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クレディセゾン CTO 小野さん× SHIFT 技術顧問 川口さん対談が学びの宝庫

こんにちは、QAリード兼アジャイルコーチの船橋です。

今回は、9/4(火)に開催された、株式会社クレディセゾン 取締役 兼 専務執行役員 CTO 兼 CDO 小野 和俊さん × 弊社技術顧問 川口 耕介さん の対談イベント にとても学びがあったのでレポートさせていただきます。この対談は多くの学びが詰まっており、特に『否定しない文化』について深く考えさせられました。

イベントの概要


このイベントは、海外でご活躍されている川口さんが、海外慣れしているからこそ見えていない日本のIT業界の現在・未来を知るべく、各企業の方々と対談していくイベントです。

そこで、Sun Microsystemsで就業後に株式会社アプレッソの起業という道を歩み、伝統的な企業にJOINしてからもインパクトを残し続けている小野さんとの対談をすることとなりました。

否定しない文化


早速ですが、私個人がこのイベントで得た一番の学びは『否定しない文化』です。

小野さんが株式会社セゾン情報システムズ(※現・株式会社セゾンテクノロジー、以降「旧セゾン情報」)にJOINした当時、Sun Microsystemsで就業後に株式会社アプレッソの起業という道を歩んでいた背景から、1970年創業の伝統的な日本企業との大きな考え方の違いや違和感があったそうです。

例えば、利便性など顧客のことを考えたときすぐにやった方がいいと思えることがあっても、旧セゾン情報の確実な選択肢を選ぶような進め方に一見もどかさを感じていたそうです。

しかし、HULFTは社会インフラを支えている重要な基盤だったこともあり、バグをださない、圧倒的な安定性、圧倒的な堅牢性が重要で「ワンストライクアウト」という考えが採用されていて、それゆえの強みがあるからこそ、結果的に国際的なシェアがとても高い製品となっていました。

だからこそ、今までと違うやり方の合理性に気づく瞬間に出会ったそうです。

いち早くクラウド対応する、機能リリースの敏捷性を高めるのではなく、慎重に、安全に振りすぎていることも一つの価値で、絶対に失敗しないやり方をとるという選択肢も機能することを知れたといいます。とはいえ、もちろん小野さんがそのやり方に完全に切り替えたのではなく、使い分けるようにしたことで各プロジェクトに取り組むことへの楽しみが出てきたようです。
安全性の高い日本人らしい特性を強みとしたやり方もいいなと思えたと仰っており、この話を聞いたときそんな柔軟な考え方ができることがとても素晴らしく早速見習おうと私は感じていました。

どうやら小野さん自身、大学で弁論部でディベートを経験していて、ディベートなので両側の意見を徹底的に調べていくこととなるのですが、その結果本人自身の意見が変わるケースに遭遇していたことがあり、両側の意見を考えずに決めつけることをせずしっかり寄り添おうと考えるようになったそうです。

日本の組織は人体の免疫活動に似ている

次の話は、日本の組織は人体の免疫活動に似ているという話。

ウイルスが侵入すると免疫がウイルスを排除しに行って健康を保つという人体の動きは日本企業と似ているようで、日本企業は社員同士の強い連携で成功しており集団から外れた人を排除しがちとのこと。言われてみればそういう経験が私にもあります。

小野さんともう一名の方向けに開発用PCとしてMac bookの購入を申請したら「なぜ特定の人だけ高いPCを買わなければならないのか」と理解されなかったという容易に想像できるエピソードだけではなく、「事業性質上センシティブな情報を扱うため、DBにアクセスする端末には厳しい基準があり変更管理の負荷が高かったことに起因して、ビルドのたびにライブラリが更新されるとその一つずつに変更申請が必要な状態だった」というとても大変なエピソードを披露していました。それをもの別れに終わらせるのではなく理由や目的をしっかりとヒアリングして解決策を模索し、着地点をみつけ、誰も否定せず、傷つけずやりたいことを実現していく。そんなやり方を続けていたそうです。

ただ、受け入れ側ともいえる旧セゾン情報の方々としては戸惑いがあり、価値観の違いに苦労していたそうです。

最初、旧セゾン情報の方々には「外部から来たCTOが自分たちの村や畑を破壊に来る」というような先入観があって嫌に思われていたそうなのですが、小野さんはそんな中でも「アセンブラのコードに興味があるのでライブコーディングのような形で見せてほしい」「次〇〇を△△って直して□□っていう動きにします?」といった形で相手のやっていることを体験し自分から溶け込む動きをされたそうです。

その結果、お相手からも「ペアプロってどういう感じなのか?」「アジャイル開発ってどういう感じなのか?」という相談をいただくなど両者が歩み寄るような動きに変わっていったといいます。

