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アジャイル開発でゲームを制作してみた

はじめに

はじめまして。SHIFTのスクラムマスター志望の倉持と申します。

私は、これまでに2つの有志のゲーム開発チームに所属・主導してきました。このブログは、その有志チームとアジャイル開発でゲーム制作を行った記録の第一弾です。(全部で第三弾まで出すつもりです)

アジャイル開発の話はネットに沢山ありますが、こちらはプライベートな記録ゆえに、社内プロジェクトよりも具体的な事例を出せる点で、差別化したいと思います。

ゲームに限らず、ある程度作らないと反響や価値が分かりづらいサービス開発においてアジャイル開発が適切と考え、実践してきた中での疑問や課題の話が主軸になります。 是非♡やSNSでの拡散をお願いいたします。皆さんのご反応をもとに、次回以降に適応していきたいです。

■前提

1.チームメンバー構成

(全4名)
PO 兼 アートディレクター1名(私)
 →役割:プロダクト価値の最大化、チームの最適化(チームがベストパフォーマンスを出せる様に環境構築や仕組みづくりなど)、ビジュアルデザイン全般の責任者、進捗管理、課題解決など

プログラマー1名
 →役割:コーディング全般、ゲーム設計相談役

2Dデザイナー1名
 →役割:UIデザイン、UIなどのプロトタイピング等

3Dデザイナー1名
 →役割:キャラクターモデリング、キャラクターデザイン相談役、広報材料作成等

2.制作ゲーム概要

①ジャンルは3Dローグライク
※ローグライクは、プレイするたびにステージ・敵・アイテムなどの要素がランダムに変化するリプレイ性が高い戦略ゲーム。
しかし、ゲームを構成する各要素が優れていてランダム生成であることを十分 に考慮して制作しないと、ランダム生成ゆえの粗さが露見します。
(ランダムに配置されたステージの見栄えが著しく悪い・ランダムに配置された敵の組み合わせが強力すぎて難易度が不適切になる等) アジャイル開発の毎スプリント内のデモで、こういった潜在的な課題に気づきやすくなることも期待しています。

ちなみに、一昨年、とあるローグライクゲームが、ゲーム作品としては史上初となるダブルクラウンを達成し、ローグライクは世界のエンタメの1トレンドかもしれません。ローグライクというジャンルをご存じない方も、是非検索してみて、人を魅了するローグライクの魅力の一端に触れてみてください。
※ダブルクラウン:米国で優れたSF作品に与えられる2大賞(ヒューゴー賞・ネビュラ賞)を両方獲得すること。どちらも著名で歴史あるもの。

②オフラインのソロゲームで、プラットフォームはスマホ→PCの順で開発予定。

3.スケジュール

年内のMVPリリースを目標にしており、一週間スプリントで、計40スプリントを計画。 ※MVP:ユーザーに必要最小限の価値を提供できるプロダクトのこと。アプリゲームの運用として、最初は小っちゃくリリースして反響や各画面の離脱率などをもとに大事なところからアップデートをかけていくというのが比較的多いと思います。その最初の部分です。

4.開発体制

このプロジェクトでは1週間おきに成果物を持ち寄る定例レビュー会を実施。その場で全員の成果物をマージしてレビューを行います。 最終的にGoをだすのはPOですが、5~10年の経験があるメンバーがいて、議論も活発です。
各自のタスクは、ディレクターが定めたマイルストーンを元に、担当者がチケット化してJIRAで管理。

■アジャイル開発とは


アジャイルとは『すばやい』『俊敏な』という意味で、スプリント等と呼ばれる短い開発期間単位を採用することで、リスクを最小化しようとする開発手法の一つです。 ここでいうリスクとは、ゲーム開発においては、新しいものを創作する際に必然の、「プレイしてみたらイメージと違って面白くない」「気づけなかったけど、こういう構造的欠点があって、ゲーム体験を著しく損なう」などのことに、後戻りできないタイミングで気づいてしまう等です。 その他、当初想定していた内容では工数が膨れ上がる、一応プレイできるが不具合が起こりやすいなどがあります。

■このゲームのコンセプト・重視していること

(ここはプロダクトゴールをイメージしていただくために書いているので読み飛ばしてもいいです)

