に学ぶMVP(Minimum Viable Product:実用最小限の製品)
はじめに
こんにちは、株式会社SHIFT アジャイル推進2グループの大島です。
MVPをご存じですか?
MVP(Minimum Viable Product)つまり、必要最低限の機能に絞り、素早くプロダクトやサービスを提供する事です。
MVPを実践する為の手法は色々あるのかもしれませんが、まずMVPとはどういう事かイメージするのに、企業のスタートアップをなぞると、面白く理解できるんじゃないかと思います。
スタートアップで成功した企業は、意識する、しないにせよ、にMVPに近い事をしています。
なぜなら技術やアイデアはある。でも資金も人材も限られているので、必然的に最小限のスタートをするしかないからです。
近年の企業に限らず、何十年も前の企業でもその軌跡をみてみると、結果的にMVPになっている事があるので面白いです。
今回は70年代の伝説的なゲーム企業「アタリ」のスタートアップをたどることでMVPの感覚を体験してみましょう。
アタリのスタートアップはどうだったか
それではアタリのスタートアップでどのような事を行ったか、どうMVPに該当するのか見ていきましょう。
★はMVPとなる解説です。
0:「ノーラン・ブッシュネル」という男
アタリの創業者、ノーラン・ブルッシュネルは、大学時代に世界初のコンピューターゲーム「スペースウォー!」に出会い、コンピューターゲームに強い関心を持ちます。
そして、この世にゴンピューターゲームを送り出したいという野望を抱き、1972年アタリを設立します。ノーランを含めて従業員3名のスタートです。
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1:「望むものを黒板に書きだしたんだ」
発明家で電気技師ラルフ・ベアが試作したテニスゲーム公開し、それを見たノーランは、「私ならもっとよりよいものを作ることが出来る」と思います。
そして、練習のつもりでエンジニアのアル・アルコーンに製造を任せます。ノーランがアルに望んだのは主に以下の3つ。
パドル(ラケット)の位置でボールの角度が変化する
ラリーが続いたらボールのスピードがあがる
音も加えろ
アルは1週間ほどで作業を終えます。
★プロダクトの価値(この場合ゲームの面白さ)を満たす、最低限の機能を書き出し、短期間で作成を終えている事がわかります。
※尚、ラルフのパクリじゃないかと思われたかと思いますが、まったくその通りで、後にアタリはラルフより訴えられライセンスを料を払うことになります。
2:「もっと楽しくなる方法を模索した」
アルが1週間ほどで作成を終え、ノーランは仕事の後、遊んだそうです。
3週間ほどで、さらに面白くなっていった。と、ノーランはいいます。
世界で初めて成功したアーケードゲーム「PONG」の誕生です。
★作成したものを自分たちで評価し、プラッシュアップを行っています。
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3:「箱に入れてバーに置いた」
ノーラン達は、仕上がったゲームを箱に入れてバーに置くことにしました。客の反応を見る為です。
3日後、修理要請の電話が来て恐る恐る筐体を開けると、故障ではなく、硬貨箱が硬貨でいっぱいになっていたそうです。
ついには「PONG」をやるために開店前から行列ができるようになります。
★顧客の反応をみています。もし反応がいまいちだったならば、改良をくわえたでしょう。
4:「300ドルあれば十分だ」
この大成功を受けて、ノーランは本格的に製造業を開始する事を決意します。製造業なんてやったことがないし、資金もないじゃないかとアルは反対したそうです。
「大丈夫、300ドルあれば、12台ぶんの部品が買える」と、ノーランはPONGの製造を開始します。
12台の「PON」を製造し、1台1000ドルですべて売りきったとノーランは言っています。
参考:Historyチャンネル「世界を変えたテレビゲーム戦争」
★製造/販売も、いきなり大金を投じて工場を設立するのではなく、自分たちのできる範囲でスモールスタートしています。
5:「潰れたローラースケート場を工場にする。そして伝説へ。」
(wikipedia参照)
製造が急増したアタリは、潰れたローラースケート場を工場に改造します。それでも足りず最新設備の工場へと短期間で移転しました。
こうして、資本金500ドルで始まったアタリは、わずか1年で320万ドルの売上を記録する急成長をとげたのです。
この、どうかしている急成長ぶりは、未だアメリカで破られていない記録だそうです。
最後に
いかがでしたでしょうか。
MVPとして見てみると、必用最低限の機能でプロダクトを作り終え、顧客の反応をみながら、素早くサービスを提供していた事がわかるかと思います。
それにしても、その後のアタリは少々いかれた成長っぷりかもしれませんが。
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Appleにせよ、Microsoftにせよ、同じようなスタートアップをしています。制約があるからこそ、短期間でプロダクトを造り終える事ができ、なにも持っていなかったからこそ、大胆にイノベーションを起こすことができたのではないか、と私は思います。
さて残念な事にアタリはこの後、家庭用ゲーム機を販売し大成功したのちに、いわゆる「アタリショック」というゲーム業界の大崩壊を起こして破滅してしまいます。
その話も含めおもしろいのですが、また別の機会に。
執筆者プロフィール:大島 茂
プログラマーとしてスタートし、PMとして多数参画したのち、
アジャイル開発に出会い、スクラムマスターとして開発に従事。
SHIFTに入社後はQAリードも担当。
猫を2匹飼っている。
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