IT古典良書を読み解く《第2回》ストラテジーレターI:Ben & Jerry’s 対 Amazon
第2回 Joel on Software(ジョエル オン ソフトウェア) -その2-「ストラテジーレターI:Ben & Jerry’s 対 Amazon」
こんにちは。スクラムマスターの伊藤です。
5月も半ばだというのに暑くなってきましたね。アイスクリームが食べたくなる温度です。アイスはコンビニで買ったり、今はAmazonで買うことも出来ますが、お気に入りのアイスクリーム屋さんがあるという方も多いかも知れません。
今回は、Joel on Softwareに書かれている、ストラテジーレターについて紐解きます。アイスクリーム屋さんとAmazonを例に会社においてある重大な決断が大事ということが書かれており、現在でも非常にためになります。
《よもやま話》
アイスクリーム屋さんといえば、バスキン・ロビンスですね。え? バスキン・ロビンスをご存じない。ここですよ。見慣れている看板にもしっかり、Baskin-Robbinsと書いてあるのに日本人はほとんど気付いていないかと思います。海外ではサーティワンといっても通じないので気をつけましょう。
エンジニアと起業
エンジニアの中には、こんなサービスがあったらいいのにと考えて、会社に提案するがリスクがどうのこうのと言われ、モタモタしているうちに他社から類似サービスがリリースされ(しかも、そこそこ売れている)のを見て、こうなったら自分で作ってやると決意し独立・起業する人もいます。日本ではあまり多くみられませんでしたが、国が起業を後押し、クラウドなどが普及しハードルが下がったことが要因だと思われます。
私の後輩も2人ほど、「友人が独立してベンチャーを作ったので、そっちに行きます。」と一度退職して起業にチャレンジし、その後 出戻りしてきたことがありました。
やはり、起業して3年で50%は廃業してしまうシビアな世界です。もし、私の後輩2名がこの「ストラテジーレターⅠ: Ben & Jerry’s 対 Amazon」を読んでいれば成功または独立を思いとどまったかも知れません。
Ben & Jerry’s(ベン&ジェリーズ)はアメリカのバーモンド州の小さなアイスクリーム屋さんでした。Amazonは当初、本を販売するECサイトとして起業しました。
どちらも世界的な企業に成長したわけですが、そのストラテジー(戦略)は大きく違うものでした。
《よもやま話》
Ben & Jerry’sというアイスクリーム屋さんを知らない日本人は多いでしょう。実は日本進出もしていたそうなのですが、残念ながら2020年3月で撤退したそうです。やはりバスキン・ロビンスの壁は高かったようですね。
レッドオーシャン・ブルーオーシャン
Joel曰く会社に必要な決断とは何でしょう?
1. ゆっくりと有機的に収益を上げながら成長する
2. 非常に早い成功と大量の資金でビックバンを起こす
このどちらかです。
1.は限定された目標を設定した小さな会社から始め、長い時間をかけてビジネスを構築する。アメリカのアイスクリーム屋 Ben & Jerry’sに合っているのでこれをBen & Jerry’sモデルと呼びます。
2.は急成長モデル(占領モデル)とも呼ばれ、膨大な資金を調達して、収益にはお構いなしで可能な限り大きくなる必要がある。これをAmazonモデルと呼びます。
では、どうやってモデルを選択するか。
それは、あなたの製品・サービスの市場が未成熟で競合が少ないブルーオーシャンか市場が確立され血で血を洗うレッドオーシャンかということを、まず考えます。
Ben & Jerry’sモデルでは安定した収益をあげ、それを再投資して会社を成長させる。そして、競合から市場を奪っていきます。
Amazonモデルは、可能な限り早く多く顧客をつかみ、後に続く競合たちが参入障壁に直面するようにすることで、成功する可能性があります。
これにはネットワーク効果とロックインが関係しています。
ネットワーク効果とロックイン
ネットワーク効果とは顧客が多ければ多いほど、より多くの顧客が獲得できる状況のこと。
ロックインとは、人々に競合サービス/製品へ乗り換えようと思わなくさせる何かがそのビジネスにあることです。
ネットワーク効果は日本だと「メルカリ」が良い例でしょう。顧客(出展者・購入者)が多いので、欲しい商品が見つかりやすく売れやすいといった効果です。
ロックインは、以前の携帯電話会社が電話番号やメールアドレスが変わってしまうので強いロックインを持っていたことが良い例でしょう。しかし、現在ではロックインをやめさせる動きで状況は変わってきました。ステルス・ロックインという知らないうちに、そのサービスが無いとダメな身体にされてしまう狡猾な手法もあります。
さぁ、あなたがネットワーク効果が高く、ロックイン可能な製品・サービスをもっているならばAmazonモデルを採用すべきです。そうしないと、他の誰かがそれをやり、先駆者なのにその競争から退場せざるを得なくなってしまいます。
資金調達をどうするかって? そこが創業者の腕の見せ所です。大きな夢を投資家に熱く語り共有を得られるかどうかです。実際問題、競合がいない市場への参入はベンチャーキャピタルは喜びます。
急成長するためには時間をお金で買うことになります。収益を無視して市場をとりにいくため、例えばプログラマーに法外な給料を払い、入社時にボーナスとしてBMWを提供すると半年かかる採用が3週間で済むと言われています。
Amazonは市場を占領しても収益が出るのに時間がかかったのは割と有名な話です。日本ではもはやSNSの代表とされる「LINE」がまず市場をとって、後にスタンプや企業の公式アカウントで収益をあげたのも一種のAmazonモデルでしょう。
そして、Joelの結論は……
Amazonは分かりやすい成功例ですが、95%のベンチャー企業は需要がなく失敗しているようです。
教訓
ちなみに、この記事は2000年5月12日に執筆されています。現在でも人気があるようで、記事TOP10で2位につけています。(ジョエルテストは3位)
https://www.joelonsoftware.com/
2000年といえば、日本ではAmazonが日本に進出したばかりで当時は、本とCDぐらいしか売っていませんでした。しかも、全品送料無料。文房具を取り扱いはじめると、本当に鉛筆1本から送料無料で送ってくるので、この会社大丈夫なのかと思ったものです。しばらくして、1,500円以上で送料無料になるのですが、その頃にはすっかりAmazonの便利さにはまっていました。今、思えばこれが収益を無視して市場を取りに行くステルス・ロックインだったのかと思います。(そんな、筆者は現在、Prime会員です)
今、起業を考えていない人でもこのストラテジーは使えます。自分が今、働いている会社は、どうなっているのかということです。競合が少なく、市場をとりにいけたのに、モタモタして2匹目のドジョウに市場を奪われそうになっていないか(Amazonモデルが必要なのに目先の収益ばかり気にするBen & Jerry’sモデルになっている)逆に、レッドオーシャン状態なのに安定した収益をあげることを目指さず、資金を投入して急成長モデルを築こうとしていないか。
あぁ、ウチの会社と思った皆さん。気付くお手伝いが出来てなによりです。
会社を変革させるにも、転職を考えるにしても、まずは行動を起こしていきましょう。
《よもやま話》
懸命なる読者は今回から引用元の章番号とページ数が追加されたことに気付いたでしょう。やはり、必要だと思い、Amazonで本書を買い直しました。新品は欠品でしたが状態の良い中古品を買いました。書き込みや付箋がないので新鮮です。
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