1.ゲームコンセプト:敵を食べてその能力や部位を奪って自身を強化して、無限ダンジョンを踏破する3Dローグライク。

2.重視していること(開発体制・環境がこれを担保できるものであるべきという事)
①視覚的変化が大きく、それをプレイヤーが受け取れること
(ゲーム体験としても、 広告としても)
②平日のこまめなプレイと、休日の長時間のプレイに耐えうるゲーム設計であること
③ハイリスクハイリターンを徹底していること

■ゲーム開発におけるアジャイルのメリット

①未知を早期体験出来ること

前提として、優れた作品は、古典的な要素7割と斬新な要素3割で構成されるという個人的分析から、私たちの作品もそれを強く意識しています。 そうなると、3割の斬新な要素がただの古典への蛇足にならないか・その実装で安定するか・どう最適なUIで表現するかなどの未知へのリスクがあります。 アジャイル開発で行くとなってからは、月ごとのマイルストーンを立てており、そういった斬新な要素のプロトタイプを早い段階で着手し、デモできるようにしました。 アジャイル開発によるインクリメントの積み重ねは、これらのリスクへの検査・適応を助けました。

具体的な事例をあげますと、このゲームは一人称視点で360度のカメラ操作が可能です。ローグライクとしてはかなり珍しいと思います。
事前に問題点は想定していましたが、デモをやってみると、思った以上に多い事が分かりました。1例を上げますと、このゲームは自身の周囲の地形や敵・アイテムとの位置関係が重要なため、当然カメラを頻繁に操作します。自分の死角から敵に狙われないかな、アイテムはないかな等ですね。当然真後ろという死角へカメラを向けることが多いのですが、画面スワイプ操作でカメラを真後ろ(180度)へ動かすのは時間がかかります。

この操作が頻繁に起こると、夜の暗闇や悪天候の中で目を凝らして周囲を警戒するという緊張感あるシーンでも、緊張感より「操作めんどいなあ」というUIストレスが大きくなり、ゲーム体験を損ないます。
早い段階の操作感・プロトUI操作デモを通じて、この懸念に気づけたからこそ、UIワイヤーフレームへカメラ方向即時切替ボタンを追加し、快適な操作と多忙なUIデザイナーの手戻り防止を実現できました。
※画面のどこをスワイプしてもカメラは動きます。このカメラ方向即時切替ボタンは、これを押下しながらスワイプすると、その方向に視点が即時に切り替わるものです。

②デモによるチームビルディング・モチベーションUP


雇用契約のない有志チームは特にですが、会社でもメンバー間のモチベーションに課題は起こりがちと思います。
アジャイル特有の、スキルがあるメンバーが1週間おきにデモをする体制は、チームのモチベーションと完成像の共有へ大きく貢献しています。
ゲームに限らず、Webサイトや触れるアプリなどをおつくりの皆さんにはデモの内容がチームに与える影響も考慮して直近のスプリントゴールを定めるのもいいかもしれません。

■有志チームにおけるアジャイル開発で気を付けたこと

1.日にち単位の高い透明性の弊害


アジャイル開発においてメジャーなスクラム開発手法では、透明性・検査・適応が重要視されています。
チームの透明性を高めて、現状を正確に把握(適応)できる体制を作り、課題にいち早く適応する流れですが、有志チームには、この体制を作る前の段階(スクラム開発で言うところのSprint0)がより重要になります。 有志チームには雇用契約がないので、純粋に透明性だけを高めるとチームが壊れてしまうからです。

例えばプライベート開発ですと、朝会・夕会の負担が大きすぎます。 モチベーションが生まれる仕組みを作らずに、チケット管理やデイリーで作業の透明性を高めすぎると、定例やデイリーが言い訳を繰り返す場になりがちです。 今週は仕事が忙しくて・・・、見せられないけどリファクタリングしていて・・・、~さんの成果物を待ってました等々ですね。
当面としては、ディレクターとして各メンバーと定例を含めて週2回は会話するので、そこで次までにやる内容を話し、みなが見えるDiscordのチャットに書いて共有することで、ほどほどの透明性にとどめています。

2.立ち上げ時にやること(Sprint0の内容)


