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AWSパートナージャーニー、AWSベンダー日本一への挑戦手記(立志編)

皆様こんにちは。
 AWSのイベント大好き、SWAG収集家の大瀧と申します。
株式会社SHIFTでAWSのCCoEリーダー兼、AWSセキュリティコンサルタントをやっています。
 
おそらくこの記事を読んでくれているほとんどの方は、これからAWSのパートナー企業になる、もしくはAWSのパートナー企業としてランクを上げる役割の方かと思います。

私は、SHIFTでこの役割を中心人物としてやっており、実際にAWSセレクトティアサービスパートナーだったSHIFTを1年足らずで、AWSアドバンストティアサービスパートナーに引き上げた実績を持っています。
 
この記事は、その際に苦労した知見を共有し、AWSパートナー企業の推進担当者の方々に対し、難しさや、やりがいを与えたいと思い書いたものです。
おそらく、こういった記事は世の中にあまり存在していないと思います。
なぜなら私自身、こういった体験談の情報がなく、手探りでこの活動始め、たいへん苦労したからです。
なので、このブログが誰かのお役に立ち、励みになれば幸いです。


AWSアドバンストティアサービスパートナーを目指すメリットとは?


さて本題に入ります。
 
よく、上層部、経営層から聞かれるのは「アドバンストティアサービスパートナーになることの効果」です。
売上に貢献できることなのか?もっと言うと、その看板があれば、どれくらい売上が上がるようになるのか?
という質問です。皆様の会社でも、あなたの上司、もしくは上層部。経営層からきっとしつこく聞かれることでしょう。
 
答えはNoです。
アドバンストティアになっただけでは、AWS事業に関する売上はほとんど変化がないでしょう。
 
「アドバンストティアになったから案件が取れる」のではなくて、「アドバンストティアになる過程で多数の大型案件を構築できる体制が整う」が正解です。
大切なポイントなので、よく覚えておいてください(というか理解しておいてください)。
 
なので、セレクトティアだった企業が、アドバンストティアになることで、一気に爆発的に案件が取れる状況になることはありません。
アドバンストティアというバッジ(称号)を前面に出してアピールし、企業が集客活動をしない限り、おそらくAWS案件が爆発的に増えるということはありえません。
アドバンストティアになる努力をしていく過程で、AWS案件に対する会社の取り組み方が変化していきます。チーム単位、部署単位でクローズしていた状況が、部署横断で取り組む姿勢にいつの間にか変化するといった大きな変化が生まれます。
今までは、個の力でやっていたことが、会社全体の事業として実施できるようになるという感じです。
 
実はこれがAWSアドバンストティアサービスパートナーになる一番の企業メリットだと私は思っています。

乗り越えるべき2つの課題


アドバンストティアになる過程では、様々な社内的な課題をクリアしないといけません。
アドバンストティアになるための要件はいくつかありますが、具体的には以下の課題が大きなハードルとなったように思います。

①案件登録の壁

自社が構築等の対応を行ったAWS環境でリリースしたものをAWSのパートナーサイトに登録します。
アドバンストティアでは1年間で20案件以上の登録が必要です。
登録には構築等を実施したAWS環境を所有する企業(案件の発注企業)から、案件登録に関する同意文書に同意してもらう必要があります。

②ビジネスプランの壁

アドバンストティアに昇格するためにはAWS事業に関する事業計画書(いわゆるビジネスプラン)を作成しなければいけません。
こちらはフォーマットが決まっており、数字的な売上コミット、注力分野、他社との差別化要素など細かく記載する必要があります。作成したビジネスプランについてはAWSとレビューを実施し、内容を承認してもらう必要があります。

全社横断でAWS事業の強化を推進するCCoEチームの誕生


めでたくアドバンストティアになったとしても、アドバンストティアを取得している国内企業は100社以上あり、その中からユーザー企業に選ばれる必要もあります。
その差別化はどうしていくのでしょう?
どうアピールしていくのでしょう??
 
