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SHIFT Game Producer Meetup #7 新作ゲームの企画立ち上げからリリースまでの成功と失敗に学ぶ

こんにちは★
SHIFTエンターテインメント業界セミナー担当の高木です!

今回で7回目となる、ウェビナー「SHIFT Game Producer Meetup #7では、株式会社マーベラス 高木 康次郎氏、StudioZ株式会社 加藤 拓真氏をお招きし、株式会社1LDK 朝岡 勇太氏をファシリテーターに対談を行いました。

一部分ではございますが、その様子をぎゅっとまとめてお届けします!

テーマは「失敗談や後悔について」

高木:明確な役割分担をやっておけば良かったですね。オデスト(※ORDINAL STRATA)はフジゲームスさんとの協業タイトルなのですが、役割分担が曖昧だと上の方の一言で変わってしまいます。協業だと人は増えるので、明確な役割分担はより強固にしていくべきだと思います。

僕はディレクター上がりなのでゲームの仕様の細かい所に口を出したり、加藤さんがジョインしてからも指示を出したり、現場からすると混乱のもとになったかなと反省しています。

朝岡:企画設計での後悔についてはどうですか?

高木:1つ目は、オデストではゲームそのもののコミュニティ機能をオミットしていた点です。ギルドみたいな機能を入れる予定をしていました。1キャラの生産コストが高く運用が追い付かなくなりがちだった中で、ギルド周りのコンテンツを入れられなかったのは苦しかったなと。

コミュニティが形成されないので、もはやソシャゲじゃないですよね。だからその場合は、ソロでもしっかり遊び続けられるエンドコンテンツをしっかり定義づける必要があると思っていますが、当然それを前提とした作りにはなっていませんでした。

2つ目は、当初はギルドバトルまでもっていく計画があったんですが、作ったコミュニティの受け皿と、コミュニティで何かをするというエンドコンテンツが丸っと抜けていたんですね。これがなかったのは非常に厳しかったです。

朝岡:加藤さんは「新規開発中にやってもらいたかったこと」はありますか?

加藤:中長期の売り上げのために行うレアリティ上限解放において、上限が上がった時を考慮してくれたら嬉しかったな、ということは多々ありました。リリース2、3年目ぐらいのターニングポイントでうまく打開できるものが事前に設計されていると良かったですね。

朝岡:僕だと、分析系の基盤ですね。どこのKPIを深く取るかという設計と、そこを効率的に抽出する基盤がないから自分でスケールを高めるしかなくて、プロデューサーが徹夜する構造になりがちです。分析系の基盤って開発優先になるじゃないですか、主要機能に間に合わないというのが優先されるので。

高木さんもおっしゃっていたアセットのオペレーションって、今は3Dやフルアニメーションで豪華になりがちで、運用後のことを考えていないと厳しい展開になるのがあるあるだと思っているんですが、どうでしょう?

高木:その通りですね。今はリッチな分運用コストが上がっているので、面白さだけでなく運用を見据えた設計が必須だと思います。

「リッチに作られているけど、このゲームきついな」というものがいくつか見受けられて、リソース提供が追い付かなくなった時に、提供するものが無くなったりワンパターンになったり。エンドコンテンツないのにパラメーターだけやけにインフレしていくものや、何をモチベーションにガチャ回せばいいのかというゲームはすごく多いなと思います。

こういうものは露骨に継続率に顕れますし、売上もプロモーションが落ち着く2,3ヶ月後にはストンと落ちてきます。

加藤:まさに今そのような問題があって、データの抽出も当初想定されていなかったり仕組まれていなかったりしたので。Re:dashという計測ツールを使ってイベントの分析やガチャの課金帯域別の回転率を調べるようにして、どう直すのかを現場で相談しています。

成功体験について

朝岡:150人ぐらいのチームを持った時の権限移譲の文化ですね。誰が何の役割、権限を持っているのかを明示化することで、僕は「現場のこの人に聞いて」と全部打ち返すことで規律を守れました。

