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SHIFT Game Producer Meetup #14 DeNAが実践するスマホゲームの「垂直立ち上げ」戦略とは?~「東方ダンマクカグラ」から学ぶIPプロデュースの極意~

はじめに

こんにちは★SHIFTエンターテインメント業界ウェビナー担当の高木です!

今回で14回目となる、ウェビナー「SHIFT Game Producer Meetup #14 」では、DeNA 上田氏をお招きし、1LDK 朝岡 氏をファシリテーターに対談を行いました。

一部分ではございますが、その様子をぎゅっとまとめてお届けします!

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テーマ「垂直立ち上げとモメンタム論について」

DeNA 上田氏(以下、DeNA 上田):ダンカグ(東方ダンマクカグラ)リリースを控えたある日、分析部のメンバーから「今の大規模スマホゲームでは“垂直立ち上げ”をするか“DIE”か」という結論がデータの中から見えてきたと言われました。 10~20億規模ぐらいのスマホゲームだと「もう垂直立ち上げをするか死ぬかしか基本的にないようです」と言われて「じゃあ垂直立ち上げをするしかないね」と決断しました。

基本的には一気に面を取らないとお客さんに知ってすらもらえない。最近のゲームは『ウマ娘』で言うめちゃくちゃ厳選されたウマ娘のようなもので、ぽっと出のタイトルが勝つことは基本的にはない。

そのため垂直立ち上げをしないと土俵にすら上がれないというような現状が今ございます。そのための重要キーワードとして、モメンタムという考え方。タイトルの勢いや盛り上がり、という意味で使っております。

モメンタムの考え方の原点としては、我々DeNAのこれまでの効果測定は、例えば施策AだとNUU1000、CPI100。施策BだとNUU500,000、CPI800という感じでダイレクトに測定していたんですけど「これって本当なのかな?」という所からモメンタム思想というのが生まれてきました。

この施策A・B・C・D・Eというのは、もちろん単独でも働くものなんですが、それぞれが重なって、タイトルの勢いや盛り上がり感(モメンタム)、あるいはプロモの面の大きさみたいなものが生じたことによって、ユーザーの行動変容を促して、インストールされたりログインされたり課金されたりします。それが個別の施策で、また計測する。その効果測定の側面を切ったときに数字になって現れてくる方がしっくりくるよねと。

1LDK 朝岡:人間は7回見ると購買するみたいな。

DeNA 上田:はい、そうです。繰り返し見てもらったりとか、他の施策とセットで見てもらったりとか、なんとなく耳に入ってきたことを覚えていて。で、パッと見た時にそれを思い出して購入に結びつくとか、そういうことが自然な行動変容なんじゃないかということで、このモメンタム論というのが出てきました。

DeNAでは主にTwitterなどのSNSを参考に、モメンタムを可視化する指標を開発しました。 その指標と、特に初期のNUU/RUUのユーザーKPIとが明確に因果関係があるということが分かりまして。 こうしてダンカグの初期マーケは個別の施策から解放されまして。いかに全体の盛り上がり、モメンタムを作るかという観点で行われることになりました。これが後から振り返ってみると、かなり大きな方針転換だったのかなと思っています。

テーマ「モメンタムの作り方、IPプロデュース事例」

DeNA 上田:決定的に垂直立ち上げがうまくいったダンカグの初報発表にフィーチャーしたいと思います。我々DeNAなので、ハマスタのバックスクリーンを使って初報を発表するという斜め上のことを行いました。

YouTubeの同接がなんと6万人以上。Twitterトレンド1位でアーカイブ再生数も3日で30万回まわりました。かなり化け物放送になったんですね。
これがかなり大きかったなと一番の手応えを感じています。

最初にまず何をしたかというと、徹底的にその東方IPの文脈を調べたんですよ。 どういう文脈で出せばヒットするかなとか、どういうものを深層心理で求めているんだろうというのを考えて。じゃあ初報はこういう方針で行きましょうという所を今からお話します。

まずは、東方25年目という記念すべき年にかけました。東方の新作の音楽ゲームを出しますといっても、ぶっちゃけ興味のある人しか見ないだろうなと思ったんですよ。だけど全東方ファンに知ってもらいたいじゃないですか?