社内の業務システム刷新において、「コールセンターの2000人のオペレーターの方々の困りごとを解決したらカッコいいよね」という思いから動いたプロジェクトでも、小野さんはAmazonでいう「Two way door」のように後戻りがきくような形で取り組み始めます。パワポで資料を共有してもらっても限界があることと前述のように体験を大事にしていることから、新人オペレーターに振れる作業のシミュレーション(実際にオペレーター業務をすると迷惑をかけてしまう可能性が高いためシミュレーションにとどめた)を実施。新人オペレーターに振れるけれども大変な業務を実際に知り、技術的に解決しやすいものから、3日くらいで簡単なツールを作って使ってみたなどの実績もあるそうです。

もちろん、強制的にコールセンターの仕事を体験させるようにしてしまうと、開発メンバーから「なぜオペレーターシミュレーションしなくてはならないのか?」と拒否感が出てしまうので、そこはしっかり背景や目的をしっかり説明して理解をいただくようにしているとのことです。しっかりとストーリーテーリングをちゃんと意識してやっていくことで協力者がうまれていくように感じます。

「JTC」にもいいところがたくさんある

小野さんの『否定しない』考えはまだまだ続きます。

日本の大企業を「JTC」と表現してネガティブな文脈で活用している風潮が見受けられると思いますが、いいところもたくさんあると。

例として、終身雇用の総合職採用では、数年でローテーションによる部署異動が発生するため会社の全業務を知ることとなります。旧セゾン情報も同様だったそうで、「社内公募でプログラマーとしてゼロから頑張ります」という方もいたそうです。その方は会社のどこでどういうシステムが使われていてどこが使いにくいのか、取引先の性質やプロジェクトキーマンが誰なのかなどを熟知しておりとても頼りになる存在だったとのこと。

開発側だけで単純に技術力で何かを成し遂げるには限界があり、社内外どちらに対しても精度が求められるプロジェクトの場合は総合職の方々の頼もしさは抜群で、そういう方々と組んで仕事して歯車がはまるとすごく強いということを実感しているそうです。

「全方向に興味があるわけではない」と仰る小野さんは、自分の関係する領域で改善できそうな可能性があって困っている人がいる場合に取り組むそうです。

小野さんは、World of Warcraftというゲームでの有名なAdd-Onを開発された方ですが、そのAdd-Onもこの考えから開発に至っているそうです。

小野さんの話


面白かった話として、EQについて。

小野さんと川口さんの対談を聞いていると両者ともにコミュニケーション力が高いイメージを持ちますが、小野さん自身は「自分はEQが低い、これは人工的なEQだ」と公言しています。「傾聴力が高いわけではない、共感力が高いわけではない」と。プログラマーとしてコードレビュー時に「ここバグがあるよね」と言わなければならない局面を多数経験した結果、身についたのが人工的なEQというものだそうです。

自分のやり方を押し付けるわけではなく、相手の行動に対するリアクションをはっきり伝えすぎないという必要があり、「パンチしないといけない場面で、その拳にはふかふかグローブをはめていて、さらにそのグローブにはパウダーがついている」と例えていましたが、それが人工的なEQのイメージだそうです。

ですので、普段は人とあまり目を合わせず、人と話すのも苦手、暗い部屋でゲームしてワイン飲んでいたい、そんな「陰キャ」だと仰っています。

ビジネス上それではいけないために身についたものがこの人工的なEQだそうですが、話を聞いている限りとてもコミュ力の高い方に感じます。

実はこのイベントのあとに弊社の池ノ上らを含めて食事に行ったのですが、その際もこの人工的なEQについて熱弁されておりました。ディベートで自分の考えと異なる意見を考えるようになったことや小野さん自身の「否定しない」という考え、このような食事のときと普段のビジネスモードのときとでは雰囲気が違うこと、これらの先に人工的なEQが身についたという話に聞きいっていました。

余談


その食事の場で一番?盛り上がったのは、小野さんと池ノ上の間で起こった奇跡。お二人ともゲーム好きなのですが、どうやら某オンラインゲームの有名クラン同士で対戦経験があるそうで、イベントの話よりもそのゲームの話題が盛り上がっていました。

最後に


当イベントはSHIFT EVOLVEの Youtubeチャンネルでアーカイブ動画が公開 されています。

ぜひ皆様も一度ご視聴いただき、多くの学びを得ていただければ幸いです。


執筆者プロフィール:船橋 篤史
要件定義~保守、SRE、スクラムマスター、アジャイルコーチと色々経験した広くて浅いフルスタック?エンジニア。 幼い頃より「テスト」と名の付くものが好みではないため、無駄なく効果的なテストを実践するアジャイルチームとするべく奮闘中。 CSP-SM/CAL-1/CSPO/LSPO 所持。

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PHOTO:UnsplashDane Deaner