前編|DAAE流、円安におけるエンジニアへの影響を調査してみた
はじめに
こんにちは、株式会社SHIFT DAAE(ダーエ)のしみずです。
DAAEとはデザイン(Design)、迅速性(Agility)、組み合わせ (Assembly)、経済品質(Economic quality)の頭文字をとったSHIFTオリジナルのプロダクト開発フレームワークです。
突然ですが、昨今話題の円安の影響について考えたことありますか?
ウクライナ情勢や米国金利上昇などにより、1990年ぶりの円安水準となっています。円安は、IT業界にも影響を及ぼしてます。
例えば、オフショア開発では、円安相場のため、日本円に換算するとコストが増幅しております。 そこで、新規事業構想~開発を日々回しているDAAEとして、本日は円安をテーマに新たな事業構想ができるか?という実験結果を共有します。
そもそも円安とは?
円安とは、他国通貨と比較すると、円の価値が低下している状態のことを示します。
例えば、1ドル100円であったのが1ドル160円になったとしましょう。16,000円を持っていたとすれば、1ドル100円のときには160ドルを購入できます。しかし円安が進み、1ドル160円になると購入できるドルが100ドルになります。
直近では、ウクライナ情勢や日本のITにおける技術の遅れ、米国金利上昇などにより、1990年来の歴史的な円安水準となっております。
そもそもオフショアとは?
日本は少子高齢化のみならず、IT人材不足により 海外に対して、IT業界の技術領域で後れを取ってます。
海外のエンジニアに業務を委託する”オフショア”がIT人材不足を打破するだけでなく、 日本国内のリソースのみで開発するよりも、安価に抑えることができていました。
この動きは1980年代から中国を中心に始まり、昨今ではベトナムやタイ、カンボジア等、様々な国に展開されています。
直近では、円安の影響から、オフショアでの金額も吊り上がっており、 日本と同水準になりつつあります。価格転換が始まりつつある中、どういった 影響があるのかを、オフショア市場分析したのちに、日本の今度どうなるのかを 見ていきます。
ここまでから推測できるように、日本と海外エンジニアの単価が同水準になりつつあり、日本のIT業界にも人材・コストの面で影響があります。
そこで、アジア圏のエンジニア単価推移とその影響について、DAAE流に見ていきましょう。
この記事はこんな方におすすめ
新規事業を立ち上げている人
海外の情勢が気になる人
事業で海外エンジニアに開発の委託を検討されている人
1. 円安における調査ソース
主に以下のような参考文献を元に、調査を進めていきました。
金融機関の為替データ
みずほ銀行ヒストリカルデータオフショア開発のデータ
オフショア白書エンジニア単価のデータ
スタック・オーバーフロー円安における金融危機
預金保険機構 - 日本の金融危機の教訓
※本稿内の図表は上記ソースよりSHIFTにて作成
2.過去の円安における歴史
日本の円安概要
2022年10月20日、ドル円レートは1ドル150円台に乗せて、32年来の歴史的な安値水準となりました。 過去、円安となった時に、日本ではどのようなことがあったのか、海外でどのような動きがあったのか。 過去のドル円150円代の過去と現在を見比べて、要因の違いを事象も併せて見ていきます。
1991年から現在までのドル円・ユーロ円推移
ドル円換算とユーロ円換算そして、TOPIXを並べて見比べてみると、以下のような考察を得られます。
日本では、過去2度の円安相場を経験している
1998年時点での円安相場では、TOPIXとの連動性ない
2010年以降のドル円・ユーロ円の変動傾向が似ている
では、円安水準となった1991年・1998年、具体的に何が起きていたのかを見ていきます。
円安相場での歴史について
日本は、過去2度1991年と1998年に、大幅な安値水準を経験している。現在の情勢といくつか異なる点あるために、当時何がおきていたのかを、政府の政策や海外動向などを基に見ていきます。
円安時の歴史
1991年と1998年の円安相場と、2022年現在の円安相場を比較してみると、諸外国の政策や日本の企業動向が円安に影響を及ぼしていることが見て取れる。
1991年の円安要因
1991年の円安の要因は、大きくは1985年のプラザ合意と日本の金融政策である。
プラザ合意とは、基軸通貨であるの過度なドル高を見直し、諸外国が為替介入を行うことによって、ドル高を是正しようというG5での合意のことを示します。このプラザ合意によって、ドル高円安相場となりました。
【プラザ合意】
プラザ合意の目的としては、対外貿易不均衡問題に対処するためであった。想定以上の円安相場となり、日本の物価高上昇への影響が日本国内のみならず、諸外国からも不満の声が挙がるようになった。
【バブル崩壊】
1990年代はバブル崩壊が始まった時代ともいわれています。日経平均株価を見てみると1989年に3万8,915円。では1年後の1990年末には、2万3,848円にまで下落してしまいました。主な要因は、政府の金融政策にありました。