あと、3Dゲームの開発では3DにすることでPLが明らかに分かるんですよね。一体作るのに何十万、ガチャで回収するのにレベシェアを考えると、何千万にもなるのを回収できないことが分かったのはナイスチャレンジでした。

高木:キャラ劇と呼んでいた、フルアニメーションフルボイスフル3Dのストーリーパートなのですが、当初からずっと拘っていてコストが掛かるのは承知の上でプロモも含め全面的に押し出して、折れずにやり続けていたんですね。

オデストって初動が良くて事前登録は100万超えていて、インストール転換率も良かったんです。入口としては成功したと思っています。事前登録してくださったお客様には良い画面は提供できたのかなと。プロモーションで出したのは実際プレイアブルではないですが、「あ、こういうゲームなんだ」と期待してインストールしていただけたという成功体感はあります。

朝岡:それは事前受けのプロモーションが良かったんですか?どんな仮説で何をやられたんですか?

高木:オデストは垂直立ち上げを狙って、予算をかけていました。テレビ媒体やゲームショーでの展開など、面によるブランディングも多分に行っていました。手堅いWeb広告だけでなく、タレントを起用したファン層へのリーチや、しっかり期待感を煽るRPG感を全面に出していくことは重要視していました。

予算配分の段取りはプロモチームと密に話していて、そこのハンドリングが上手かったのかなと思います。流入も売上も初速はすごく良かったです。逆に減衰が大きかったのは、先程の通り。

朝岡:初速垂直立ち上げできたのって、どんな商品設計だったんですか?

高木:編成にはキャラクターと装備品と召喚獣。開発段階から課金に直結する枠設計はできていたと思います。

朝岡:そこから、アセット側のオペレーションコストと、チーミングのコミュニケーションロス、エンドコンテンツがないなどの理由で継続率が抜けていったのでしょうか?

高木:はい、継続率は低かったです。本当に飽きない受け皿というのは、他のプレイヤーとのコミュニケーションやシステムで永続的に回るような機関だと思うんですよ。オデストはその設計思想はもともと持ちつつも、開発しきれなかったですね。

朝岡:加藤さんはエレスト(※エレメンタルストーリー)にジョインして「これはやっておいてよかったな」ってありますか?

加藤:1周年半くらいまでテレビCMを打っていたんですが、どんどん売り上げが落ちていって広告費が圧縮されてやれることが無くなっていきました。

そこで運営だけで作るより、ユーザーさんに末永く遊んでいただくために作っていくスタンスに切り替えました。たとえばファンミーティングや僕自身が表に立って、Twitterでユーザーさんとコミュニケーション取ったり、生放送でユーザーさんの声を聞けるような場を作ったりして、より気持ちよく遊べるような環境やユーザーさんの意見を積極的に聞くスタンスを徹底して減衰の下げ止めに成功したので、やってよかったなと思っています。

朝岡:僕が知る限り、ユーザーさんとの交流の施策を一番やっているタイトルなのかなと。めちゃめちゃ大変じゃないですか?

加藤:最初は、幾度となく心が折れそうになりました。ユーザーさんとの距離感が近くなるので誤解されてしまうこともありました。都度ご説明して、いただいたフィードバックに関してちゃんと実装や僕の発言をもって消化することをすごく大事にしました。そうやってまずは僕を信用してもらって、チーム全体を信じてもらって配信している点は強いですかね。

朝岡:KPI的にはどんな変化がありますか?

加藤:目に見えてあったのがミドルヘビー層。エレストでいう中間層からヘビー層、よく遊んでくれる方やよく課金してくれている方はずっと継続していただけるようになりましたね。

HBUというKPIをとっていて、何円以上課金してくれたのか、20日以上ログインのユーザーさんの推移がどうかなど。やっぱり中の人の顔や、こういう風に考えて作っているんだということを伝えるのは、とても大事なことだと身を挺して感じていますね。

質疑応答

―ここで、視聴者からいただいた質問にお答えいただきました。
「ファンの意見を取り入れる入れないをどこで線引きしているか」

加藤:ファンの意見は宝だと思っているので、反応がないのが一番寂しくて文句でも苦情でも基本的に受け入れるスタンスでいます。現場がひっ迫しない、今後の方針に影響が出ない更新に関しては基本的にほぼ実装しますね。

朝岡:直近、反映した意見はありますか?

