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アジャイル開発に必須!?OODAループ思考(基礎編)

はじめに

こんにちは、QAエンジニアの村上です。
お客様のサービスをより良いものとするために日々邁進しています。

アジャイル開発の現場では皆様もご存じの通りスピード感をもった意思決定と行動が求められます。とはいえ、「口で言うのは簡単」「具体的にどうやったら??」と思われる方が多いのかなと思います(私もそんな一人です)。そんな中、OODA(ウーダ)ループ思考に関する本を読みとても興味深かったのでこの場を借りてご紹介します。個人的には同じ悩みを持つ方にはマッチするかなと思いますので、ご参考になれば幸いです。

本記事は下記書籍の内容を参考にしつつ、筆者の見解を交えて記載しております。興味を持たれた方はぜひ書籍も読んでみてください!

  • OODAループ思考[入門]:日本人のための世界最速思考マニュアル

  • 著者:入江仁之

また、一度にすべて書くと長くなるため2部構成でお送りいたします。

  • 基礎編:OODAループの基本情報を学ぶ(本記事)

  • 応用編:OODAループの実践方法を学ぶ(次回)

OODAループとは

もともとは、アメリカ空軍大佐のジョン・ボイドが提唱した敵に先んじて確実に勝利するための基本理論のことを指します。今では、ビジネスやスポーツなど広く活用されどんな状況下でも的確な判断・実行により確実に目的を達成できる一般理論として世界で認められているようです。
生死がかかった戦場で実績のある理論ってことは、目まぐるしく状況が変わるビジネス環境で勝つためにも使えそうですよね。つまり、そんなビジネス環境に適応して勝つための開発手法:アジャイル開発に必須といっても過言ではない!と言えると思います。

OODAループの使用タイミング

詳細な説明に入る前に、どういったタイミングで誰がOODAループを使うと良さそうか、筆者の見解を記載します。
結論、どんな時でも・誰でもです。
なぜなら、OODAループは思考法であり具体的な課題を解決するための手法ではないためです。スピードと柔軟性を持った意思決定と行動をしたい人であれば何をテーマにしても良いし、いつでも使える思考法だと考えます。例えば、スクラムマスターとして「最高のスクラムチームを作るためには」をテーマにしても良いし、エンジニアとして「エンドユーザに最高のプロダクトを届けるためには」をテーマにしても良いと思います。壮大なテーマでなくても「毎日定時であがるためには」「給料upするためには」など個人課題をテーマとしてもOODAループは使えそうです。
読者の皆様が今解決したいことをイメージして以降の章を読んでいただくとイメージしやすいかもしれません。

OODAループの構成

OODAループは名前の通り4つの要素で構成されています。

参考:https://iandco.jp/戦略モデル/oodaループ/

この4つの要素をループさせ、カイゼンしながら行動します。詳しい内容は後ほど解説しますが、結果が思うようにいかなかったとしても、終わったことをあれこれ考えるよりもまた最初から回すのを最優先して次どうするかに全力を注ぐ、考え方です。アジャイル開発と親和性高そうですよね!アジャイル開発宣言の"計画に従うことよりも変化への対応"も体現できそうです。

それではそれぞれの要素を解説していきます。

Ovserbe(みる)

「みる」に関して、著者は見ている事実がありのままかどうかを重要視しています。
ありのままかどうか = 自分の都合のいいように解釈していない、ということを指します。思い込みや固定観念がある状態で事実を分かった気になってしまうとあさっての方向を向いた行動になってしまう可能性があるためです。

とはいっても人間である以上主観を完全には排除できないですよね。マインドフルネス瞑想など自分を客観的に捉えるメソッドはありつつも一時的な効能だと思います。

著者曰く、主観を排除できないとしても意識して「みる」だけで見えるものが大きく変わる、とのこと。関心のないものや固定観念がある状態では、目の前にあるものや現象をありのままには知覚できません。それどころか、目に映った事実を自分に都合のいいように解釈してしまうことさえあるので、自分が今主観フィルターを通して見ていると意識するだけでみえてくるものが変わってきます。

ありのままに事実をみれるようになると本質的な気づきが増えていきます。OODAループでは気づきがすべての始まりとなります。

Orient(わかる)

