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SHIFT Game Producer Meetup #13 ジオラマで表現されたあたたかみのある世界を冒険する。ミストウォーカーのFANTASIAN。開発秘話を語る!

はじめに

こんにちは★SHIFTエンターテインメント業界ウェビナー担当の高木です!

今回で13回目となる、ウェビナー「SHIFT Game Producer Meetup #13 」では、Mistwalker Corporation ディレクター 中村氏とアシスタントプロデューサー 西川氏をお招きし、弊社清水、1LDK朝岡氏をファシリテーターに対談を行いました。

一部分ではございますが、その様子をぎゅっとまとめてお届けします!

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テーマ「Apple Arcadeとは?」

Mistwalker Corporation西川氏(以下、Mistwalker西川): Apple ArcadeはAppleさんがリリースしているゲームのサブスクリプションサービスです。 iPhone、mac、Apple TVなどを持っていれば、月額600円で全く広告がなくゲームが遊べるというサービスになっています。

1LDK朝岡氏(以下、1LDK朝岡):他のプラットフォームとの違い、注意点はありますか?

Mistwalker Corporation中村氏(以下、Mistwalker中村):Apple Arcadeは対応するプラットフォームにmacとApple TVという、プラットフォームが入っているんですね。

そうなると普通にスマホだけ作っているとタッチだけで済むところが、キーボードとマウス、ゲームコントローラーが複数のところにまたがるところで、開発の難しさというのはありましたね。機材としても増えますし、操作系も増えるという点が難しかったかなと思います。

1LDK朝岡:どんなデバイスでプレイしても、お客さんに味わい深く楽しめるようなデザインだったりとか操作性だったりとかを注力されたんですか?

Mistwalker中村:そうですね。Apple TVでゲームコントローラーでの操作となったときにいろいろ難しいところがありました。キャラクターの移動に関しては、タッチ操作だと画面の場所をタッチしてそこまで移動するという形なんですけど、スティックだと全く別で、自分の行きたいところにスティックを倒すので、操作系統が実際に二つに分かれるかたちになりました。

1LDK朝岡: やはりSHIFTさんがデバッグされる時は、それ用にいろんなデバイスをご準備されているんですか?

SHIFT清水:そうですね。今回モバイル開発からApple TVでの対応ということで、コントローラーの種類を細かく確認させていただいたところ、macのOSのバージョンも結構多岐にわたるということで、非常に多くの機材をご用意して検証をしております。

テーマ「作品のジオラマ表現について」

1LDK朝岡:なぜこの作品をジオラマでやると決められたのでしょうか?

Mistwalker西川:MistWalkerが以前、テラウォーズという作品にチャレンジしまして、その時にジオラマ作家さんと一緒にお仕事をしまして。坂口(プロデューサー 坂口博信 氏)の「ジオラマの中をキャラクターが冒険できたら、もっとすごいんじゃないか」という意見から、FANTASIANは「じゃあジオラマの中を冒険できるようにしよう」となった感じですね。

―ここで実際のアートやジオラマ写真をご紹介いただきました。 

SHIFT清水:これはコンセプトアートですかね?

Mistwalker西川:そうですよ。

SHIFT清水:一個一個、部屋の家具とかもイラストで卸されているんですね。

Mistwalker中村:はい。ジオラマ会社さん側で「こういうデザインが一個欲しい」と要望がある度にコンセプトアートをどんどん追加していった感じですね。ざっくり大きな部屋だけのコンセプトアートの物もあれば、衣装が細かいところとかは新たに書き起こしてもらったりしていましたね。

テーマ「作品で難航した点、工夫した点について」

1LDK朝岡:ジオラマで表現するという観点で難航したことはありますか?

