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PM(プロジェクトマネージャー)とアジャイルコーチの違いについて

はじめに


こんにちは。 SHIFTアジャイルコーチの谷川です。

私も、当社において、アジャイルコーチしての業務を一年以上経験し、数多くのことを学ぶことができました。

当社でも、アジャイルコーチ、スクラムマスターの案件獲得に積極的に動いておりますが、その中で良く聞くフレーズが、「PMとアジャイルコーチは何が違うの?」、というものがあります。

私も、実際にプロジェクトマネージャーからアジャイルコーチに転身しておりますので、世の中にたくさんいるプロジェクトマネージャーのNext Stepとして、アジャイルコーチというとても楽しく働ける道があると思うので、その参考にしていただけたらと思います。

今回は、このPMとアジャイルコーチの違いについて言及したいと思います。


PM(プロジェクトマネージャー)とアジャイルコーチの違い


プロジェクトマネージャーもアジャイルコーチも、直接プログラム開発を行う訳ではないので、マネジメントコストとして捉えられると思います。
マネジメントコストとなると、一般的には極力最小限にしたいと思う方が多いです。

しかし、プロジェクトマネージャーとアジャイルコーチは似て非なるものであり、同じ属性のものではありません。

  • プロジェクトマネージャーは、管理者なので、計画を立てて、プロジェクトを管理し、全体を監督する

  • プロジェクトマネージャーは、効率化、最適化を優先する。

  • プロジェクトマネージャーは、指示することが多く、立場が開発チームの上となる

  • プロジェクトマネージャーは、売上、原価などの内向きな数字を扱うことが多い。

  • プロジェクトマネージャーの成功は、プロジェクトの成功

  • アジャイルコーチは、チームの人々をアジャイルに導くことが仕事

  • アジャイルコーチは、チームが良い状態になることを目指す。「Well-being」を目指す人もいる。

  • アジャイルコーチは、チームメンバーの中にいるイメージであり、チームメンバーとアジャイルコーチは対等な立場

  • アジャイルコーチは、お客様への価値提供を重んじるため、外向きな数字を扱うことが多い。

  • アジャイルコーチの成功は、アジャイルな自己組織化されたチームを作ること(継続的なカイゼン、高いパフォーマンスの追究)

この立場の違いを認識すると、PMとアジャイルコーチの違いを理解しやすいと思います。

次の表で、具体的なシーンにおけるプロジェクトマネージャーとアジャイルコーチの動き方の違いを整理してみます。

プロジェクト管理は、ウォーターフォール型に行われることが多いので、それとアジャイル型の違いのような整理になっています。私も、アジャイルコーチになる前は、バリバリのウォーターフォール型のプロジェクトマネージャーをやっていましたので、この違いが良く理解できているので、立場によって使い分けるようにしています。

表1.プロジェクトマネージャーとアジャイルコーチの動きの違い

アジャイルコーチの役割


アジャイルコーチの役割は、基本的なアジャイルプロセスと原則をチームに浸透させることですが、具体的には、主に下記の6つの役割があると、「コーチングアジャイルチームズ」で紹介されていますので、概要を下記に記します。(*1)

アジャイルコーチの具体的な業務内容について、紹介している書籍はかなり少ないと思いますので、とても参考になりました。
ちなみに、プロジェクトマネージャーのコーチングもアジャイルコーチの仕事となります。

1.ファシリテーター

  • すべてのアジャイルイベントには、「そもそも、なぜこのミーティングをするのか?」という質問の答えとなる特定の目的がある。その目的を達成するために、チームをコーチングし、それを足掛かりにして、様々なアジャイルイベントからできるだけ多くの情報を得られていることを確認する。

  • アジャイルを教えたてのうちは、チームへ多めの介入をし、教えている最中はできるだけ早く一歩引き、チームの継続的な自己組織化を支援する。

  • チームに何かを提供する前に意図をもって判断し、介入による損失をはるかに上回る利益をもたらすものだけを提供する。

  • 鋭い観察力を身に付ける必要がある。

  • 内容から離れ、ファシリテーションに集中することで、チームのやり取りの質を向上させることができる。

  • パワフルオブザベーション、パワフルクエスチョン、パワフルチャレンジを提供できるスキルを見に付ける。

2.教師(ティーチング)

