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SHIFT Game Producer Meetup #6 VR/ARを用いたゲームビジネス
こんにちは!エンターテインメント業界セミナー担当の高木です!
今回の「SHIFT Game Producer Meetup #6」は、Graffity株式会社 森本 俊亨 氏、株式会社UNIVRS 藤川 啓吾 氏をお招きし、1LDK 朝岡 勇太氏をファシリテーターに、3名で対談を行いました。
AR/VRならではのゲーム体験について
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―まず、1LDK朝岡氏からゲストのお2人に質問が投げかけられました。
朝岡:ARって位置情報ぐらいしかまだゲームとして成立してないんじゃないかなと思うんですけど、どうお考えですか?
森本:AR領域だと82%がユースケースのゲームになっていて、さらに一番のユースケースがポケモンGOみたいな位置ベースのゲームになっているのが正直現状です。
ポケモンGOって位置ゲームではあって、機能としてARが追加されているだけなんですよね。ARで皆さんが思い浮かべるものって、スマホのアウトカメラから体験するものだと思っていて、後はARグラスみたいな。なのでARならではのゲーム体験を追及出来ているところはほぼないかなと、実際にエンゲージメントも低いかなと思っています。ポケモンGOは歩くことをゲーム化しているんですが、僕らの場合だとスポーツみたいに動く所をゲーム化している感じ。世界では、現実を認識してその現実に対してアクションするゲームが多いですね。
朝岡:VRならではの体験を切り出すと何が重要になりますか?
藤川:現実ではできないことをVR化したいですよね。僕は良く「VRには3つの自由がある」と言っていて、1つはどこにでも行ける、どこでも場を作り出せるという、空間の自由です。2つ目が、Vtuberのように自分を表すアバターが自由になり、姿や性別もどうでもよくなって、自分の人格すらも自由になる、アイデンティティの自由。3つ目が、一番大きいと考えていて、能力の自由。VRだと空が飛べたり、重力関係なく移動できたり、現実の空間物理法則を超えて能力を発現できる。特に能力の自由ってまだ研究し尽くされてなくて、その3つの自由を最大化するのがVRならではの体験には重要かと思っています。
朝岡:VR作品に今後ヒットしていく共通項はあるのでしょうか?
藤川:ゾンビを撃つシューティングとかホラーゲームはレッドオーシャンなんです。僕らが作ったレースとか、アクションバトルゲームとか作られてないジャンルがめっちゃあるんですよね。空いているパイがあるのにレッドオーシャンばっか攻めてもしょうがないよねって。
朝岡:開発者もそんなに多くはないんですか?
藤川:少なくはないですね。作られているものってノウハウがたまっているので作りやすいんですよ。レースゲームの場合などのあまり作られていないものは、セオリーがまだ何もないんです。また今までのゲームの手法として使っていたUIや演出のセオリーが全部通じないっていう所もありますね。
AR/VR開発での苦労話/失敗談は?
朝岡:何が一番作るうえで大変ですか?
森本:UIもUXも両方かなという感じなんですけど、例えば僕らの場合だと、2週間に1回、Leap Triggerのプロトタイプの更新をしてユーザーインタビューを実施していて。例えばスマホだと画面が小さいから縦持ちなのか横持ちなのか。縦持ちだと持ちやすいけど視野角が狭い。横持ちだと視野角広いけど持ちにくい。検証した結果そもそも視野角以前に、横持ちだと手がカメラ塞ぐケースが多く、ARの空間認識ができないことがありました。結果として、縦にしたんですけど、縦にした時、今モンスター1体召喚にしているんですけど、昔は3体まで召喚できたんですよ。
朝岡:だから画面がごちゃつくのか。
森本:そうです。意味わからなくなるんですよね途中から。どこを優先的に削減するのか考えて、すごいシンプルにしていきました。あとは体を動かす所が体験として大事なので。弾が連射できると、動かなくなるんですよね人間。連打ゲーにしちゃうから。だからチャージ式にして微妙に間を作ってあげる。細かいですけど、そういった所がARの中でUXに近い話ですね。
UIに関してはどういう情報を画面に表示するのか、AR空間の中のモンスターに紐づけるのか、当たったときの演出や音のフィードバックをしっかりするとか、こだわって差し引き大変だったかなと。
朝岡:藤川さんどうでしょう?苦労話みたいな所で。
藤川:VRゲームって、例えばPSVR向けに作られるものは通常のコンソールゲームから技術を流用できるんじゃないかと考えがちなのですが、UIに関してはほぼ通用しないです。そのまま作ってしまうと見にくかったり、視点の中心にずっとUIが付いてきて酔ってしまったり。人間の気持ちよさを考えながらUIを作るっていうのが難しい所ですね。
朝岡:藤川さんって元々ゲーム企業出身でしたっけ?