Mistwalker中村:そうですね。写真で撮影しなければいけないというところが、多分普段のゲーム製作では考えないところ。普段のゲーム制作だとカメラはどこにでも置けるんですが、写真でダンジョンを撮るとなると、そもそも道にカメラが入らない問題が起きるんですよ。 それを回避するために、例えば町とかは斜めの丘に作るようにカメラで写しやすいような背景にする。

あと、カメラで360°から撮影してそれを3D化する技術を使っているんですが、癖があって認識がうまくいかない場合があるんですね。例えばこのウズラ号(※①)だと左右対称なので、左右どちらから撮ったかシステム上判断できなくて、壁に特徴的なものを置いてうまく認識してくれるように工夫はしたりしましたね。

心が折れそうになるというか、最初はそのことを考えずに作って上手く撮影できず最初のエンの街とかは一回作り直したんです。

(※①ウズラ号)

1LDK朝岡:グローバルで出す上で難しい点というのはありましたか?

Mistwalker西川:日本語と英語を全く同じリリース時に出さなくてはいけなかったので、日本語がまだ完成していないのに英語の翻訳を進めないといけなかったんです。言語依存の問題というのは結構起きまして。例えば「I」の大文字を小文字に変換すると自分たちが知っている「I」じゃないものになる国がありました(笑)。

Mistwalker中村:トルコかな。「なんだろう? この文字。」となり。それのせいでファイルが読み込めないバグ、不思議なバグが出ました。どの言語でどういうバグが出るか分からないから、最終的にSHIFTさんに全部の国にiPhoneの設定を変えてもらい、全言語試してみてやってもらいましたね。

1LDK朝岡:ゲームのシステムで工夫している点は何ですか?

Mistwalker中村:このゲームで特徴的なのが二つ。一つが戦闘で魔法を投げるところ、もう一つがディメンジョンシステムです。

まず魔法を投げるというところは、当初は戦闘でキャラの周りに玉が浮いていて、その球を投げて遊ぶゲームだったんですけど、違う敵に対して投げてしまうとかいうのが頻発するなど、戦略的に考えずにどんどん投げるゲームになってしまうということで、最終的には狙って指を離して投げるという遊びになったんですね。

これのおかげで軌道をカーブさせて敵を一掃させてうまく貫通する方向を狙ってやるというのが、今までにない遊びになったかなと思っています。

もう一つがディメンジョンシステム。まずジオラマをタップして移動するというところをフィルで作ったんですね。この移動ってRPGでなかなかないと思うんですよ。普通にスティックで移動するのがメインなので。ですので、かなり遠くをタップしても勝手に移動してくれたり、逆に言うと道が見えてないところをタップしても勝手に移動してくれたりするので「新しくて気持ち良いね」と坂口さんが評価してくれて。

でも移動の途中で敵にエンカウントすると、移動の面白さが途切れてよくないね、という話になりました。 「そこからエンカウントを後回しにするのはどう?」と坂口さんからアイデアがあって、ディメンジョンシステムができあがりました。

エンカウントした敵と後にまとめて戦うという形で、結構これを実装したことでフィールド探索が楽にもなりますし、何よりレベル上げが楽ちんになりますね。一気にレベルを上げられるみたいなところとか。RPGとしてのテンポがすごくよくなったので「このシステムは作って良かったかな」と思っています。

テーマ「小説での表現技法について」

Mistwalker西川:文字自体がアニメーションして、後ろに紙芝居のように挿絵が出てお話が読めるという表現になっており、キャラクターの過去が語られるパートになっています。

SHIFT清水:ストーリーが絵本みたいに画像表示されているところに文字がふっと流れていく表現、すごくいいなと思っていて。事前に軽くお聞きしたときに、実はこれ他の理由もあると伺いまして。

Mistwalker中村:そうですね。全てのシーンをカットシーンやイベントなどに起こすと、バランス的に膨大なシーンになってしまうので、過去を語るシーンや特徴的なところのみ小説にして進めました。逆にそれによってゲームとしては抑揚ができてよかったかなとは思いますが、日英同時翻訳がすごく大変でした。

特に小説は文字を動かすので、タグを付けて文字を下からフェードインさせるのは「ここだけ後から出す」とかそういうタグも付けているんですけど。英語になったら「そのタグどこに打つの?」と。かなり難しいですよね。

1LDK朝岡:進行不能バグめちゃめちゃ出るじゃないですか。

Mistwalker西川:何回もチケットを上げていただきました。日本語は止まらないけど、英語は止まっちゃいますとか。一回のタップで出せる量が日本語と英語でだいぶ違うので、日本語でここまで語っているけど英語だと1.5倍ぐらいの文字量になっちゃったり。

