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プレイングマネージャーでは、マネージャーをプレイできない



はじめに


こんにちは。現在ゲーム会社にて、進行管理をしているSHIFTの立野です。今回は現場でのマネジメント体験や、プレイングマネージャーとしての取り組みについてまとめます。現在マネージャーとして活動している方や、これからその役割に就く方にとっての一助となれば幸いです。
 
まず、「プレイングマネージャー」という役割についての認識を揃えます。
本記事におけるプレイングマネージャーとは、「プランナーとして業務を遂行しつつ、管理業務も行う役割」を指します。対象としているのは、ゲーム業界におけるプランナーおよびそのマネージャーであることを前置きいたします。
 
プレイングマネージャーの役割はプランナーとしての作業とマネジメント業務を兼務できる点で魅力的に見えますが、そのメリットとデメリットについても考えていきます。

忙しい方向けに結論


本記事の内容を先にまとめます

  • マネージャーに求められるのは、チーム全体の生産性向上

  • プレイングマネージャーをしていると生産性が向上しにくい

  • 生産性向上には、マネージャーがチームの力を最大化することが重要

一見当たり前の内容に思えるかもしれません。
なぜチームが成熟しにくいのかも含め、考察していきます。

1.マネージャーに求められるのはチーム全体の生産性向上


マネージャーとして求められる最大の成果は何でしょうか。
多くの方が「チーム全体の生産性向上」だと考えると思います。
ゲーム風に例えるなら、チームに「バフ」をかけるようなものです。
 
では「生産性が高いチーム」であるために必要な要素とは何でしょうか。
現場で生産性が高いと感じられる要素は主に以下の3点です。

  • 目的遂行能力:迅速かつ正確にデータや仕様書を作成できる能力です。

  • 状況適応能力:イレギュラーに対し関係者と連携して進行できる力です。

  • 改善能力:現状の課題を見つけ、個人やチームで改善を進める力です。

これらの能力が高ければ、作業の進行がスムーズで、イレギュラーにも対応しやすく、今後の改善も進めやすく「生産性が高い状態」と考えています。

逆に、これらの要素が低いとチームの生産性は低下します。
ゲーム業界ではチームで成果を上げることが重視されるため、各メンバーのスキルだけでなく、3つの要素を高めてチーム全体の生産性を向上させることが求められます。
 
では、具体的に各要素をどのように成長させるかを次で記述していきます。

2.生産性を向上させる2つの成長軸


生産性を構成する各要素には、「個人単位での向上」と「チーム単位での向上」の2つの成長軸があると考えています。
 
【1】個人単位での向上
【2】チーム単位での向上
 
「個人単位での向上」とは、個人が業務の効率や速度を向上させることです。たとえば個人での工夫や最適化を通じて作業スピードが向上することや、マニュアル整備によるスピードアップも個人単位で生産性の向上となります。
 
「チーム単位での向上」は、リリースまでの作業フローの見直しや心理的安全性を高める取り組みなどが該当します。意思決定が明確で、作業者が迷わず進められる環境を整えることはチーム単位での生産性の向上となります。
 
つまり、個人のスキルが向上し、それを迷いなくスムーズに発揮できる環境の2つがあれば全体の生産性が向上します。
 
下記は個人・チームそれぞれの成長に応じたイメージです。

最も生産性が高いものは右上の状態になります。
個人・チームに働きかけて、チーム全体の生産性を上げていきたいですね。

3.プレイングマネージャーをしていると生産性が向上しにくい


ではなぜ、プレイングマネージャーでは生産性が向上しにくいのでしょうか。それは、プレイングマネージャーが「忙しすぎる」ためです。
 
プレイングマネージャーは、プロジェクトマネージャーとしての役割に加え、プランナーとしても活動します。しかし、1日に作業できる時間は限られており、会議も多くなるためプランナーとしての作業時間は限られます。
そのため、作業時間を「マネージャー業務」と「プランナー業務」に分割せざるを得ず、どちらかに専念した場合よりもそれぞれの作業時間は減ります。
 
たとえば、作業フローの改善が決まりその準備が必要となった場合に、翌日のイベントのリリースデータを準備する必要が生じる場合があります。
 
この場合、緊急度から作業改善のマネジメント業務を一時中断せざるを得ず、翌日のイベントに関する作業を優先して取り組むこととなります。
プレイングマネージャーでは作業改善の即効性が落ちてしまいがちです。

実際、私が担当したプロジェクトでも前任者はプレイングマネージャーであったため、以下のような問題が発生していました。

  • マニュアルの整備ができていない

  • フローの改善を提案していない

  • 締め切り直前で慌てて対応する

  • 不具合の再発防止も「気をつける」に終始

プランナー側での作業負荷が高かったため、マネジメント業務は最低限に留められていました。
 
上述のような環境で私は前任からバトンを受け取りました。
単に仕事をなぞるだけではチームとして改善できないことを考え、思い切ってすべての時間をマネジメントの作業に割きました。
 
フローの整備とムダの改善、個人のナレッジを集めて資料化を実施。
不具合が出た場合には個人ではなく環境からの改善を実施しました。
 
これは生産性を上げるための「チーム単位での向上」が該当します。
また並行してマニュアル整備による「個人単位での向上」も進めました。
 
この結果、現在チームは以前より2倍以上の量をこなせるようになりました。
 
プレイングマネージャーがマネジメントに専任となったことで、プランナーの数は減ったものの生産性はむしろ向上するという結果になったのです。
 
この経験からマネージャーに求められるのは、プランナーとして自身の「個人単位の向上」ではなく、「チーム単位での向上」を行うことが生産性の向上において大事だと感じました。
 
そしてそれはプランナーとしての時間を割いてしまうプレイングマネージャーでは難しく、マネジメントへ専念するほうがより生産性が出るでしょう。
マネージャーはチームに求められる最大成果を考えた動きが大事です。

4.生産性向上には、マネージャーがチームの力を最大化することが重要


最後に本記事をまとめます。
作業を進行管理する立場になって感じたことは、マネージャーはチームの生産性を上げる努力をすべきだという点です。
 
自分がすべてを決定し、すべての作業を監視する形では、チームの生産性は向上せず、個人スキルに依存するもろいチームになります。
 
そうではなく安定した進行を今後とも続けていくためには、個人・チーム単位での向上の両輪を回して生産性を上げることが大事です。
 
私自身も現在のプロジェクトに限らず、マネージャーとして視野を広く持ってチームとしての生産性を上げるために引き続き努力していきます。


執筆者プロフィール:立野 健人
2020年SHIFT入社。入社前はコンシューマータイトルのデバッグからプランナーへ転向。アプリゲームの開発から運営を経験し、現在はソーシャルゲームの運営サポートに従事

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