加藤:エレストの「天上界」というエンドコンテンツで、武器を作るにはゲーム内の試練をクリアしてトロフィーを手に入れる必要があるんです。これは設計ミスの部分もあるんですけど、途中で別の武器が作れちゃうんですね。そこにリソースを使ってしまうと天上界の武器が作れないんですよ。

ユーザーさんから「早急にトロフィーを追加してくれ!」と多数の声をいただけたので、「すぐやります!」と実装しました。取り入れる線引きで言うと、意見をベースにRe:dashでデータを洗い出したりTwitterでどれぐらいやっている人がいるかを確認したりします。時には自分のTwitterを使って「こんな意見があるけど、実装してほしいですか? 不要ですか?」と聞いてみます。

あとはすごく大事にしている部分で、確率まわりに触れてはならないとか、こんな意図で設計しているとか、あえて言わないみたいな風潮があると思うんですが、僕がユーザーだった時にすごく気になった部分でした。会社のコンプライアンス的に公開していいものに関しては、僕は積極的に発信するスタンスをとっています。

というのも「こういうのを実装してほしい」と言われた時に、実装できない理由って多々あると思いますが、「できない」の一辺倒だと「なぜ?すぐ出来るのでは?」と、エンジニア経験があるユーザーさんもいたりするので、「こういう事情で、こういうことを考えているから」など、真摯に説明してご納得いただくための非公式配信や、僕自身のTwitter、公式の生放送で説明する機会を設けています。

朝岡:これから新作を作る皆様にアドバイスをいただきたいです!

高木:コストパフォーマンス、運用に対するリターン設計の話をしますね。初動で売れても3ヶ月で落ちる原因ってそこにあると思っています。イベントやリソースドリブンは今やハイリスクなので、ソーシャルグラフを形成する、システム的に回り続ける設計を入れることをお勧めします。

運用しながらの調整は無理なので、「ゲームの肝」は作り切った方がいいです。そこまでやってアウトサイドを運用でカバーするのは出来ると思いますが、ゲームサイクルレベルでは無理なので、心折れずにしっかりと予算を獲りに行ってください。

加藤:新作を作るうえで障壁になったのは、昨今ニッチ化が進んでいて、僕はブラウザ出身のため分からないことが多いケースがあるんですね。そのため相談役や知見ある人を早く揃えるべきだったというのは、失敗談としてすごく思いました。

朝岡:僕はIPタイトルをやることが多かったんですが、マーケットサイズの見積もりは重要だと思っています。それが最初のIPなのか2つ目のIPなのか、要はゲームが既にリリースされたものなのかを、ちゃんと見た方がいいと思っていますね。

ゲームというのはユーザーの人数×課金単価だと思うので、課金単価はユーザーの熱狂度。どれぐらいコアなファンがいるかで決まるので、IP選定する際は、どれぐらいコアなファンがいるか分かったうえでゲーム化することをお勧めします。

開発サイドの話だと、リリースの2ヶ月~3ヶ月前にはコードフリーズすべきという意見もあります。理由は、そこから新機能開発を始めないと絶対にリリースされないからです。リリースしてバグが出た瞬間に、1年ぐらい自転車操業で何かをやらなくてはいけなくなるので、アセットも6ヶ月分は作っておくべきなのと、開発も次のバージョンは終わらせるべきなのは前提条件として開発のご支援をさせていただいています。

―ここでトークセッションも終了。

いかがでしたでしょうか?今後も「SHIFT Game Producer Meetup」を開催してまいります。ご期待ください!

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執筆者プロフィール:高木 真愛
WEB広告代理店で営業・広告運用を経験し、その後はしばらく接客業にて奮闘。現在はSHIFTにてセミナー運営・集客、バックオフィス業務、人事採用サポート、SHIFTnoteのライターを担当。

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