SHIFT清水:日本でつくったJRPGというものを海外に展開するということで、世界観をネイティブの方が見て、違和感ないかという点はすごく僕らもチェックする際に重視しました。実際にめちゃくちゃゲームが大好きなネイティブの人をアサインをして、ずっと見てもらったんですよね。

Mistwalker西川:そうですね。例えば「魔法使い」の単語を「マジシャン」ではなく「ソーサラー」というようなクオリティチェックをSHIFTさんにも完全ネイティブの方に立っていただけたので。日本のチームは翻訳チームとSHIFTさんでやりとりしてもらって、そこの修正だけを行うみたいなこともできたので、ありがたかったです。

テーマ「細部までこだわった点について」

Mistwalker中村:ジオラマの作り方で、川や水はジオラマの素材を流して作るんですけど「水の素材を流したので、乾くまであと一週間待ってください」と言われて(笑)。あ、そうか。乾くの待たなきゃいけないんだ…。というのが3Dにはない感覚でしたね。「6月はちょっと乾きにくいんですよ」とか言われました(笑)。

SHIFT清水:物によるとは思いますが、一個作るのにどのくらいかかるんですか?

Mistwalker西川:ウズラ号、船の模型がだいたい半年ほどで完成しました。

Mistwalker中村:上に見えているビブラの街(※②)とかだと3ヶ月ぐらい。その右側に見えているこの森、南の森だと1か月半くらいだと思いますね。3つぐらいで一個のダンジョンになるので、それを合わせると全体で3か月近くはかかるという感じですね。

(※②ビブラの街)

SHIFT清水:お二人が今後「こういうこともチャレンジしたい」ことって今ありますか?

Mistwalker中村:やはり、せっかくジオラマ会社さんと繋がりができたので、もう一回何か作ってみたいですね。逆に言うと時間が経つと忘れていってしまうので。今ならまだジオラマの発注の仕方を覚えているんですが。もうすぐするとジオラマの発注の仕方を忘れていってしまう。

1LDK朝岡:せっかく得たジオラマの資産性というか、そこの知見高いと思うので、研ぎ澄ましていける、研ぎ澄ましていくというのも一つありますよね。

Mistwalker中村:そうですね。またやれたら面白いかな、次はもっとうまく発注できるかな、というのはありますね。

ここで、ゲストの皆さまから最後に一言頂きました。

Mistwalker西川:4月2日でFANTASIAN全編リリースから一年経ちますが、ジオラマが一番輝いていた時期、職人さんが見せたかったタイミングの状態のジオラマはゲームの中にしか残っていないので、ぜひ遊んでいただいて、クリアした方ももう一回ジオラマを見ていただけたらと思います。SHIFTさん、今回デバッグいただいて本当にありがとうございました。

Mistwalker中村:FANTASIANですが、最近のアップデートで新たにミュージックプレイヤーなども追加されていますので、前半で終わってしまった方も是非続きをプレイしていただけたら嬉しいなぁと思っております。

SHIFT清水:ジオラマで作られている点や世界同時リリースである点、Apple Arcadeでのリリースという点で、どういう風に品質担保しようかと最初は手探りな所もあったんですが、リリースまで無事一緒に走り切れて大変光栄に思っております。

私自身もこのゲームすごく大好きで、本当に魅力的な世界観とキャラクターとゲーム性があるタイトルなので、みなさまも一度プレイしていただければと思っております。今日見たジオラマ写真がゲーム内でどう使われているのかを思い出しながらプレイすると、より楽しめるのかなと思います。本日はありがとうございました。

―ここでトークセッションも終了。

いかがでしたでしょうか?今後も「SHIFT Game Producer Meetup」を開催してまいります。ご期待ください!

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執筆者プロフィール:高木 真愛
WEB広告代理店で営業・広告運用を経験し、その後はしばらく接客業にて奮闘。現在はSHIFTにてセミナー運営・集客、バックオフィス業務、SHIFTnoteのライターを担当。

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