そこで登場するのがCCoEチームです。
 
前述の課題①②ともチーム単位(個人単位)、部署単位でAWS案件に取り組んでいてはクリアすることは無理です。
誰かがAWS案件を部署横断で取りまとめ、組織として(会社として)やり方を一本化(統一化)する必要があります。
その役割をCCoEチームが担うことになります。

CCoEチームができるまで

CCoEチームとはなんでしょう?
検索すると”Cloud Center of Excellence”を略したもので、「部署の垣根を超えて全社的な戦略的なクラウド化を進めていくための組織のこと」と出てきました。
素晴らしい!的を射ています。クラウド化の部分をAWS事業と置き換えればもっと適切かもしれません。
 
我々の会社は、AWS案件が各事業部に分散していました。そのため、おのずと縦の組織で案件を対応することになり、各部署内でのナレッジ、独自ルールで案件をこなしていました。横のつながり、いわゆる部署横断で案件を実施するスキームはありませんでした。
これでは、社内で統一したAWS案件の品質は担保できないどころか、ナレッジの共有もないため同じような構築を各部署が行なっていて、とても非効率な状態でした。
 
そこで、各部署でAWS案件を仕切っていたAWS有識者たちとの1on1を地道に実施し、AWSに関する会社の方向性を共有し夢を語り、それらに賛同してもらい、CCoEチームのメンバーとして招集しました。

まさしく先の検索結果通り、部署横断の一つの目的に向かって邁進するドリームチームです。
ワクワクしますよね。
アドバンストティアパートナーになるという目標に向かって、必要なタスクを洗い出し、課題が出ればみんなで知恵を出し合って解決する。まさにAWSパートナージャーニーの醍醐味です。
 
メンバーは、私を含め全員案件の傍らでこの活動をしているので、活動は体力的には大変なミッションなのですが、みんなAWSが大好きです。自分たちの会社をAWSで有名にして大きくしていこうという気持ちが強く、活動は放課後の部活動みたいな感じで悲壮感、愚痴なく、和気あいあいとした雰囲気で活動を実施してきました。(今もその実態は変わっていません。)
 
これはCCoEチームを結成するときに大切なポイントです。
仕事だからやるというスタンスでは必ずこのミッションは崩壊してしまいます。
CCoEメンバーの志、モチベーションが大事ということですね。

CCoEチームに欠かせないメンバー

CCoEチームに必要な要素としては、まだポイントがあります。優秀なAWS有識者が集結するだけではうまく機能しません。
ポイントとしては以下に特化したメンバーも招集する必要があります。
 
①経営方針・事業方針に精通し、ビジネスプランを経営層まで説明できるポジションのメンバー
ビジネスプランを策定するには経営方針、事業方針に精通し、AWSに関する方向性について経営層まで納得感のある説明ができるメンバーが必要不可欠です。弊社ではVPoEにこのポジションを担っていただいています。
 
②営業的な観点で案件を仕切れるポジションのメンバー
AWSパートナーは無論、AWS案件ありきの枠組みです。営業部隊のAWS案件へのアプローチの仕方を啓発し、仕切ってもらう必要があります。弊社がセレクトティアになったきっかけが公共案件だったこともあり、公共部門の事業部長にこの役割を担っていただいております。
 
③技術者育成に強いメンバー
アドバンストティアに昇格し、多数のAWS案件を並行して稼働させるとなれば、当然のことながら案件量に比例したAWSエンジニアリソースの増員は不可欠となります。
しかし、業界的にAWSエンジニアが不足している現状があるのに加え、優秀なAWSエンジニアはやはり有名なAWS専業ベンダーなどに流れてしまい採用は難しい状況です。

AWSエンジニアを社内で育成する、もしくは既にAWSの知識があるメンバーの技術的底上げをするといった取り組みを進めることが、人材確保の確実な方法となっています。CCoEチームメンバーのAWS有識者が講師となって社内人材を育成することが理想的ですが、全メンバーが他案件を抱えた社内有志的な存在なので、こちらの活動に工数を割くことは難しくなっていました。

そこで、人材育成や社内教育のスキームを整備し実行する能力開発室というチームを巻き込み、AWSエンジニア育成の様々な取り組みを実現しています。
 
④技術ブランディングを司るメンバー
こちらはAWS事業を拡大していく企業にとって、とても大切な要素だと思います。
AWS事業をやっている企業は3000社以上あり、それらの企業の中からSHIFTを選んでもらうには、AWS業界で有名になる必要があります。プレミアティアの企業は技術ブログ、技術登壇などでメディアに露出しお客様からの信用度、知名度を得て案件を顧客から勝ち取っている事実を考えれば、技術ブランディングに対する活動を会社としてしっかりとやっていくことは必要不可欠です。