藤川:僕は元々ロゴなどを作るC Iデザイナーから入っています。
朝岡:お二人とも技術もしくはデザインのクリエイティブからキャリアが始まっていて、今、ゲームを作ってらっしゃる。今までやってきたビジネスモデルと全然違うんじゃないんですか?ゲームになった瞬間に。
藤川:VR独自の売り方が必要で、日本向けじゃなくていきなりグローバルで考えないといけない。テレビCMとか広告バンバン打っても、意外と刺さりづらい。あとはいかにユーザーとコミュニティを作れるかという特殊な戦略が必要です。Facebookなどのプラットフォーマーとしっかりやり取りしてプロモーションに繋げたりするのもすごく重要です。僕らの場合だとVRで日本のIPを連れてきている所がほぼいないのでプラットフォーマーから推してもらいやすかったり。ですが、IPを扱うと版元との交渉とかがあるので、V R
開発以外にもちょっと特殊なノウハウが必要です。
朝岡:お二人の中で創業して3~4年で一番の失敗ってなんですか?
藤川:最初OculusGOという端末をターゲットプラットフォームとしていたんですよ。開発し始めて、OculusGOが来年で生産終わるらしいぞって噂を聞いて。処理能力が低いのでそこは削って次PSVRターゲットにしたんですけど、OculusからQuestが出るぞって話があってQuestに行って。最初にターゲットにする開発プラットフォームをコロコロ変えちゃって、そこの弊害がかなりありました。VRってデバイスのパフォーマンスによってかなり設計を変えて最適化しないといけないので。
朝岡:デバイスでそんなに変わるんですか?
藤川:変わりますめちゃくちゃ。
朝岡:じゃあマルチプラットフォーム展開は基本的には難しいんですか?
藤川:でもマルチプラットフォームは基本やらないと・・・。
朝岡:でもそれ、1タイトル別に、チューニングしなきゃいけないんですね?
藤川:チューニングしないといけないんですけど、基盤から派生していくように、マルチプラットフォーム対応を最初から考えてやらないといけないですね。
朝岡:それめちゃくちゃ学び多いですね。マルチプラットフォームありきでやらないとマーケットサイズが小さすぎるから。昔のブラウザゲー全盛期の時mixiでもグリーでもモバゲーでも、何プラットフォーム同時で、って僕もやっていたので。
藤川:そういう感じでやらないとって所はありますね。2作目の開発も進めてはいるのですが、今のリトルウィッチの失敗が活きる所ではありますね。
朝岡:森本さんはどうですか?一番失敗だったのは。
森本:しいて言うならばLeap Triggerのマーケティングは、新しいゲーム体験なので伝わりづらいんですよね。体を動かして楽しむのがポイントで実際やると楽しいんですけど、全然伝わらないんです。
面白いは作れるけど面白そうがまだ作り切れてなくて。AR的な「ワオ」はあるんですけど、それで反応してくれる人って多い訳じゃないので、どう面白そうかを伝える所はマーケティングにおいては苦労しているなと。
朝岡:今回はどういった演出にしたんですか?
森本:プロモーションムービーにお金掛けて、リッチにしています。ちゃんとCGを使って楽しそうに見えるっていう所と、インゲームでオンラインで戦う時にバーチャル背景にしたんですけど、SF感というか世界観に興味を持ってもらうような面白そう具合を付け加えるとか、試行錯誤しているって感じでまだ答えは見つかってはいないかな?
朝岡:ファンマーケティングもやったりするんですか?