「わかる」は、見たもの、気づいたことを、自分なりに理解して納得するプロセスで、OODAループに置いてもっとも重要な要素です。(OODAループの解説をしてる方によってはOrient =「状況判断、方向づける」と言う方もいますが、個人的には入江さんの解説の「わかる」がしっくりきます。)

「わかる」がどういう状態か著者の記載が分かりやすいので紹介します。

私たちは何かを見た時、自分が持っている世界観に照らし合わせてそれを理解することで納得します。世界観と整合的であるから理解できる、すなわち「わかった」ことになるのです。

また、ここで登場する「世界観」はとても重要なワードなのでもう少し深堀します。世界観の理解を深めるためにはイソップ寓話「3人のレンガ職人」がおすすめです。

世界中をまわっている旅人が、ある町外れの一本道を歩いていると、一人の男が道の脇で難しい顔をしてレンガを積んでいた。旅人はその男のそばに立ち止まって、
「ここでいったい何をしているのですか?」 と尋ねた。
「何って、見ればわかるだろう。レンガ積みに決まっているだろ。朝から晩まで、俺はここでレンガを積まなきゃいけないのさ。あんた達にはわからないだろうけど、暑い日も寒い日も、風の強い日も、日がな一日レンガ積みさ。腰は痛くなるし、手はこのとおり」
男は自らのひび割れた汚れた両手を差し出して見せた。
「なんで、こんなことばかりしなければならないのか、まったくついてないね。もっと気楽にやっている奴らがいっぱいいるというのに・・・」
旅人は、その男に慰めの言葉を残して、歩き続けた。
もう少し歩くと、一生懸命レンガを積んでいる別の男に出会った。先ほどの男のように、辛そうには見えなかった。旅人は尋ねた。
「ここでいったい何をしているのですか?」
「俺はね、ここで大きな壁を作っているんだよ。これが俺の仕事でね。」
「大変ですね」
旅人はいたわりの言葉をかけた。
「なんてことはないよ。この仕事のおかげで俺は家族を養っていけるんだ。ここでは、家族を養っていく仕事を見つけるのが大変なんだ。俺なんて、ここでこうやって仕事があるから家族全員が食べいくことに困らない。大変だなんていっていたら、バチがあたるよ」
旅人は、男に励ましの言葉を残して、歩き続けた。
また、もう少し歩くと、別の男が活き活きと楽しそうにレンガを積んでいるのに出くわした。
「ここでいったい何をしているのですか?」
旅人は興味深く尋ねた。
「ああ、俺達のことかい?俺たちは、歴史に残る偉大な大聖堂を造っているんだ!」
「大変ですね」
旅人はいたわりの言葉をかけた。
「とんでもない。ここで多くの人が祝福を受け、悲しみを払うんだぜ!素晴らしいだろう!」
旅人は、その男にお礼の言葉を残して、また元気いっぱいに歩き続けた。

引用元:https://www.total-engagement.jp/808/

この話に登場する3人のレンガ職人の反応の違いが世界観の違いだと考えます。つまり、世界観 = ○○とはこういうものだという各個人の認識・見方と言い換えることができます。

レンガ職人の寓話であるように世界観の違いが判断と行動の差に表れます。OODAループでは何よりも早さに重きをおくため、いち早くみたものと自分が持っている世界観を照らし合わせて理解することが重要です。この時、完璧に理解する必要がなく自分なりに理解して納得することがとても大切です。(そもそも、現実を完全に、かつ、客観的に理解することなど誰にもできない、と有名な数学者の方や物理学者の方が証明してるみたいです)
まずはあたりをつけて「わかる」ことが大事ということですね。

Decide(きめる)

みて、わかったら、次のプロセスではどんな行動をとるのか(あるいは何もしないのか)を決めます。「きめる」のポイントはできるだけ直感的にきめることです。ただし、「直感的にきめる = 何の根拠もなく思い付きで実行する」ではないことにご注意ください。

"直感的にきめる"をポイントとしてる理由は、繰り返しになりますがOODAループがスピードを最重要視しているためです。

「いやいや直感的にきめるて..口で言うのは簡単でしょ」と思いますよね。。(筆者は少なくとも思いました)そんな気持ちを見越したように著者の入江さんは状況に応じた具体的なアクションも記載していましたのでご紹介します。

