《5回目》CATの原点と機能開発の変遷|最新のCATが取り組んでいる開発テーマとは?
こんにちは。CAT推進グループ・石井優でございます。SHIFTでCATを専任で開発している本グループ内にて、ユーザーサポート・要件抽出などを担当しております。前回に引続き、弊社のテスト管理ツール「CAT」について機能開発の変遷のお話をいたします。
CATとは
現在SHIFTが提供するCATとは、テストの実行管理に主眼を置いた、正式名称「CAT TCM(Test Cycle Management)」という製品を指します。ケースと実行結果・エビデンスの管理、およびプロジェクトの進捗管理や品質分析を担うツールです。詳しいご紹介はぜひ製品HPをご確認ください。
[CAT製品HP]
前回までは、2019年後期から2020年中期までにリリースしてきたテスト管理機能の強化について、経緯とその機能のご紹介をしてきました。
さて、次は2020年後期からの話。つまり今、CATが何を見て次は何をしていくのかという、最新の話をいたします。
蓄積した情報をもっと簡単に、必要な形式で取り出す(2020年後期~2021年中期)
前回までのブログでは2015年の販売当初から、2020年中期までの話を書いてきました。現在は2021年5月、やっと今の時期に追いつきました。
直近、20年11月に行ったアップデート CAT 4.17.3。CATはどのような方向性を向いてきたか。
ずばり「テスト実施者や開発者が蓄積したテスト情報・課題情報を簡単かつ必要な形式で取り出せること」。これが、今CATが意識している大きなテーマです。
突然ですがテストにおける「分析機能」というと、どのような機能を想像しますか?例えばこういった機能ではないでしょうか。
• 設計したテストケースがどの機能の範囲までカバーしているのか(機能毎のカバレッジの確認)を可視化する
• 不具合の発生原因を分類してどの工程で埋め込まれた不具合が多いのか可視化する
また品質管理・品質分析を行っているメンバーであれば、「このほかにもこういう分析方法がある」「日々、この数を注視して集計をしている」という意見もありそうです。
分析する切り口についても、管理するプロダクトや開発フェーズ、業種などさまざまな要因によって変わってきそう。さまざまな情報を取り出せる必要がありそうです。
つまりは、分析する背景に応じて「自由に」蓄積されている情報を取り出したい。さらにツールを使うからには「簡単に」とか「手軽に」もしくは「即時に」というテーマがつきます。
分析機能に期待するものを紐解いていくと、「蓄積した情報を、用途に応じた形で自由に、簡単に取り出せること」という要求に至ります。
CATには分析機能というサブシステムがありました。ですが、この分析機能は「自由に」「簡単に」という点では少し不足がありました。
これまでの分析機能は、「機能」「テスト環境」といった決め打ちのシステム項目について、マスターを準備し、分析対象のデータに紐付ける必要がありました。システムの構造や設定の理解が少し複雑かつ、自由な項目で分析できないという面がありました。
今までこの分析機能であった理由として大きく次の2点がありました。
1つ目。初期バージョンを開発してきた2013年~2015年当初、主には「Web」や「モバイルアプリ」のテスト管理がメインでした。そこに必要な情報を可視化する機能を、素早く提供するために自由度を抑え最低限の機能を提供しました。それ以降大きく手を加えていませんでした。
2つ目。それではなぜ手を加えていなかったか。これは「自由度をどこまで幅広くもたせれば、ある程度満足のいく分析機能ができるか」の明確なイメージが難しかったということがあります。
「自由度」という点を掘り下げると、結構長い議論になります。「自由度」について考えると、さまざまな軸が考えられます。
分析に利用できる情報はどういった範囲を対象にするか?