  • 力強いチームの立ち上げはアジャイルチームへ向かうジェット燃料だ。うまく指導しよう。

  • チームの立ち上げの最中にアジャイルを教え、チームがアジャイルの核心にたどり着けるようにする。

  • チームが目の前の業務に集中し、人としてより良い関係性を築けると、どのように自己組織化するのがベストかが判断できる。

  • 新たなメンバーが参加したらティーチング可能な時間を見つけ、アジャイルを教える。

  • アジャイルの役割を全員に教え、役割を完全に実行すると期待してもらう。

  • 調和と不調和の両方を繰り返しながら連携を取る心づもりでいること。

3.コーチのメンター(コーチング+メンタリング)

  • コーチングは、常に個人レベルとチーム全体のレベルの両方でおこなう。優れたアジャイルコーチは、チームがスプリントやリリースサイクルのどの段階にあるかに注意を払い、チーム全体や個人のコーチングを有用かつ強力で持続的なものにすることができる。

  • 「アジャイルにおけるコーチング=コーチング+アジャイルメンタリング」
    優れたアジャイリストを育てるコーチングを行う際には、人々の人生全体に関心を持つ。

  •  すぐにコーチングの会話を始める。問題が発生した場合でも、コーチングの関係が確立していれば、その人がアジャイルの旅のどの地点にいるかを把握した状態で会話することができる。

  • 良いプロダクトオーナーがいれば、健全なアジャイルチームになる。プロダクトオーナーをうまくコーチングしよう。

  • 自分のスキルと知識を強化するために、他の人にコーチングの方法を教えよう。できるだけ早く、アジャイルコーチの弟子を取ろう。

  • プロジェクトマネージャーはチームのパフォーマンスに影響を与える。ここもアジャイルコーチとしてのあなたの領分だ。

  •  スポンサー、ステークホルダーにも自己組織化されたチームから想像以上の成果を得るための方法を学ぶためにコーチングが必要だ。

4.コンフリクトナビゲーター

  • 彼らのコンフリクトを解決することがあなたの仕事ではない。彼らがコンフリクトを理解し、それに対してどう対処すべきかを選択するのを助けることである。

  • コンフリクトが起きているときはチームに細心の注意を払い、介入するかどうかを意識的に判断する。

  • 5段階のコンフリクトレベルを使って、何が起こっているかをより客観的に確認する。準備ができたら、5つのレベルを明らかにし、チームでもこれを使用できるようにする。

  • アジャイルチームで発生するコンフリクトの多くは解決できないものであるため、解決できないコンフリクトと共存する方法をチームに提案する。

5.コラボレーションの指揮者

  • コラボレーションを進めるためには練習が必要である。チームには練習のための余裕を与える。

  • 仕事をするうえでコラボレーションが必要かどうか、チームで意識的に判断する。コラボレーションの必要がなければ、コオペレーション体制を維持し、それをうまく機能させることに集中する。

  • コオペレーション関係を築き、必要に応じてコラボレーションを築くには、まず個人に焦点を当てる。

  • コラボレーションの話し合いをしているチームには、新しいスキルを提供したり、練習を手伝ったりするために介入する。

  • チームがコラボレーションを欠いた振る舞いに戻ってしまったときには、「呼びかけ」を行う。

  • できるだけ早く中心から脱し、チームが自分たちでコラボレーションできるようにする。

  • コラボレーションに熟練したチームには、コラボレーションの核心を明らかにし、それぞれのコラボレーションの極意に隠された意味を発見するように促す。

6.プロブレムソルバー

  • チームの問題は、チームの問題であって、あなたの問題ではない。

  • 他人から問題を指摘されたり、自分で発見したりしたら、立ち留まって内省する。

  • 「私たちの弱点は?」と質問する勇気を持つことは、アジャイルコーチの定番プラクティスであり、絶対的な義務である。

  • 問題がはっきり見えた場合や、それを熟考しても何も思い浮かばなかった場合は、そのままチームに持ち込むこと。全員が理解するために、チームがどのような視点を加えるか見てみる。そしてその問題に対してどうしたいか質問する。