入江さんは「わかる」の状況に応じたアクションをおススメしています。


  • 自分の世界観をもとに一瞬でわかる場合(起こっていることが手持ちのパターン(※)に合致する場合)
    パターン通りに直感で動く ★できる限りこのアクションを目指す

※ここでは、手持ちのパターン = 「こういうときにはこう動く」という経    験則を指します

  • 自分の世界観をもとに一瞬でわからない場合(起こっていることが手持ちのパターンに合致しない場合)
    ⇒さらに状況に応じたアクションをとる

    • パターンを組み合わせて転用することで合致しそうな場合
      直感でうごく

    • どのパターンの組み合わせでも転用できるか不明な場合
      そのときおもったこと(仮説)をためす(検証)


結論、簡単な方法はないのですが、分からない状況にぶつかったとしても仮説検証してうごき続け手持ちのパターンを増やすことが重要だと分かります。地道な努力こそが最大の近道。

Act(うごく)

「うごく」で重要なのは2点だけです。

  • うごかないと判断した時以外は最後までやり抜くこと

  • うごくと決めたらすぐに実行すること

うごくに具体的な方法論はなく、強い意志が最も重要です。
世界のトヨタの仕事哲学にもこのような言葉があります。

巧遅より拙速

時間をかけて巧くやるより、拙くても速く動くことを重要視する考え方です。トヨタでは、「やってみて悪ければ、元に戻せばいい」「何かよい案を思いついた時には、とにかく行動すること」を大切にしているようです。失敗は怖いものですが、もし失敗を恐れて一歩踏み出せないでいるならぜひこの考え方を頭の片隅に置いてみてはいかがでしょうか。日本が誇る世界のトップ企業がやってる!と思えば少し背中を押してくれる気がします。

ループ(みなおす)

みて、わかって、決めてうごいた(もしくは、うごかないと決めた)結果を見直すプロセスです。

「みなおす」で重要なポイントは、失敗したからといって過去を振り返って判断や行動の間違い探しに時間を使わないことです。いくら過去を振り返っても、失敗したという事実が覆るわけではないためです。

この考え方は、通常の開発PJでよくやってるKPT法などの振り返りとはまったく違ってますね。OODAループでは終わったことをあれこれ考えるよりも、また最初からOODAを回すことを先決します。

なかなか潔い考え方ですよね。ただ、スピードを重視するならこれぐらい潔くても良いのかもしれません。

まとめ

ここまでOODAループの基礎を書籍を参考に整理してみました。一つひとつを見てみると何か特別な技能が必要な訳ではなく、割と普段無意識にやっていることだと分かります。つまり、誰しもが実践可能な思考法だと考えます。

かなりボリューミーな内容になったため本記事の最後に基礎編のポイントをまとめます。

  • OODAループはどんな状況下でも的確な判断・実行により確実に目的を達成できる理論として世界で認められている。

  • Ovserve(みる):事実をありのままに捉えることが大切。まずは、主観フィルターがかかっていると認識するだけでも良い。

  • Orient(わかる):いち早くみたものと自分が持っている世界観を照らし合わせて理解することが大切。世界観 = ○○とはこういうものだという各個人の認識・見方。

  • Decide(きめる):みて、わかった情報をもとにできる限り直感できめる。わからない状況に陥った場合は、仮説検証を繰り返して手持ちのパターンを増やすことが重要。

  • Act(うごく):失敗を恐れずすぐに実行して、最後までやり抜く。

  • ループ(みなおす):失敗したとしても過去は振り返らずにOODAループを再度回すことを先決する。

次回(応用編)は下記内容で記載予定です。

  • シーン別OODAループの使い方と効果

  • アジャイル開発での実績

応用編もご拝読いただけると幸いです!


執筆者プロフィール:村上 槙(Murakami Shin)
福岡県出身。趣味はマンガとお酒(特に日本酒)のアクティブなインドア派。自動車のシステム開発を経験後、SHIFTへ入社。サービス提供者、エンドユーザ、社会誰にとってもより良いプロダクトの実現に貢献するためQAエンジニアとして日々邁進中。モットーは「巧遅より拙速」「Lead the self」。

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