なんなら音楽ゲーム知らない人も「東方の新しいゲームならやってみようかな」という気にさせることが目的だったので。東方のファンの方全員が「この番組だったら絶対見なきゃいけない」と、それを見ずには東方語れないような番組を作ろうという所から始めたんですよね。

実はこれ、種明かしをすると25周年ではなかったんですよ。25周年って実はこの初報発表した翌年なんですね。25周年か25年目かという数え方の違いなんですけども。でも24周年はキリが良くないじゃないですか。ですので、
すごく頑張って25年目ということでやらせてくださいと版元さんたちと交渉して「責任もって盛り上げますので協力させてください」と、無理やり25年目に紐づけたんですよね。

こちらは全東方ファン必見である、東方ダンマク祭りという生放送番組。@横浜スタジアムですね。

東方って知っている人は強烈に知っているんだけど、知らない人は全く知らない。例えば鬼滅の刃とか、一般的に知られているIPと比べると、知っている人の熱量はすごいけど、外では知られていないみたいな。 ややアングラだった東方が、こういう日の目を見たりテレビに出たりすると、みんな喜んでくれるんですね。だからこういうパブリックなところで、ドーンと扱ってあげるということにインパクトがあるなと。

あとはですね、全東方ファン必見の番組で、全東方ファンが必ず遊ばなきゃいけないアプリみたいな見せ方をしたかったので、神から授権されることが必要だったんですね。

1LDK 朝岡:神というのは版元ですか?

DeNA 上田:そうです。原作者のZUNさんですね。ZUNさんが応援していて。「音楽ってすごくいいと思っているんだよね」とお話いただいて、生ライブやってその後に音楽ゲームの発表が来る訳ですね。「この音楽ゲームを作っているのは、僕が名前を付けたんだけど、“アンノウンX”(※①)って言うんだよね」ってドーンとやっていただく。

※①(版元:AQUASTYLE、企画:DeNA、開発:xeenの集団名)

これがまさに神様から授権されている状態でして。これによって、非常に大きな大義名分だとか、お客さんに応援していただける感じを出せたかなと思っています。

最後はですね。まらしぃさんなどを招いたライブ、もこうさんとかのインフルエンサーのお祝いメッセージです。

これは、全東方ファン必聴の生放送にしたいから有名どころを呼びたかったって話も当然あるんですが、皆さん東方にゆかりのある方なんですね。

まらしぃさんって、ピアノの有名なYouTuberの方で登録者数が100万人くらい居る方なんですが、ピアノを辞めようか迷っていた時期に東方の楽曲に出会って、こんな素晴らしい曲を絶対ピアノで弾けるようになりたいと思ってもう一回熱量を持って打ち込むようになった結果、今があるとのことで。

それで原作者のZUNさんに一緒に会っていただきました。こういうクソデカ感情ですね。これをお借りして誰かの心を動かす。基本的に誰かの心を動かすためには、誰かのクソデカ感情がないといけなくて。

あとは、インフルエンサーさんだけだと面白くないなと思って「画面の向こうのあなたもクソデカ感情くださいよ」ということでやったのは「25年のお祝いイラストを書いてください」と。それを超巨大なバックスクリーンに15分ぐらい映す時間を作りまして。

そしたら「初めてこんなところで自分のイラストが掲載された」と喜んでいただいて。そういう感情も沢山お借りして一緒に盛り上がることができました。

結果としてTwitterトレンド1位、YouTubeの同時接続数6万人以上、アーカイブ再生数3日間で30万回以上でした。Twitterの公式アカウントのフォロワー数の推移を運営開始時の経過日数で合わせて見ていたんですけど、競合タイトルよりもかなり良いスタートを切ることができました。

あとはタイトル名での言及、ツイート数ですね。我々の場合だと「東方ダンマクカグラ」と「ダンカグ」での言及ツイート数を、他の音ゲーの競合と比較した時にかなり良いスタートを切ることができました。

さらに「東方 音ゲー」という言及ツイート数とかも、相当大きな数でスタートすることができたということで、まさにこれが最初にどでかい波、モメンタムを引き起こすことができた1つの事例なのかなと思っております。

1LDK 朝岡:「やらなきゃ良かったこと」と「やっておけば良かったこと」ってありますか?