私は、書籍で紹介されている上記6つの項目に加えて、「Well-being」を目指すことをアジャイルコーチの役割に追加しています。

7.「Well-being」を目指す

「Well-being」は、今では、日本政府の中長期の経済財政運営方針(閣議決定)にも掲げられているものであり、様々な企業のビジョンにも登場するようなキーワードになりました。

この「Well-being」を目指すための施策として、今、アジャイルが注目されるようになっています。

「Well-being」の詳細を理解し、それに導くためにアジャイルを活用できるアジャイルコーチは、様々な職場の課題を解決し、「Well-being」を実現させることができる貴重な人材として、活躍の幅を広げることができると思っています

「Well-being」とアジャイルの関係の詳細については、下記の記事を参考にしてください。

アジャイルコーチの価値


アジャイルコーチ、スクラムマスターは 「チームの応援団」 のような存在であると私は考えています。

スポーツの世界でも、「応援」がかなり力になることが証明されています。

人の力は「応援」により、大きく変化するのです。
そのため、最近注目されるようになった、チームの開発生産性を測る新しいフレームワークである「SPACE」では、これらに関連する指標が設定されています。

私のコーチングスタイルは、徹底的にチームの味方になることです。
そのことを常にチームメンバーに伝え、チームを守るべく、他のチームや管理者層と対峙します。
これにより、チームメンバーに安心感を与え、チームが開発などの作業に集中できる環境を作ります。

この結果、チームのメンバーひとり一人が前向きに自分で考えて動けるようになり、作業がとても効率的に進むようになり、チームのためのプロセスカイゼンの提案も積極的にあがるようになります。

そして、チームとしても、チーム内コミュニケーションがかなりスムーズに進むようになり、認識齟齬なく作業がスムーズに進むようになり、カイゼンプロセスが自然と回り、結果として、チームの開発生産性がとてもあがっていくことになります。

アジャイルコーチ一人の応援により、チームメンバー全員の開発生産性をあげれる可能性がある訳であり、さらに開発効率をあげるだけでなく、「Well-being」を目指すことができる、ここがPMとは違う、アジャイルコーチの活動の大きな価値だと思います。

アジャイルコーチ、スクラムマスターの業務はサーバントリーディングが基本となるので半稼働(0.5人月/月)で十分でしょうと言われることがあります。

担当したチームに対して、上記のすべてのことを対応するには、とても半稼働でできる業務量ではないことがわかると思います。

アジャイルコーチ・スクラムマスターの業務には、上記で説明したようなものがあり、それぞれの活動の意義をしっかりと説明することで、お客様に価値を認めていただけるようにしていきたいと思います。

おわりに


私も、当社において、アジャイルコーチしての業務を一年以上経験し、「アジャイルを正しく理解した良いチーム」 を作ってこれた気がします。

担当した開発チームのメンバーとは、心理的安全性がしっかりと確保され、チームの味方として積極的に動くことにより、チームからの信頼が得られ、そのチームを良い方向に持っていくことができましたが、私自身もチームメンバーも「Well-being」な状態になれていた気がします。

それだけ、アジャイルコーチ・スクラムマスターというのは魅力のある職種 だと思いますので、是非、皆さんもチャレンジしてみてください。
自分が必要とされたい、自分の価値を感じたい、楽しく働きたいと思っている方は、是非、当社にお気軽に声を掛けてください。


◆参考文献
(*1) リサ・アドキンス 「コーチングアジャイルチームス」 2024年1月


執筆者プロフィール:谷川 智彦(たにかわ ともひこ)
2023年5月にSHIFTに入社。
組織アジャイル教信者。真剣に「組織アジャイル」でいきいき、ワクワク、幸せに働くことができ、日本を元気にすることができると思っている。

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