・ テストや不具合の項目で、決め打ちした項目のみ
・ 決め打ちした情報だけでなく、テストや不具合の中でカスタマイズした項目まで
・テストや不具合だけでなくCATに蓄積されているあらゆる情報(進捗、品質、メンバー情報など)も含む
表示形式はどのようにしたら良いか。
・決め打ちのグラフ形式
・目的にあった自由なグラフ形式
・表形式
どこまでデータを絞り込めるようにするか
・ 抽出するデータのフィルタは必要かどうか
・フィルタは保存できるようにするかどうか
データの掛け合わせ
・1軸での分析
・2軸での分析
・3軸以上の分析とドリルダウン
・瞬間の分析もしくは、時系列の分析
これら、自由度が最高レベルに高いのが、世にある「BIツール」という種類のツールです。あらゆる情報を、あらゆる軸で、あらゆる可視化、分析が可能です。
ですが最高レベルの機能を開発すると、当然、設計・実装のコスト、複雑性による品質担保の難易度が爆発的に上がります。しかもそこまでして開発した機能が本当に受け入れられるのか?というリスクもあります。頑張って実装してみたが、実は操作が難しくてまったく使われないかもしれません。
ですから、この自由度を考えるにあたり以下の2点を考える必要がありました。
• 「どこまで自由にするか」という削ぎ落としの程度
• どのようなユーザーに利用してもらえそうかとの予測
特に2015年から2019年後期頃まで、ユーザー数や使われている業界が少なかったこともあり、この2点について明確なイメージが割り出すことが難しかったのです。
しかし、その後のユーザー数の伸び、利用される業界の拡大とともに、開発に携わるメンバーの中でイメージがついてきました。それが2020年後期頃だったのです。こういった背景から、やっと、この自由で手軽な分析機能というテーマに取り掛かることができました。このバージョンではこの「自由度」をこの範囲で考えました。
1. 集計対象は、テストケースの全項目、不具合のカスタムフィールド
2. 一度に集計できる軸は1軸ないし、2軸程度
3. グラフは一旦決め打ちで実装する
この範囲であれば、現行の機能への影響度、開発の難易度、自由度や活用の範囲の広さのバランスがとれる。何より、今までたくさんいただいていた強い要望を早く提供できる。そう考えました。
そのうえで、ログインしなくてもグラフを見られる機能やCSVダウンロードといった便利機能も搭載。シンプルかつ、高機能に仕上げることができました。
シンプルさの裏はもちろん制限があります。しかし、最小限の実用性を備えてリリースすることで、使ってみた時のリアルな改善点が見つかり、これを次回以降でブラッシュアップしていこう、とも考えていました。
こういった背景があり、4.17.3で「集計機能」がリリースされました。
ちなみに名称は「分析機能」ではありません。これは分析というほど「この軸でデータを見てほしい」という見方を提供しているわけではなく、「ユーザーが分析するための情報を集計して提供」することに徹しているためです。
この集計機能はリリース後、お客様、弊社のユーザーともにご好評いただいていております。
シンプルかつ実用的な機能を設計・実装しお客様へ届けるというのは、こういった長い道のりのうえに成り立っている、そう実感する、思い入れが深い機能となりました。
次回予告、毎日ウォッチする情報をひとつの画面に集める(2021年5月)
ここまでで過去の機能の話は出し切りました。未来の話に移ります。
2021年5月、新バージョン4.18をリリースします。ちなみにバージョン番号の18にあたる真ん中の数字が上がるときは、CATからお客様へ大きく提案したい機能をリリースするタイミングです。
このダッシュボード機能をリリースします。
従来、固定の指標のみを表示していたプロジェクト情報画面。ここをカスタマイズできるようになります。ここに上記で説明した集計機能の情報なども表示できます。
プロジェクト進行中、そのプロジェクトに重大な課題がないかを判断する場合、複数の指標を確認します。
• 時系列の進捗情報
• 課題の対応状況
• 重要かつクローズしていない課題の情報
• NGや保留など対処が必要なテストケース数
従来、これらの情報は各サブシステムを横断して見る必要があり、時間を要し手軽に確認できない課題がありました。
ここを大きく改善し、CATに存在するさまざまな指標をひとまとめにして見られるようにします。
これも集計機能の話で書いた「テスト実施者や開発者が蓄積したテスト情報・課題情報を簡単かつ必要な形式で取り出せること」というテーマの一環です。
既に内部で基礎的な部分は完了、現在リリースに向けてブラッシュアップを進めています。
今の段階ではこんな感じになります。先にちらっとお見せします。
このダッシュボードについてはかなりカスタマイズ性にこだわり、自由度が高い機能となっています。
プロジェクトで発生した課題をいち早く察知し、対応までのリードタイムを早め、品質の向上につながるお手伝いができれば幸いでございます。
21年5月中旬、お楽しみに!
リリースした際には、製品サイトからのトライアルでお試しください!
本シリーズの終わりに
5回にわたる本シリーズをお読みいただきありがとうございました。
ソフトウェアとは生き物であり、成長して今の姿になるまでの道は険しく曲がりくねった物であることが少しでも伝われば幸いです。
今回のブログの記事では、CATの機能をベースに話をしてきました。
実は、開発当初から現在にいたるまでの長い開発の裏では、メンバーの変遷や実装拠点の移動などもあったのですが、そこには触れていません。これはまた、語ることがたくさんありますので、どこかの機会にお話しします。CATはこうしたメンバーの変遷も経て、実用的な機能をもったソフトウェアに成長してきました。
CATのコンセプト企画、スタンドアローン版、Web化、高機能化、拡販開始、大規模化、UIブラッシュアップ、現在のテーマの開発に至るまでに関わってきた東京、インド、ベトナムの全てのメンバーが考え抜き、プロダクトとして創り上げてきた成果です。
そして何よりCATを使っていただいている全てのお客様・ユーザー様なくしては、成長できません。
CATに関わる全ての方々へこの場を借りて、お礼申し上げます!
そして、今後ともよろしくお願いいたします!
さてさて、次のテーマは何になるのか。
CATに関するブログについてはまた追って記載いたします。
今後ともお楽しみに!
またテスト管理ツール「CAT」についてもっと知りたい方は製品HPよりお気軽にお問い合わせください!
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■シリーズバックナンバー
《4回目》CATの原点と機能開発の変遷|CATが機能を開発する上で大切にしているものとは?
《3回目》CATの原点と機能開発の変遷|大規模かつミッションクリティカルなプロジェクトで求められる機能とは?
《2回目》CATの原点と機能開発の変遷|基礎固めから開発フェーズとの統合へ
《1回目》CATの原点と機能開発の変遷
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