ディレクターかプロデューサーがかなり先行(2~3カ月)して動き、プロダクトゴールを精緻に可視化していないと、かならず手戻り・プロダクト価値の誤解は起こります。
特に後から入ったメンバーは、それまでのインクリメント(蓄積された成果物)や将来像、メンバープロフィール、開発体制などの沢山のことを一気に情報として受けとりますので、本当は受け取ってほしい情報の半分も理解してないと思います。
仕事なら必要な情報をある程度インプットし終えるまで手を動かさないか、わかっている人と組めばいいですが、プライベート開発だとそうもいきません。
無報酬でも創作をしたい人は、自分も次のレビュー会までにアウトプットしたくてうずうずしていますし、チームもそれを求めています。
ですので、特に重要な下記だけ行って、動いて頂いています。

ⅰポートフォリオ付きの自己紹介
スキル共有と既存メンバーへのモチベーションUP、後発メンバーの稼働像の明確化を目的としています。 ポートフォリオ付きの自己紹介を行えば、ほぼ必ず、「あ、これが出来るなら、今やっているこれにこういう形で助けてもらいたいね」のような具体的な稼働提案が出てくるからです。

ⅱエレベーターピッチ
メンバーになりたいという声を頂く段階で、私から企画書・JIRA・体制説明・デモを実施しています。そのうえで、定例などでエレベーターピッチを必ず行っています。
ゲーム作品は受け取り方にバイアスと感性が大きくかかわるので、多少はこちらの事前説明で伝えたいこととずれます。致命的なものは再度説明し、逆に取り入れたいものは取り入れていきます。
例えば、このゲームには夜に光る明かりとなる事でプレイヤーの行動を助けたり、目印になる木の実の成る植物があります。
あるメンバーの参加時のエレベーターピッチで、「このゲームはハイリスクハイリターン設計のため、この木の実を食べる事で飢餓から回復することができるが、逆に暗闇が増える事でのリスクがあり、このゲーム特徴をよく表していると感じている」という発言があり、与えたいゲーム体験としても好ましかったので、取り入れました。 ※この時点ではその木の実を食べられる仕様は決まっていなかった。

3.スプリントゴールの構成物に全メンバーが参加出来ること

メンバーがプロジェクトに注ぐ時間や熱意の向上を考えた際に、出来るだけ全員の成果物が要求されるスプリントゴールが好ましいと考えています。
スプリントゴールで自身のインクリメントがマージされ、プロダクト内でどうふるまうかを見せびらかせる・確認できることは明確な報酬でもあり、全てのメンバーのモチベーションにもつながるからです。

例えば1週間の内、空いている時間を使って3Dモデル(1キャラ制作5時間)を作ったけれども、いつまでたってもそのキャラたちがゲーム内で活きてこず、定例で5分程度共有して終わりとなると、チーム内で浮いたメンバーとなりますし、本人のモチベーションも下がります。

スプリントゴールに絡んでいれば、それのデモ中(最短でも20分)は存在感を発揮できますし、毎定例デモで役割を持てます。
モチベーションが下がればチームを抜ける・それまでに作った成果物の使用権交渉・進捗遅れ・他メンバーの不安など良くないことにつながりますし、実際にありました。

ただ、最初に各メンバーにチーム参加目的を聞いていて、この③の考えに至りましたが、そこはチームごとに変わってくると思いますので、一般的な考え方ではないかもしれません。

以上、スクラムマスター志望・経験者として、アジャイル開発の経験を積みたいという目的もあって有志チームを組んでゲーム開発をしてきた記録第一弾になります。 次回からはより具体的な例を併せて、お話しできればと思います。 ご覧いただきありがとうございました。


執筆者プロフィール: 倉持 洋
元ゲーム会社ディレクター。コピーライターだった時も。 こういった数字と広告の世界ではアジャイルに近いものはごく一般的でした。しかし根性論や曖昧な枠組みで回していた部分も多く、因果関係の不透明さにも少し嫌気がさしていたころにアジャイル開発・スクラムを知り、その経験とチーム成果最大化の経験を重ねたいと思い、SHIFTに入社。 アジャイル案件で日々学んでいます。

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