弊社でもアドバンストティア昇格を目指すと決めた時点から、本当にタイミングよく「SHIFTをテック企業として有名にする」というミッションを担う技術ブランディングチーム(DevRelチーム)が発足しました。
AWS事業についてもDevRelチームと密に連携し、CCoEチームメンバー一丸でAWS事業に関するブランディング活動を実施しています。
 
AWS有識者だけでなく、この4つの要素を含めたメンバーが揃わない限り、CCoEチームは社内で有効に機能できず、一時的に盛り上がり、いつの間にかなにも結果を出せないまま消滅してしまいます。

特に③、④は見落としがちなポイントかと思います。
 
これらのメンバーが集結し、お互いの得意分野を活かし活動することで、AWS事業は社内で加速度的に盛り上がり、アドバンストティア昇格へのハードルは少しずつ下がります。そして、いずれCCoEチームの成果としてアドバンストティアへの昇格が実現できると思います。

チーム発足から半年で認定資格数は2.5倍、表彰エンジニア数は2倍に!


実際にCCoEチームが発足する前とその後の数値的効果も参考にのせておきます。これは2024年3月のチーム発足から半年足らずで獲得した成果です。
我ながらSHIFTのCCoEチームってすごい!って感動したりして。。

■認定資格数:80個⇒200個(半年で2.5倍に!)
■AWS構築案件月間平均利用料:$5,000⇒$30,000(半年で6倍に!)
■Japan AWS All Certifications Engineers選出エンジニア数:2人⇒4人(半年で2倍に!)
■社外技術イベント聴講数:0人⇒500人

今回の記事は”立志編”ということで、弊社のサクセスストーリーの序章を共有させていただきました。
次回の記事では”奮闘編”として、CCoEチームが具体的どのような活動を実施しAWS事業を盛り上げたかについてお話ができればと思っております。
 
それでは、皆様良いAWSパートナージャーニーをお過ごしください!!

1/15(水)19:30~「インシデント対応の最適解」をテーマにイベントを開催します!


PagerDutyのProduct Evangelist 草間一人(jacopen)氏と、大規模障害訓練が有名なフリー株式会社の執行役員CIO 土佐鉄平氏をお招きし、「インシデント対応の最適解」をテーマにディスカッションします。

いざインシデントが起こったときの対応法や体験談、具体的な障害訓練や未然防止策、監視方法などを掘り下げます。とはいえインシデントって起きてしまうもの…、では起きてしまったときに大丈夫な状態にしておくには、どうすればいいだろう?そんなところまで深堀りできればと思っています。

AWS CCoE BlogAWS Control Towerシリーズを連載中のSHIFT ナショナルセキュリティ事業部の松尾もLT登壇予定です。ぜひご参加ください!


執筆者プロフィール:大瀧広宣
株式会社SHIFT AWSセキュリティコンサルタント。
IT業界歴30年以上。

■経歴
ソフトウェアエンジニアとしてJavaやHTMLの創成期にWebシステム構築。
ネットワークエンジニアとしてR&D、自社ネットワークアプリ開発に従事。
大手中古車サイト運営企業でAWS事業責任者を務め、データセンターのAWS延伸を実現。
フリーでCIO補佐を務め、コロナ禍を受けた情シスのクラウド化、モダン化を実現。
Serverworks(AWSプレミアパートナー)で急成長顧客を担当するPM兼マネージャーを担当。
大手ブランド買取企業でAWSのセキュリティ対策PM(DLP対策、個人情報保護)を担当。
2024年2月にSHIFTに入社し、AWSセキュリティコンサル、CCoE推進リーダーを務める。

■個人資格
・2024 Japan AWS All Certifications Engineers

■企業資格
・AWS アドバンストティアサービスパートナー認定
・APN Certification Distinction 200
・AWS公共部門パートナープログラム認定
・AWS ファンデーショナルテクニカルレビュー (FTR)
 for Service Offerings(AWSセキュリティアセスメント)

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