DeNA 上田:「やらなきゃ良かった」は、そんなにはないですね。「やっておけば良かった」は結構あるんですけど。実はもっと有名な方達とも仕込みたかったんですよね。

肝心のアセットは、五等分の花嫁の漫画を描かれている春場ねぎ先生。
東方界隈の出身というか、もともと東方の同人誌とかも描かれていて。
それでイラストを1個寄贈していただいて、それを商材にすることができました。

それ以外にも東方出身の漫画家さんって結構いらっしゃったんですけど、なかなか手が回りきらなくてですね。本当はもっと過去東方を経験してきた方たちと、オールスターみたいなことをやりたかったんですよ。その方たちの全ての力と期待が乗っかった「最強のコンテンツ、いま現る」みたいな。
そこまではなかなか行かずですね。若干もったいないことしたなと思っています。

1LDK 朝岡:そういうクソデカ感情を誰かに出してもらうのって、どうすれば感情を爆発させられるんだろうって考える感じなんですか?

DeNA 上田:そうですね。何があったら嬉しいかで、不可能といわれたことをいっぱいやり続けてきたんですけど「ゆっくりなんて使えないよ」って言われてきたたけどやりましたし「原曲を音ゲーに入れるなんて絶対無理だよ」って言われたんですけど、それもやったので。

何があったら本当にユーザーさんは嬉しいかということをめちゃくちゃ考えて。あとはその爆弾を適切に爆発させれば、震源地みたいになるので。

1LDK 朝岡:山手線とかで中国系企業の広告出てらっしゃるじゃないですか。あれって中国は屋外広告が主流だから山手線ジャックしているって感じなんですかね?

DeNA 上田:中国はクライアントが屋外広告大好きなんです。目立つのが大好きなんですよ。広告効果とか多分あんまり考えてないです。

非常に良いトピックを言っていただきました。我々も屋外広告やった側なんですよね。新宿の東西自由通路というところで、一番長い動画に音楽のノーツと譜面のノーツを流す広告を打ちまして。

でもあれ単体だと、いくら新宿が一日に380万人の乗り降りがあるとはいえ、ぶっちゃけ大したことないんですよ。あれを映像に撮るなりして、それをウェブのデジタルメディア上で拡散させないと全く効果がなくてですね。

OOHというのは、まずクリエイティブで面白いことをやり、Twitterでそれについて好意的な反応をもらいます。それでメディアで拡散させます。
この3点がセットにならないとほぼ意味がないです。

だから山手線に広告だけ出しても無駄で、その面白い広告を出したよということが、例えばロケットニュース24 さんとか、そういう面白系のWebメディアに取り上げられたり、ファミ通Appさんとかそういうゲーム系のメディアに取り上げられたりのセットで初めて意味が出てくる感じです。

―最後に、ゲストの上田さまから一言いただきました。

DeNA 上田:垂直立ち上げをやって、まだまだ東方ダンマクカグラ、これからというところなので、もしよろしければ、ぜひ皆さんも遊んでいただけますと幸いです。本日はありがとうございました。

―ここでトークセッションも終了。

いかがでしたでしょうか?今後も「SHIFT Game Producer Meetup」を開催してまいります。ご期待ください!

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執筆者プロフィール:高木 真愛
WEB広告代理店で営業・広告運用を経験し、その後はしばらく接客業にて奮闘。現在はSHIFTにてセミナー運営・集客、バックオフィス業務、SHIFTnoteのライターを担当。

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