森本:まさにファンマーケティングをすごく意識していて、今Discordコミュニティを運用しているんですけど、グローバルなので熱狂的なユーザーが結構いるんですよね。常に報告してくるような。そのプレーヤー同士でちょっとバトルしようだったり、勝手にバグの報告をめっちゃしてくれたりします。
友達どんどん紹介してくれていて、動画YouTubeで撮ってくれたりしますね、そういう人たちに対しての対応を強化しています。
朝岡:藤川さんも同じですか?
藤川:そうですね、リトルウィッチアカデミアV Rの場合は原作のファンに対してどうコミュニケーションするかが重要な所でした。その手法の1つがクラウドファンディングなんですよね。そして、ファンディングしてくれた人に対してコミュニティ運営をやっています。進捗報告だったり、要望を聞いたり、キャンペーンを展開したり。それに加えてこれからはUN I V R S自体のファンを増やすこともやっていかないとと思っています。
―ここで1つ前のテーマに戻り、ゲスト2名とも1本ずつ作品をリリースされた今、次に作りたい作品について展望を語られました。
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朝岡:次はこういうのを作りたいってありますか?
森本:はい。僕らの場合は、基本的にPvPのゲームになっているんですよね。かつグローバルで見るとPvEも成立するなとすごく感じていて、協力方型のARバトルを作ってみてもいいなと。
朝岡:代々木公園で走り回ってデカい敵倒すみたいな・・・。
森本:そうです。協力ゲーみたいな感じで日本で流行らせていくのは全然ありだなと。
朝岡:藤川さんは次作りたいものはありますか?
藤川:IPをジャンプアップして、世界的に有名なIPをVRゲーム化するというのを進めています。先程触れたように今空いているジャンルがあって、そのジャンルに向けて技術的にハードルが高くても技術的挑戦権を持っている僕らが刺していく、そこにIPの世界観を乗せてヒットさせるイメージです。
朝岡:AR・VR領域ではここだけ気を付けて、というのはありますか?
藤川:まず予算を掛けすぎないこととか(笑)。
朝岡:どれぐらい掛かるんですか?
藤川:しっかりゲーム作ると4年とか掛けちゃうじゃないですか。だから1年ぐらいでとりあえず出してみる。リリースして感覚をつかむ方が重要だったりします。
朝岡:3,000~5,000万円ぐらい最低必要って感じですかね?
藤川:そうですね。今から技術知見や実績が0の状態でやるなら、もう少し必要かもしれないです。またプラットフォーマーって1回リリースした実績があるかないかでかなり対応が変わって来るので、まず完成させてリリースする事を見据える必要があります。
朝岡:まず1本目をカジュアルに1周回すのが大事なのかもしれないですね。
藤川:今からやるとしたらそうですね。
森本:僕から挙げると、1つ目はARに参入するときは、「ARの技術領域についてちゃんと詳しくなろう」ですかね。デバイスのスペックによってできないことがあるんですよね。できるできないを知っておくという所ですね。
2つ目は、2週間に1回でもいいのでユーザーにヒアリングしてUIUXを作るときに確かめることが絶対に必要かと思っています。
あとは、エンジニアはAR好きを採っちゃダメ。スマホARの場合だとARの部分とARじゃない部分がどうしても出てくるんです。一定作り切ると、運用モードに入るんですよね、システム完成してARっぽくない開発になってくるんですよ。ARを期待して入ってくると「全然関係できないじゃん」となってしまうんです。
藤川:逆にVRの方は、むしろ「VR好き」をとらないと。全て被って検証しないと分からないので、1日5時間VRChatに居ますみたいな人を採った方がいいです。本当に四六時中VRデバイスを被ることになるので。
あとはVRに参入する際に絶対にぶつかるのはVR酔いの問題なんですよね。ワープ移動での対策や、あえて対策にコストをかけずにスティックで移動する方に振り切っているタイトルが多いのですが、それだけに一辺倒になっちゃうと面白くない。VRの自由さを制限するような先がない体験になっちゃうので。もしVR酔いで困ったら僕らに聞いてください!
―さて、いかがでしたでしょうか?
今後も「SHIFT Game Producer Meetup」を開催してまいりますのでご期待ください!
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執筆者プロフィール:高木 真愛
WEB広告代理店で営業・広告運用を経験し、その後はしばらく接客業にて奮闘。現在はSHIFTにてセミナー運営・集客、バックオフィス業務、人事採用サポート、SHIFTnoteのライターを担当。
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