1つ目が、公定歩合の引き上げです。1990年以前の金利引き上げは、企業の業績は好調で、長期金利の上昇が緩やかであったことから、株価上昇への期待は根強い印象が漂っていました。しかし、プラザ合意・海外金利上昇、3年間での大幅な金利引き上げが「バブルつぶし」と受け止められ、歴史的な日本の株価下落が進みました。株価下落により、日本円よりも諸外国通貨に価値とみられ、円安の一因となった。
1998年の円安要因
1998年の円安の要因は、銀行破綻とアジア通貨危機である。
【銀行破綻】
1990年代日本のバブル崩落と共に、各業界の財政基盤が破綻しつつあった。 1996年には、住専7社が破綻し、翌年の1997年以降もその波は収まりませんでした。1997年11月には、北日本で最大の銀行(北海道拓殖銀行)や日本で第4位の規模の証券会社(山一証券)が破綻。1998年秋には、とうとう大手である日本長期信用銀行や日本債券信用銀行が破綻しました。
この度重なる銀行破綻により、日本経済への悲観論が海外諸国へも波及し、「日本売り」の要因となった。
【アジア通貨危機】
銀行破綻による日本経済への影響は大きいが、並行して、アジア通貨危機が世界では起きてました。欧米のヘッジファンドのタイバーツ空売りなどを要因としたタイの通貨の下落 を引き金に、東南アジア諸外国(タイをはじめに、インドネシア、マレーシア、韓国など)の地域通貨の価値が下落していきました。このことにより、対アジア輸出が減少傾向となり、日本の輸出業にも影響を及ぼした。
1998年の円安要因は、度重なる銀行破綻と並行して、アジア諸国の通貨危機などによって、日本の円に対する価値が低下していったということが考察できる。
2022年の円安要因
2022年の円安の主な要因は、米国金利上昇に伴う金利差拡大、ウクライナ情勢である。
【米国との金利差拡大】
アメリカは、記録的なインフレを抑制するために、FRBのもとで急速な利上げを行っています。実際に、2021年から2022年1月にかけて、一般消費財・サービス価格は7.5%上昇しています。また、雇用という観点から、雇用統計によって就業者数や賃金の冷え込みを抑制するという要因もあります。 一方で、日本は企業の収益性や国民経済を盛り上げていくために、長期金利ゼロ%にしています。 米国は金利を上昇、日本は金利を上げない、といったことから、金利の格差が生まれ、日本通貨の価値が低下しています。
【ウクライナ情勢】
日本の安全保障はアメリカに依存しています。そのために、ロシアのウクライナ侵攻によって、改めて自国での安全保障を担保できるのかと、国力に対して諸外国から疑問視されています。また、ウクライナへのエネルギー・資源依存によって、諸外国が影響を受けています。そのことから、公共サービス(電気・水道・ガスなど)・食料(穀物類)は、歴史的に見ても高値となっています。賃金が上昇していないにもかかわらず、物価が上昇しているスタグフレーションの状態となり、日本としての厳しい局面に立たされています。
以上のように、マクロ視点で円安の要因を見てきました。次に、ミクロの視点で、円安における企業の影響を見ていきます。
3. 円安における業界分析
最初に、過去の円安影響と要因をマクロな視点で見てきましたが、前編では、企業は円安おいてどのような変化をしてきたのかを、時価総額をベースに見ていきます。
1990年前後(本稿における最初の円安)
バブル経済最盛期にあった銀行が大多数を占めるのが特徴です。
この当時世界的に見ても、日本企業が時価総額ベスト10にランクインすることが珍しくないくらい日本企業の存在感がありました。 また、当時日本はGDPランキングで世界2位となっており、"日本"としても明るい時代だということが分かります。
1998年(本稿における第二次円安)
バブル崩壊に伴い、金融機関が崩壊し、製造など日本の"ものづくり"企業が台頭してきたのが特徴です。 また、来たる世界のITトレンドに先立ち、NTTが台頭し、情報通信分野で世界に食らいついていく日本の意地が見受けられます。 翌年には、世界TOP10に食い込むなど、世界からも注目される企業となりました。
現在 - 2022年(本稿における第三次円安)
円安以外の多数の要因が考えられるものの、各企業のグローバル化に伴い、グローバル売上比率の高い企業が台頭してきたのが特徴です。 トップ10を維持しているのはトヨタ自動車、NTTの2社のみとなる。
3つの時間軸で見ると、世界情勢や世の中の需要変化により、台頭企業が大幅に異なってくることが分かりました。日本企業が世界トップ10 に多数食い込んでいた過去、2022年現在と、で比較すると、世界のITトレンドの波に乗れなかったことが1つの要因となってくることは、一目瞭然かもしれません。ただ、日本の強み(謙虚・真面目・素直)はあるからこそ、ITの業界でも世界と対等に戦っていきたいですね。
ここまでを前編として、円安における概要と企業の時価総額変遷を見てきました。
次回は、円安相場におけるオフショア単価の変動と新規事業を立ち上げていく上で、円安相場でも勝てる事業がどこにあるのか、事例ベースで見ていきたいと思います!
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